研究課題/領域番号 |
22K11535
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
村上 祐介 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (70744522)
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研究分担者 |
澤江 幸則 筑波大学, 体育系, 准教授 (20364846)
村山 孝之 金沢大学, GS教育系, 准教授 (20531180)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 運動発達 / 動作の変動性 / 微視的スケール / 環境との相互作用 / 発達障害 |
研究開始時の研究の概要 |
発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorders:DCD)児は個々に多様な運動発達特性を示す。申請者らはこれまで、DCD児への効果的な発達支援体制の構築を目指し、発達的な「変化の過程」に焦点を当てた縦断的研究を進めてきた。その結果、個々の対象児には、それまでに習得していた動作が崩れてしまうような不安定な局面が観察されることが分かった。しかし、動作の不安定さが持つ発達的な意義の解明には至っていない。そこで本研究では、対象児と周りの環境の相互作用を生態心理学的視点から捉え、動作の不安定さが持つ発達的意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、昨年度開始した運動指導を継続するとともに、研究フィールドである運動発達支援活動に参加する子どもの中から、本研究の対象児を新たに選定した。新たに選定した子どもは幼児期から小学校の年齢層の子どもであり、身体的な不器用さを中核とした運動発達の支援を希望する子どもで、新たに3名の対象児に対してアセスメントを実施することができた。アセスメントは、先行研究に基づいて、世界的に標準化された身体的不器用さのアセスメントツールであるMovement ABC-2(Henderson et al.,2007)を使用し、かつ、独自に設定した質問項目も加えて実施した。各対象児は、保護者からの聞き取りや運動遊び場面の観察から身体的不器用さが確認されており、Movement-ABC2の結果でも、全ての対象児において平均よりも著しく低い成績が示された。加えて、すべての対象児には運動を行うことに対する自信の低さが顕著であり、運動有能感の低さが認められていた。 2022年度から継続する対象児に加えて、2023年度の新たな対象児に対して、課題指向型アプローチによる運動指導を計画し、実施してきた。指導内容は、それぞれの対象児の興味関心に合わせたものであり、具体的には、身体動作模倣を目的とする体操やストレッチ、ボールを使った的当てやフライングディスク、ラケットスポーツなどの簡易なスポーツ活動などである。加えて、特にASD特性の強さが認められる子どもに対しては、走ることやスキップ、ボール投げなど、基礎的なスキルを中心とした運動指導も実施し、特有の身体の動きに合わせた指導法や環境調整について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、昨年度から行っている運動指導を継続するとともに、本研究における対象児の新たな選定も加わり、それらの対象児に対して、運動指導前のアセスメントを実施することができた。一方で、本研究の対象児として候補となっていた子どもの中には、家庭の都合や本人の調子などにより、運動指導を継続することが難しい子どもも出てきた。当初の予定通り続けられている子どももいるが、途中で続けることができない状況になるケースもある。 また、生態心理学的な分析を実施するには、対象児の感覚特性や認知特性など、様々な側面からアセスメントを行う必要がある。そのため、新しく選定された子どもについても、発達検査や認知検査、運動発達の検査や感覚についての検査など、様々なアセスメントを実施している。それらを網羅するには、予定していた以上に時間がかかるところがある。 2024年度は、そういった事情を考慮し、これまで継続して運動指導を実施できている事例に焦点を当て、Movement-ABC2を中心とした事前と事後のパフォーマンスの差について検討するとともに、それらに影響を与えた環境要因について、生態学的に分析を行っていく予定である。特に、興味深い事例として、ラケットスポーツの場面におけるフォアハンドとバックハンドの打ち方の使い分けについて、現在分析を行っているところである。運動指導を通して、対象児に特有の打ち方(バックハンド)に収束していく様子が見られる一方で、ある場面ではそれまでと異なるフォアハンドの打ち方に自発的に変えていく場面も確認された。これらの動作の変動のプロセスは、生態学的な視点からみると興味深い知見であり、それらを詳細に分析していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度、2023年度と続けてきた対象児の選定(アセスメント)と運動指導を踏まえ、2024年度は運動指導後の変化に焦点を当てるとともに、そのプロセスについて生態心理学的な分析を試み、本研究の目的に相当する知見を見出したいと考えている。現在進行している運動指導では、例えばDCD特性とともにASD特性が強く影響している対象児のケースを分析すると、体のひねりの出にくさが様々な運動場面の困難さに影響を与えていることが分かってきた。標準的な運動指導ではなかなか身体のひねりを生み出すようなきっかけがつかめないため、対象児に適合した(アダプテッドした)指導が求められる。その際、生態学的な視点を持つことが重要であると考えている。例えば、これまで行ってきたボール投げで考えると、身体のひねりがないとうまく投げることができないような重くて大きなものを遠くに投げる課題など検討している。そして、それらを本人の興味に沿った形で課題指向型でアプローチしていく指導法を提案したいと考えている。 2024年度は、以上のような運動指導の経過とのその成果について、関連する学会で発表したいと考えている。具体的には、8月に実施されるASAPE 2024(アジアのアダプテッド体育・スポーツに関する学術大会)や日本体育・スポーツ・健康学会、特殊教育学会などで研究発表を行う予定である。
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