研究実績の概要 |
幼若期の肥満が大脳皮質運動野前肢領域の発達と運動に与える影響を明らかにすることを目的に行った。実験は, 6週齢と8週齢のZFDMラット(fa/fa;肥満群n=6)と(fa/+;対象群n=6)を用いて行った.本研究では, 生後8週齢の肥満状態および糖尿病予備群において, 大脳皮質運動野の前肢領域における身体部位の表現を調べた.また, 前肢運動機能の評価には, 握力測定と巧緻運動を伴うリーチ運動を行った.リーチ運動は, 1週間ごとに握力とエサへのリーチ課題時の前肢の動きを測定し, リーチ成功率および, 11の構成要素と35のサブカテゴリからなるReaching movement rating scoreを用いた量的評価を実施した.組織学的指標として, 手関節背屈筋の横断切片から筋線維の短径を測定した.さらに, 腹腔内ブドウ糖負荷試験(IPGTT)を6週齢と8週齢で行い, 耐糖能を評価した. 8週齢では肥満群が対象群より体重が重く(P<0.001), 空腹時血糖値は両者とも125mg/dl以下であったが, 8週齢のIPGTT後2時間の血糖値は肥満群の方が高い値を示した(P<0.001).皮質運動野の前肢面積は, 6週齢では両群間に差はなかったが(P=0.994), 8週齢では肥満群の方が非肥満群より小さかった(P=0.023).握力は生後5週では肥満群の方が強かったが, 生後6週以降は非肥満群の握力が逆転し, 8週では肥満群より強くなった(P<0.0001).リーチ動作の成功率は, 非肥満群が週齢を重ねるごとに上達していくのに対して, 肥満群では7週齢以降成長が停滞し8週齢では対象群に対し有意に低い結果となった(p<0.001).到達運動スコアでは合計得点および回外運動得点が肥満群の8週齢で低い得点となった(P<0.05).
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