研究課題/領域番号 |
22K11676
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
金光 真理子 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (40466941)
|
研究分担者 |
森野 かおり 横浜国立大学, 教育学部, 講師 (20739198)
伊藤 裕来 横浜国立大学, 教育学部, 講師 (80910893)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 身体知 / 音楽科教育 / 指導法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、音楽科の学びを身体的な理解に根差した「身体知」として指導する方法を考案し、その指導に携わる現場の実践的なサポート体制を構築していく。音楽科で主要な歌唱と器楽、および重視されるようになった日本の音楽・諸外国の音楽について、メソッド(アレクサンダー・テクニーク、ボディ・マッピング)の調査・検証、レッスンおよび授業実践の調査・分析を通して、指導法を検討する。指導法の効果の検証そして継続的な改善に取り組むため、大学の教員・学生と卒業生の学校教員による会員制のコミュニティを作る。音楽の身体知の指導法について、大学と現場が教材や方略を共有し、課題について共に議論できる仕組みを構築する。
|
研究実績の概要 |
本研究は身体知の観点から音楽の学びを捉え直し、教育現場と教員養成あるいは学校と大学との繋がりを見据えた指導法およびサポート体制の構築をめざしている。二年目(2023)は、学の授業改善、実技指導のメソッドの検証、音楽の身体知の学びに関する学会発表等を行った。 大学の授業改善に関しては、伊藤、森野、金光がそれぞれ担当する声楽、器楽(ピアノ)、中等教科教育法の授業において音楽の身体性に関する知見を活かす一方、共同担当する小教専音楽において、学習前後のアンケート調査を通して学生の学びのプロセスを辿り、効果的なアプローチを検討した。 実技指導のメソッドに関しては、演奏者のセルフ・コントロールに関わるアレクサンダー・テクニークを取り上げ、予備調査としてバジル・クリッツァー氏のレッスン(8月8日)を受講し、その利点や課題を議論した後、同氏による学生向けの講座(2024年2月14日)を行った。また声楽の分野では、伊藤がパリ18区シャルパンティエ音楽院の授業聴講・レッスン受講(12月10日~17日)を通して、ソフィー・エルヴェ教授の声楽指導法を調査した。 また、音楽の身体知に関して理論レベルの考察を進めるため、日本音楽教育学会第54回大会にて口頭発表を行った(ラウンドテーブル:「身体知」としての音楽の学びの可能性 ―知識・技能の「身体化」あるいは有機的な指導の方法をめぐって―)。フロアとの議論を通じて今後の課題を見究めることができた。 以上の調査・発表を進めながら、Teamsを活用した協議、2回の研究会(8月25日、2024年3月27日)を行い、各調査のデータを参照しながら身体知としての音楽の学びについて議論し、今後のメソッドの検討、学生および現職教員をサポート体制の構築に向けて検討できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年目は、本研究のテーマである音楽の身体知の指導法について、メソッドを具体的に調査しながら、その課題と可能性の検証を進めることができた。 大学の授業に関しては、共同担当する小教専音楽において、学習前後のアンケート調査を通じて、学生の学びのプロセスを辿り、効果的なアプローチを検討した。限られたデータ数ではあるが、共通の課題やアンサンブル活動を通した協働的な学びの効果が認められたため、調査を継続する予定である。 実技指導メソッドに関しては、初年度に検討したボディ・マッピングに引き続き、関連するアレクサンダー・テクニークを調査した。予備調査とした講座では身構えによる演奏の変化や各人の課題に応じた活用という視点に可能性が認められたため、本調査として学生向けの講座を行った。事後アンケートの結果、身体の意識化という新たな効果があった一方、課題の見究めには知識と経験を要することも明らかになった。引き続き、別の講師による指導も参照しながら、身体知の指導法を検討していく。 音楽の身体知の理論的な考察に関しては、日本音楽教育学会第54回大会のラウンドテーブルにおいて口頭発表を行い、その成果の一部を投稿論文として発表した。今後の課題としては、実践レベルでの指導法、そしてそれを還元できる大学教員・大学生・現職教員によるコミュニティづくりへと継続していくが、その理論的基盤を精査しながら、活動を拡げていく意義を感じている。その成果として、高校生向け公開講座(11月19日「耳と心と体で学び教える音楽」)、伊藤を中心とした認知・非認知能力調査研究(横浜市教育委員会委託調査)への参画、フィンランド・オウル大学の音楽教育教員との共同研究、音楽家のためのメンタルトレーニング講座(大木美穂講師、2024年1月9日)等を行うことができた。また、研究活動の成果の一環として、各人がそれぞれの分野を中心に論文を纏めている。
|
今後の研究の推進方策 |
三年目(2024)は、引き続き基礎データの収集を進める傍ら、音楽の身体知の学びのメソッドの考察とコミュニティづくりを並行して進めていく。 音楽の実技指導のメソッドに関しては、引き続きアレクサンダー・テクニークについて、バジル・クリッツァー氏のみならず、複数の指導者のレッスンおよび学生も対象とした公開講座を行う。また、日本の伝統音楽や世界の音楽も対象としながら、謡(観世流能楽師・浅見慈一氏)やインド音楽(インド音楽研究者・丸山洋司氏)の指導における身体性の分析・考察を進めていく。 とくに、理論的考察の結果、身体知の教授法として注目される「からだメタ認知」については、音楽における身体知の学びの方法としての課題と可能性を、学生の協力を得ながら実践的に検証する予定である。 また、当初の計画では、大学教員・大学生・現職教員のコミュニティ構築に際し、共有できる動画教材の作成等も予定していたが、調査の結果、オンライン上の優れた教材(たとえば京都教育大学公式YouTubeの音楽科教材)を活用する効率化と、実際の現職教員のニーズに応えるネットワークづくりの必要性をふまえ、選択的に取り組んでいく予定である。
|