研究課題/領域番号 |
22K11650
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
中嶋 哲也 茨城大学, 教育学部, 准教授 (30613921)
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研究分担者 |
小山 隆秀 弘前大学, 大学院地域社会研究科, 客員研究員 (00898124)
足立 賢二 宝塚医療大学, 保健医療学部, 准教授 (40620654)
田邊 元 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 講師 (40758588)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 古武道 / 無形文化財 / 体位の向上 / オリンピック / 失伝 / 少子高齢化 / 武道ツーリズム / 文明化の過程 / 崇高 / 甲冑化 / 広報文化外交 / 再活性化 / メディア / 文化政策 / 形 / 流派 / 伝承 |
研究開始時の研究の概要 |
戦後日本の文化政策において武道は様々に活用されてきたが、そうした事態を扱う研究は非常に少ない。武道の人文・社会科学的な研究は歴史学に偏り、多くは近代化(競技化、教育化)の過程が問題にされ、今日の文化遺産としての武道の側面は見逃されてきたのである。 しかし、政府の文化政策と結びついている武道の現状を批判的に検討するアクチュアルな研究はなされてしかるべきであるし、その成果は政策アクターへの適切な知識提供にもつながるだろう。本研究は主に古武道を対象にし、政府の文化政策の通時的検討とともに、フィールドワークによって、その実態を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度の研究実績として、代表者の中嶋哲也が8月に日本体育・スポーツ哲学会のシンポジウムに登壇し、新陰流の指導法が現代のスポーツコーチングにどのような示唆を与えるのかを報告した。同シンポジウムの報告書は次年度(2024年度)の同学会発行の学会誌に掲載予定である。また中嶋は2本の査読付き論文を提出した。1つ目は日本スポーツ社会学会へ「文明化の過程における日本武道についての試論」(『スポーツ社会学研究』32巻1号,2024年3月)であり、2つ目に、一橋大学スポーツ科学研究室が発行する『一橋大学スポーツ研究』第41巻に「戦後日本における古武道界の再構築 : 1945 ~ 67年を中心に」と題する論文を発表した。 分担研究者の足立賢二は6月3日に開催された日本文化人類学会第54回研究大会にて「「失伝」の研究:家元制下の古武道を事例として」と題した研究発表を行った。また、小山隆秀は5月3日に発行された、『武道ツーリズム実践ガイドブック』(月刊「秘伝」武道ツーリズム研究班編,BABジャパン)へ企画・制作協力を行い、さらに5月11日に発行されたDVD『武の聖地 青森弘前 武術体験の旅 GOTO武術旅』(月刊「秘伝」編集部武道ツーリズム研究所編,BABジャパン)では監修を担当した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度発表した古武道の戦後史に関する論文は昨年度中には仕上げておきたかったものであった。また、本年度計画していた古武道専門誌の編集者へのインタビューも敢行できなかった。一方で、高橋賢氏への聞き取り調査は概ね上手く進んだ。最終年度に持ち越す研究計画が多いことは懸念されるが、他方で、本年度の後半には現代の古武道の実態を把握する上で有用とみられる「シリアス・レジャー」という社会学の概念を知ることができた。研究計画の進捗が遅れている原因の一つに現代の古武道の実態を上手く把握できていなかったことがあり、それ故に個々の調査を体系的に位置づけられず研究の方向性が定まらない時期が長く続いた。しかし、今後はシリアス・レジャーの観点から古武道の実態を調査し成果をあげられるものと考えている。また、日本スポーツ社会学会の学会誌へ寄稿した論文も当初、執筆予定にはなかったが、古武道がいかなる意味で遺産足り得るかを考える機会となった。すなわち、暴力の無力化である。現代もまた暴力の絶えない時代であるが、こうした時代に対して、暴力をいかに封じることができるのか、その示唆を武道から得ることができるのではないかと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず無形文化財化に向けた1980年代以降の古武道界の動向を歴史学的にまとめつつ、各人がどのように古武道の稽古会が開催されているのか、その時間と場所を調査し、さらに稽古に集う人々への聞き取りからどのような目的で稽古に参加しているのかなど情報収集し、またどのように稽古しているのかを参与観察する予定である。いわば、古武道界というジャンル総体がどのように存在意義を形成しつつあるのか、という課題とともに、古武道を実践している各人がどのような意義を認めて古武道の稽古に参加しているのかといった個別の理由の把握に調査を集中したい。特に後者の課題に取り組むにあたって「シリアス・レジャー」(真剣に取り組む余暇)概念を基に検討を進める予定である。また、12月にはそうした調査結果を基にシンポジウムを開催する予定である。
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