研究課題/領域番号 |
22K11720
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
山陰 一 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (40598900)
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研究分担者 |
浅原 哲子 (佐藤哲子) 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究部長 (80373512)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | TREM2 / 脳心腎連関 / 糖尿病 / 肥満 / 早期予知バイオマーカー / 治療戦略 / 脳筋腎連関 / 予知指標 |
研究開始時の研究の概要 |
豊富なコホートデータ(糖尿病・肥満、認知症・MCI、健診)を基盤に、脳筋腎連関悪化にお ける単球・Mφ・TREM2とマイオカインの臨床的意義を解明する。また独自のTREM2欠損・認知 症モデルマウスを用い、脳筋腎連関の分子基盤と発症機序を解明する。以上、糖尿病・肥満に特異的な脳腎筋連関の悪化に対する予知指標・評価パネルと予防戦略を開発する。
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研究実績の概要 |
申請者は既に肥満・糖尿病の心血管病(CVD)リスクとしての単球機能異常(M1/M2極性)を報告してきた。さらに、CVDと腎疾患、腎機能低下との関連性について臨床試験成績を報告してきた。また、マウス骨髄のマイクロアレイから、糖尿病・肥満の骨髄単球にてTREM2の発現亢進を新規に認めた。 本研究では、糖尿病・肥満に伴う脳心腎連関進展における単球-ミクログリア機能・TREM2の病態意義の解明目指す。申請者は国立病院機構多施設共同糖尿病・肥満症コホートにおいて血中sTREM2高値が糖尿病患者の認知機能低下と関連し(Diabetes Metab 2019)、久山町一般住民では血中sTREM2値と10年後の認知症発症と有意に関連し、認知症の新規予知指標となる事を示した(Ann Neurol 2019)。さらに、非肥満糖尿病患者HbA1cの増悪群では、sTREM2の初期高値が2年後の認知機能低下と有意に関連し、sTREM2が認知機能低下の新規予知指標となると報告した(Front. Endocrinol 2022)。また、初期sTREM2と2年間のeGFR変化量に相関傾向を認め、肥満症では、シスタチンCで換算したeGFRcysの経時的な低下がCVDの発症と関連することを認め、eGFRcysはクレアチニン換算のeGFRcreより、肥満・糖尿病患者のCVD発症予測に適することを報告した(Obes Sci Pract. 2022)。新規に構築した認知症・MCIコホートではTREM2に着目した糖尿病性認知症の特徴を報告した(Diabetes Res Clin Pract 2022)。現在、TREM2欠損マウスにおいて脳心腎連関におけるTREM2・単球機能の意義を解明している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、多施設肥満症・糖尿病コホートと新規に構築した認知症コホートを基盤に、肥満・糖尿病における認知症・腎症進展における単球・ミクログリア機能・sTREM2の病態意義について英文誌を多数発表した。 1.臨床研究:1)NHO多施設研究 糖尿病・肥満症コホート(JOMS/J-DOS2)を構築し(1937例登録完了)、現在5年目の脳心腎連関アウトカム(複合心血管イベント、心腎合併症、認知機能)を検討した。2)横断解析にて非肥満型糖尿病患者でのsTREM2とインスリン抵抗性との関連を報告した(Diabetes Metab 2019)。3)縦断解析(2年追跡)ではsTREM2の経年的上昇や、初期のsTRME2高値のMMSE低下と相関傾向を認めた(Front. Endocrinol 2022)。4)経時的なeGFRcysの低下がCVD発症と関連することを認め、eGFRcysはクレアチニン換算のeGFRcreより、肥満・糖尿病患者のCVD発症予測に適することを報告した(Obes Sci Pract. 2022)。6) 新規に認知症・MCIコホートを構築し、TREM2に着目した糖尿病性認知症の特徴を報告した(Diabetes Res Clin Pract 2022)。 2.基礎研究:TREM2 欠損マウス及び、肥満・糖尿病及び腎不全モデルマウスを作成済みであり、現在、高脂肪食負荷や認知症モデルとの交配を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究にて是まで、糖尿病・肥満症における脳心腎連関進展において、単球・ミクログリアに発現するTREM2とその可溶型sTREM2に着目し、一般住民、糖尿病、認知症コホートならびにモデルマウスを基盤に、新規予知指標並びに効果的な治療法を検討し、多数英文論文報告してきた。今後さらに、下記の検討にて糖尿病・肥満症に伴う脳心腎連関進展機序の解明と治療戦略の確立を目指す。 1.臨床研究: NHO多施設共同糖尿病・肥満症コホート、健診コホートや新規に構築した認知症コホートの長期追跡・縦断解析を推進し、糖尿病・肥満症の脳心腎連関アウトカム・リスクに対する血中sTREM2との関連解析、糖尿病・肥満の有無別、薬物治療別などのサブ解析を行い、TREM2に着目した脳心腎連関進展予防戦略を提案する。特に是まで未解明であった肥満の認知症への影響、糖尿病性認知症の病態・特徴を明らかにし、糖尿病・肥満症に伴う脳心腎連関進展における革新的な早期診断法・高リスク群抽出法と先制医療の構築を目指す。 2.基礎研究:これまでの成果を基に、作製済であるTREM2 欠損マウス、肥満・糖尿病及び腎不全モデルマウスを用い、高脂肪食負荷や認知症モデルとの交配を行い、肥満・糖尿病に伴う脳心腎連関進展の分子機構、単球・ミクログリア機能およびTREM2の病態意義の解明を目指す。A)TREM2欠損マウスに高脂肪食負荷を行い、体組成、糖代謝、単球機能、血中sTREM2と脳、心臓、腎臓の炎症や組織傷害レベルとの関連を検討する。B)TREM2欠損マウスやミクログリアや腎細胞株を用い、生活習慣病薬・機能性食品などの脳心腎障害改善作用とその作用機序・シグナルやTREM2の関与を明らかにする。 以上より、糖尿病・肥満におけるTREM2の病態意義・測定意義を明らかにし、TREM2・TREM2を標的とした早期診断バイオマーカー・治療戦略の確立を目指す。
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