研究課題/領域番号 |
22K11625
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
保原 浩明 東京理科大学, 先進工学部機能デザイン工学科, 准教授 (40510673)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | バイオメカニクス / ランニング / 義足 / 障害予防 / 大腿切断 / 地面反力 / パラスポーツ / ランニング関連障害 |
研究開始時の研究の概要 |
スポーツ用義足を装着してランニングを行う下肢切断者の多くは、非切断側に慢性的なランニング関連障害を抱えている.こうしたケガの誘因になる地面反力を定量評価・可視化できれば,その予防策を事前に講じることが可能となる.本研究では下肢切断者の非切断側におけるランニング関連障害の発生リスク評価と予測因子の解明に挑戦する.
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研究実績の概要 |
当該年度はCFRP製のスポーツ用義足を装着した片側大腿切断者10名の実験データの解析に取り組んだ。すべての被験者に,フォースプレート内蔵型トレッドミル(FTMH-1244WA,テック技販社製)上で定常速度でのランニングを行わせた.ランニング速度は各被験者における最大走行速度を100%とした際の30%(平均で約6.5 km/h)から80%(平均で約15 km/h)に設定した. トレッドミルから取得した地面反力(前後成分)のうち,アキレス腱炎と関連のあることが示唆されている,接地初期のブレーキ成分最大値を従属変数とした.この指標は,各速度で切断側および非切断側から各7ステップずつを抽出し,解析した.得られた結果は体重で除し,左右脚での比較,ならびに同程度の走速度で行った先行研究と横断的に比較した. 実験の結果,走速度の増加に伴って,切断側および非切断側の地面反力ブレーキ成分最大値は増大した.本実験における走速度変化(30%から80%)では,その値は両脚ともに約2倍に増加した.また,いずれの速度においても,非切断側の地面反力ブレーキ成分最大値が,切断側の値よりも有意に大きな値を示した.しかしながら,これらの値は先行研究で報告されている値と同等,あるいはそれ以下であった. 接地初期のブレーキ成分最大値はアキレス腱炎の発症リスクと関連があることが報告されている.義足アスリートは非切断側におけるランニング関連障害の発生リスクが健常者よりも高いことが報告されているため,本研究でも,同様の現象を予見していた.しかしながら,本研究の結果,非切断側における地面反力ブレーキ成分最大値は健常者と同等あるいはそれ以下であることが明らかとなった.これらの結果は,義足ランナの非切断側におけるアキレス腱炎の発症リスクは低いことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10名を超える義足ランナーを対象に,均質なデータセットを構築できており,信頼性の高い分析が行えている,また,各年度で予定していた解析を確実に実行するだけでなく,追加で計測した地面反力データからも,義足ランナーの非切断側における障害発生リスク評価が可能になりつつある.その一方,同様のプロトコルで計測可能な義足ユーザの被験者動員は非常に困難であり,追加での計測可能な被験者数は決して多くないであろうことも推察された.今後は計測・評価の精度を上げるだけでなく,人的ネットワークを駆使しながら,サンプル数を増やすためのエフォートも割く予定でいる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに計測した実験データから,スポーツ用義足を装着した片側大腿切断者が,立脚期中にどのタイミングで,どの程度の左右非対称性を有しているか,地面反力成分の分析から明らかにしてきている.今後はフリーモーメント(立脚中の圧力中心の鉛直軸周りに作用するモーメント:下腿部の捻転負荷)や,RCOF(必要摩擦係数:滑りによる転倒リスク)といった新たな指標も算出し,ランニングにともなう障害リスクにを記述していく予定でいる.また,得られた力学指標をスパイダーチャートに記述することで,各個人や,義足ごとに障害発生リスクがどう変化するのか,という点についても,可視化技術を積極的に利用していく予定でいる.
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