研究課題/領域番号 |
22K11710
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
枝松 裕紀 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (70335438)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | RAS遺伝子 / 小胞体ストレス / IRE1 / がん / リン酸化 / グルコース / 代謝 / DMEM / PERK / ATF4 / 亜鉛 / 統合的ストレス応答 / UPR / 細胞内シグナル伝達 / MAPキナーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
亜鉛は、「亜鉛シグナル」とも言える細胞内シグナルへの効果も示す。ヒトのがんで活性亢進するRASシグナルは、亜鉛不足時には細胞死を誘導する。この細胞死誘導は、RASシグナルによる小胞体ストレスセンサー分子IRE1の活性化と、細胞内亜鉛濃度低下によるIRE1シグナルの修飾を介したJNK/p38 MAPK活性化が必要であった。本研究では、亜鉛とRASシグナルとによる細胞死誘導におけるIRE1の活性調節機構の解析を通じて、RAS遺伝子変異がん細胞の生存制御における「亜鉛シグナル」を明らかにする。
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研究実績の概要 |
RASシグナルによる小胞体ストレスセンサー分子IRE1の活性化を再検討した。活性型変異体Hras(HrasG12V)を誘導発現するRat-1RasVal細胞と3T3RasVal細胞とを用い、Xbp1 mRNAの非定型スプライシングをIRE1の活性化の指標とし解析した。培地は高グルコース、低グルコース、グルコース不含の3種のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用い、培地中のグルコースの影響も検討した。Rat-1RasVal細胞において、低グルコース条件ではHrasG12Vは強くIRE1の活性化を誘導した。グルコース不含条件では、Rat-1RasVal細胞と3T3RasVal細胞の両者でIRE1の基底レベルの活性が上昇し、HrasG12VによりさらにIRE1の活性が上昇した。IRE1タンパク質の量をウェスタンブロット法で解析すると、3T3RasVal細胞ではなくRat-1RasVal細胞において、HrasG12VはIRE1タンパク質の量を増加させた。これらから、RASシグナルによるIRE1活性化は、IRE1タンパク質の量の増減とは無関係であることが示唆された。次いで、IRE1タンパク質リン酸化へのHrasG12Vの効果を、phostag-PAGE法を用いて検討した。その結果、Rat-1RasVal細胞では、HrasG12Vの発現時にIRE1のリン酸化が誘導され、グルコース濃度を低下させるとIRE1のリン酸化レベルはさらに上昇した。一方、3T3RasVal細胞においては、グルコース不含条件下においてのみ、HrasG12Vの発現時にIRE1のリン酸化が観察された。以上から、RASシグナル活性化によるIRE1のリン酸化(phostag-PAGE法で検出されるもの)は培地からのグルコースの影響を受け、さらにXbp1の非定型スプライシング誘導とは異なる役割を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RASシグナルによるIRE1のリン酸化の解析について、実験条件の設定に当初計画以上に手間取り、IRE1のリン酸化と活性化との関係についてのデータの取得が遅れた。しかし、RASシグナルによるIRE1のリン酸化の意義に近づくデータが少しずつ取得できる状況になるなど、一定の進捗が認められたことから、本区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までにRASシグナルによるIRE1のリン酸化を再現よく誘導できる条件を見出したので、RASシグナル活性化で生じるリン酸化型IRE1と特異的に相互作用する分子の同定をめざす。このことを通じて、RASシグナルによるIRE1のリン酸化の分子機構とその意義を明らかにしていく。さらに、Rat-1RasVal細胞を用いてHrasG12V発現と亜鉛によるIRE1の活性制御機構の解明につなげる。また、RAS遺伝子に変異を持つヒトがん細胞株を用いる解析を進める。
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