研究課題/領域番号 |
22K11488
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
中西 修平 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70372183)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 握力 / 2型糖尿病 / 運動療法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、2型糖尿病治療の本来の姿である「生活習慣への介入」を運動面から行うために、運動療法に関するエビデンスを個々の「握力」を基に、「運動」と「安静」を勘案し構築することを目指すものである。実臨床下で入手可能なこれらの指標を基にした指導法は、「現場で使える、誰にでもできる」運動指導法となり得る。そのため、握力計での筋力モニター、ウェアラブル端末等で運動の質や量、安静時間の評価、内臓脂肪計での体成分評価を行う。これにより、2型糖尿病のための高品質な個別化治療の実現と同時に、医療費削減にも貢献するインパクトの高い研究を目指す。
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研究実績の概要 |
2型糖尿病の治療は食事療法、運動療法を基盤とし、必要に応じて患者の病態や並存疾患を考慮した薬物を選択する。しかし運動療法については、指導法や評価法に関する具体的な指標も不足しており、実臨床で十分に行えていない。こうした背景から、我々は握力および腹囲に注目し、それらが運動指導の個別化に有用かの検討を行っている。 なかでも握力は測定が簡便なうえ、運動予備能との正の関係が知られており、糖尿病の運動指導への応用が期待されるが、実臨床下のデータは未だ十分でない。腹囲はその指導に負の影響を及ぼすと考えられるが、両者の関連は明らかではない。そこで、本年度は当科医師派遣先のクリニックとの共同研究として、2型糖尿病患者の握力および腹囲測定を行い、その診療経過を前向きに観察する研究を開始・継続している。本年度はその解析結果の一部として、高齢2型糖尿病患者を対象とした横断研究から、握力は血糖管理決定因子の一つであることを糖尿病学会総会および中国四国地方会で発表し、その後さらに症例数を増やしたうえで英語論文として報告した(Geriatr Gerontol Int 2024)。さらには観察研究から、握力が経過中の血糖改善因子となること(J Diabetes Investig 2024)を明らかにした。本研究結果は来年度の糖尿病学会総会でも発表予定である。 以上の結果から、握力は臨床応用可能な体格指標であり、さらには運動指導の個別化にあたり有用であることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は症例数を増やすべく関連施設を共同研究先とし、観察研究を行うことに成功した。さらに、横断並びに観察研究で握力と血糖管理の関係を明らかにできた。実際の臨床現場で得られた握力と血糖管理指標の関係を明らかにした報告は検索した限りは見当たらず、本報告が初であると考える。すなわち、2型糖尿病における臨床応用可能な指標として握力測定の重要性が明らかとなり、これを基にすれば運動指導の個別化に応用可能と考えられた。 以上から、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
握力が運動指導の個別化に有用であることが示唆された一方で、握力が弱い群は常に血糖改善が鈍い傾向にあるのに対し、腹囲および内臓脂肪についてはそれらの多寡が観察中の血糖改善の決定因子とならないことがわかった(現在解析中の未発表データ)。言い換えれば、握力を運動予備能のサロゲートマーカーとし、その維持あるいは向上を運動指導の指標とすることに一定の妥当性があるが、脂肪蓄積のサロゲートマーカーとして一般的に使用されている腹囲や内臓脂肪は血糖改善との関連が弱く、運動指導の効果を判定するための指標とするのには限界があるということである。したがって、2型糖尿病患者の運動指導において、腹囲のみならず全身の骨格筋量や体脂肪量を詳細に検討・勘案した新たな指標の探索が課題として浮き彫りになってきた。この点については、腹囲の握力および運動療法との関連のみならず、新たな研究課題となると思われ、来年度の課題として取り組む必要性を感じた。
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