研究課題/領域番号 |
22K11513
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
本多 賢彦 近畿大学, 医学部, 助教 (10455545)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 骨格筋 / 遅筋 / 好気的代謝 / トランスジェニックマウス / ノックアウトマウス / 持久力 |
研究開始時の研究の概要 |
骨格筋で筋線維タイプ制御機構を解明することは、代謝調節機構解明の足掛かりとなり得る。両者が高い相関を持って制御されているためである。例えば習慣的な運動は、骨格筋の収縮スピードを遅くする(遅筋化)一方で、脂質消費量や糖取り込み量を増加させる。骨格筋代謝の全身への影響は大きく、運動による遅筋化は個体レベルでは体重減少に寄与する可能性がある。そこで本研究では、遅筋化促進因子であるVgll2の遺伝子欠損マウスと過剰発現マウスを用いて、運動負荷に対する体重や筋機能への影響を解析する。さらに、初代培養筋細胞に運動刺激を模倣する化合物を作用させてVgll2を活性化するシグナルを明らかにする。
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研究実績の概要 |
骨格筋を構成する遅筋線維と速筋線維との比率は、筋肉の活動量に応じて変化することが知られている。例えば持久トレーニングは遅筋線維率を高める作用を持つ。ミトコンドリアに富み、脂質を多く消費する遅筋線維の増加は肥満を抑制すると考えられるため、遅筋線維を誘導する因子は抗肥満効果を持つ運動模倣薬の標的として有望とされている。しかしながら、骨格筋に選択的に作用する薬剤の開発は難しく、実用に至っていない。 本研究は、転写コファクターVgll2が運動刺激に応答して活性化する遅筋化促進因子であることに鑑みて、骨格筋における好気的代謝調節にも関与するという仮説を立て、これを検証するものである。実験にはVgll2欠損(KO)マウスと筋特異的Vgll2強発現(mTg)マウスを用いる。Vgll2は骨格筋に選択的に発現することから、Vgll2を介した好気的代謝調節機構は骨格筋に特有のものである可能性が高い。したがって、この筋代謝調節機構を明らかにすることは、肥満や生活習慣病の治療のための創薬標的発見に寄与することも期待できる。 本年度は、通常飼育下の、mTgマウス足底筋で遅筋化が観察されることを新たに見出したため、KOマウス、野生型マウス、mTgマウス、各2匹から、足底筋を採取し、トランスクリプトーム解析を行った。その結果、mTgマウスでは、野生型マウスに比して好気的代謝関連遺伝子群が高発現していることが明らかになった。これは、Vgll2が代謝調節因子たり得るという仮説を支持するものである。また、熱ショックタンパク質コード遺伝子などの運動応答遺伝子の発現上昇も認められたため、運動のもたらす健康効果とVgll2機能の関連に着目し、4週間の持久トレーニングを課したマウスから採取した足底筋を用いたトランスクリプトーム解析にも着手した。KOマウスならびに野生型マウスについては解析が終了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、mTgマウスで遅筋化を観察したことを発端に、トランスクリプトーム解析に着手し、Vgll2の過剰発現が好気的代謝関連遺伝子の発現増加に結び付くことを示した。すなわち、Vgll2が遅筋化の促進と好気的代謝の促進を橋渡しする分子であるという、当初の仮説を支持する結果を得た。また、好気的代謝関連遺伝子発現を増強する持久トレーニング法の確立もできたため、Vgll2過剰発現の効果と運動の健康効果との間に類似点が見られるかの検証や、Vgll2過剰発現と運動との相乗効果が認められるかの検証を行う準備が整った。以上の理由により判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した持久トレーニング法に基づいてmTgマウスにもトレーニングを行わせ、トランスクリプトーム解析に供する。そうすることによって、Vgll2過剰発現の効果と運動の健康効果との間に類似点が見られるかの検証や、Vgll2過剰発現と運動との相乗効果が認められるかの検証を行う。また、細胞外フラックスアナライザーなどを用いた呼吸能測定により、トランスクリプトーム解析で見られた遺伝子の発現傾向が、実際の代謝能に影響を与えるものかの検証も行っていく。また、トレッドミルを用いた持久力測定も行い、Vgll2発現量とエネルギー基質利用の関係についても検討を行う。
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