研究課題/領域番号 |
22K11707
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
石田 卓巳 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 教授 (10301342)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | AhR シグナル / 亜鉛恒常性 / キヌレニン / がん細胞 / 芳香族炭化水素受容体 / がん |
研究開始時の研究の概要 |
がんの病変部において亜鉛恒常性の破綻がみられることが報告されている。亜鉛は、アポトーシスなど様々な細胞機能の発現に必須の栄養素であり、その恒常性の破綻は、アポトーシス回避や異常増殖といったがん細胞特有の性質に関与すると予想されている。申請者は、最近、芳香族炭化水素受容体(AhR)の活性化因子である β-ナフトフラボンを処理した HepG2 細胞で細胞内の亜鉛量が減少することを見出した。また、以前よりがん細胞において AhR の活性化が見られることが報告されている。申請者は、これらの知見から、がん細胞での亜鉛恒常性の破綻に AhR の活性化が関与する可能性を想起するに至った。
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研究実績の概要 |
これまで、がんの病変部において亜鉛恒常性の破綻がみられることが報告されている。亜鉛は、アポトーシスなど様々な細胞機能の発現に必須の栄養素であるため、この恒常性の破綻は、アポトーシス回避や異常増殖といったがん細胞特有の性質に関与することが予想される。一方で、がん細胞ではトリプトファン代謝物であるキヌレニンを生成するインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼやトリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼが高発現しており、かつ AhR の活性化が見られることが報告されている。加えてトリプトファン代謝物であるキヌレニンが AhR の内因性リガンドとして機能することが最近明らかとなったことから、AhRの活性化が、がん病変部およびがん細胞における亜鉛の恒常性に影響を与えている可能性が予想された。本年度は、その仮説に対する基礎的データを得るため、キヌレニンによる AhR 活性化の詳細を解析した。ヒト肝がん HepG2 細胞にキヌレニンを 3 時間暴露したところ、AhR シグナル依存的に転写が活性化されるチトクロムP4501A1 の mRNA 量が有意に増加することが明らかとなった。一方で、酸化的ストレス依存的に転写が活性化される γ-グルタミルシステイン合成酵素(GCLC)の mRNA 量に影響は見られなかった。さらに、キヌレニンの暴露時間を 24 時間に延長したところ、CYP1A1 mRNA の有意な増加は認められなかった。以上の結果から、キヌレニンによる AhR シグナルの活性化は、比較的短時間で消失する性質を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、交付申請書に記載した内容に則り、トリプトファン代謝物であるキヌレニンが細胞における AhR シグナルに与える影響を解析すべく検討を開始した。その結果、キヌレニンによる AhR シグナルの活性化は、暴露後比較的短時間で発揮され、かつ速やかに消失することが明らかとなった。これまでキヌレニンを HepG2 細胞に暴露した研究は少ないため、その影響の用量依存性および時間依存性については不明な点が多かった。このため、本年度は、キヌレニンの暴露量、および暴露時間を決定するための予備検討に時間を取られてしまい、このことが研究の進行を停滞させてしまった要因となった。また、AhR シグナル活性化を証明する手段として、AhR シグナル特異的に転写が制御されるタンパク質(チトクロムP4501A1)の mRNA 量に注目し解析を行ったが、適切な primer 設計など予備的検討に時間を取られてしまい、このことも研究の進行を停滞させた要因の一つと考えている。これらの課題については、現時点で解決済みである。このため、来年度以降は、課題の達成に向け次のステップへ研究を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、トリプトファン代謝物であるキヌレニンが AhR シグナルに与える影響の詳細を解析する検討を行った。我々の検討から、キヌレニンは、暴露 3 時間後において AhR シグナル特異的に刺激を与えるリガンドとなりうること、さらに暴露 24 時間後では AhR シグナルへの影響が消失することから、その影響は比較的短時間で完結することが示唆された。本結果は、AhR シグナル特異的に誘導されることが知られているチトクロムP450 1A1 mRNA の発現量の解析より得られたものであるが、AhR 特異的であることを示す解析を別の観点からも実施する必要があると考えている。また、細胞内の亜鉛に与える影響について本年度は解析を進めることができなかったが、細胞内の局在およびその含有量に対するキヌレニンの影響の解析を進める必要がある。そこで、次年度では、細胞内の遊離亜鉛を特異的に検出する蛍光試薬を用いた検討や高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)法を用いた細胞内亜鉛含量の測定を行い、細胞内の亜鉛に対するキヌレニン暴露の影響(すなわち AhR シグナル活性化の影響)の解析を行う予定である。この際、キヌレニンの暴露条件の変更も含めた検討を行う必要があると考えている。さらに、以上の結果を踏まえ、細胞内亜鉛の局在や含有量を制御するトランスポーターの発現量に対する影響について解析を展開する予定である。本年度は、キヌレニン暴露および遺伝子発現解析の条件検討に時間を費やしたため、予定していた研究計画の一部が実施できず、結果として次年度への繰越金を生じさせた。次年度は、この額を消耗品として使用するとともに、申請額を交付申請書に準じて使用し、研究の推進に努める。
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