研究課題/領域番号 |
22K11562
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
額田 均 東邦大学, 医学部, 教授(寄付講座) (60118833)
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研究分担者 |
西野 一三 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第一部, 部長 (00332388)
後藤 一成 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (60508258)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 全身冷却療法 / 筋損傷 / ラット / ブピバカイン / スポーツ医学 / 脂質代謝 / 血清脂質 |
研究開始時の研究の概要 |
全身冷却療法(WBC)は、-100℃から-120℃の超低温環境を作りその冷却空間に入る全身の冷却療法である。近年WBCが運動後筋肉痛・筋損傷の回復を促進させるという臨床研究が発表され、またWBCは脂質代謝分野でも使われている。しかし、WBCについての基礎的研究はなく、その作用機序は未解明であり、WBCの適切な使用のガイドラインもない。
本研究はWBCにより惹起される生理的身体反応について、また運動誘発性筋損傷に対するWBCの効果について、ラットを用いて生理学的、病理学的、分子病態学的に統合的に検討し、WBCの適応、適正な使用方法の決定、また副作用をについてのトランスレーショナルリサーチである。
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研究実績の概要 |
全身冷却療法(whole-body cryotherapy, 以下WBC)は、-100℃から-120℃の超低温環境を作りその冷却空間に入る全身の冷却療法である。近年WBCが運動後の筋肉痛・筋損傷の回復を促進する臨床研究が発表され、国内外のスポーツ大会・団体でWBCが行われている。またWBCは脂質代謝の改善等、医療・美容分野でも使われている。しかし、WBCについての基礎的研究はなく、その作用機序は未だ解明されていない。本研究は筋損傷、脂質代謝異常に対するWBCの効果についてラットを用いて生理学的、病理学的に検討する。 まずラットでのWBCの方法を確立するために、ラット用WBC装置(前川製作所)を開発した。液体窒素を冷却庫壁内に循環させ、庫内の空気を室温から-100℃まで数分間で下げ、冷却温度の調節を可能とした。この装置を用いラットのWBC方法を以下のように確立:冷却温度を-100度に保ち、麻酔下でのラットの冷却時間は1回60秒で、3分間室温でのインターバルを挟んで3回繰り返し、これを1セットとする。 次いで、血清脂質異常に対するWBCの影響について、高脂血症ラットを用いて検討した。WBC開始4週間前からに高脂肪飼料(High Fat Diet32)を投与し、WBCを週2回、5週間で10回繰り返した。高脂肪飼料投与ラットでは血清脂質は有意に上昇。WBC開始2週後にはTG、FFAが有意に低下し、この低下は5週間継続して認めた。しかしWBC中止2週後にはWBC開始前のレベルまで再上昇。FFAも同様にWBCにより一過性の有意な低下を認めた。T-chol、血糖には有意な変化は認めない。結論として、高脂血症ラットではWBCを繰り返すことによりTG、FFAは有意に低下するが、WBC中止により再上昇する。 現在は、筋損傷に対するWBCの効果について検討中である(詳細は項目7・8参照)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前項で述べた通り、現在は筋損傷に対するWBCの効果について検討中であり、筋損傷として塩酸ブピバカイン(BPVC)による筋損傷モデルを用い、損傷後にWBCを施行し形態学的に検討を行っている。 方法として、S-Dラット前脛骨筋に0.5%BPVC0.2mlを筋腹内に注入。BPVC注入直後、2時間および4時間後にWBCを施行(BPVC+WBC群)。BPVC注入24時間後に前脛骨筋を採取。その結果、BPVC+WBC群の前脛骨筋では、WBCを施行しないBPVC注入のみ群(BPVC群)に比し、明らかに筋肉内浮腫の減少を認めた。どの他のコントロール群には、生食を同様に注入後WBCの有無により生食+WBC群と生食群、および無処置群を含む。
しかし形態学的検討において、浮腫の定量化法の確立に予想外に時間を要し、予定したラット数を終えられなかった。現時点では浮腫の定量化については、「ImageJによる2値化画像法」による方法を確立した。このために、令和5年度に予定していたラットの実験の一部が6年度に延期となった。
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今後の研究の推進方策 |
前項7に述べたBPVCによる筋損傷に対してのWBCの効果について引続き検討する。すべての方法は確立したため、令和6年度は更にラット数を増やし、筋肉内浮腫の定量化を含めた形態学的検討を行う。S-Dラット前脛骨筋にBPVCを筋腹内注入直後、2時間および4時間後にWBCを施行。BPVC注入24時間後に前脛骨筋を採取し、浮腫の定量化(ImageJによる2値化画像法による)等の形態学的検討をすすめる。 また、筋損傷後のWBCのタイミングについて検討するため、BPVC注入直後ではなく、24,48時間後にWBCを施行し、同様の検討を行う予定。
なお現時点の結果では、筋面積についてはWBC有無の両群間で有意な差は認めない。また、好中球の細胞浸潤はBPVC+WBC群ではBPVC群のような高度な浸潤はみられなかった。筋肉内浮腫の抑制の機序として、BPVCが急性炎症反応を惹起し、WBCにより抗炎症性サイトカインが抑制された可能性があり、この点についても検討したい。
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