研究課題/領域番号 |
22K11725
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
片岡 佳子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (40189303)
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研究分担者 |
櫻井 明子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70707900)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 腸内細菌叢 / 非アルコール性脂肪肝炎 / 食餌誘導性マウスモデル / 抗菌薬 / 幼若期 / 抗菌薬暴露 / 発症リスク |
研究開始時の研究の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の食餌誘導性モデルマウスを用いて、幼若時に抗菌薬暴露による腸内環境の撹乱を行い、脂肪肝炎の発症への影響を調べる。幼若時に抗菌薬暴露したマウスに成体になってから高脂肪食を与えると、肝障害が急速に悪化する個体が出現するので、肝傷害が進展する個体とそうならない個体の腸内菌叢の相違点、盲腸内の有機酸や胆汁酸の組成の相違、腸管のバリア機能等を調べ、脂肪肝炎の発症・進展のリスクと腸内環境との関連性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
食餌誘導性非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスを用いて、出生直後から3週齢までの幼若期に抗菌薬に暴露し、腸内環境の経時的な変化とNASHの発症や進展との関連性を検討している。抗菌薬暴露無しで8週齢から28週齢までウェスタンダイエットを自由摂取させた陽性対照群と、幼若期にアンピシリンを自由飲水させて菌叢形成を撹乱した後に8週齢からウェスタンダイエットに切り替えた群との比較のための動物実験が完了した。体重増加量や肝臓重量について群間の有意な差は認められなかったが、抗菌薬暴露群の中に実験期間終了前に死亡に至った個体が複数出現し、また血清中肝障害マーカーTBAが上昇し肝臓組織の外観上も線維化が進んでいるとみられる個体も複数出現している。2019~2021年度の研究結果(抗菌薬暴露群中に著しくNASHが進行したとみられるマウス個体が見つかった)の再現性を確認できたので、今後、NASHの組織学的な評価や腸内細菌叢の経時的な変化を解析し、NASH発症リスクと腸内環境との関連を統計学的に検討していく。 一部のマウスについて、16Sメタゲノム解析により菌叢の変化を調べたところ、4週齢時点でアンピシリン暴露群では、VerrucomicrobiaやProteobacteriaの比率が高く、抗菌薬暴露なしの陽性対照群、陰性対照群の個体と異なっており、早期のアンピシリン暴露による腸内菌叢への影響が確認できた。また、アンピシリン暴露群内で早期に安楽死に至った個体は4および8週齢の時点で同群の他の2個体よりBacteroidetesの割合が高かった。が脂肪肝炎の悪化リスクに関与している可能性が考えられる。幼若期の抗菌薬暴露による菌叢形成過程への介入が、成長後の腸内細菌叢構成の相違や腸内環境の安定性に影響し、高脂肪食による腸内環境の悪化を通して、著しい重症化を引き起こしているものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績概要に示したように、幼若期に抗菌薬暴露したマウスの個体数を増やして2019~2021年度の研究結果の一部について再現性を確認できているが、脂肪肝炎の組織学的な評価や腸管透過性の評価についてはこれからである。腸内細菌叢のT-RFLP法による解析に必要な学内機器の故障により若干予定が遅れたが、この間に行った16Sメタゲノム解析による菌叢解析データは今後の菌叢解析の参考になる。現在は学内にフラグメント解析可能なシークエンサーが設置されている。これまでよりも多くのサンプルを一度に解析可能であるので、今後は効率よく解析が進むと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験が完了し、実験群、対照群陰性対照群のマウス数が統計処理の可能な数になったので、当初の計画に沿って、今後は腸内菌叢形成過程(特に幼若期の)で抗菌薬暴露した影響について、重症化した個体と重症化しない個体との相違点に注目して、腸内菌叢の安定性やその代謝産物、腸内環境とNASHの発症リスクとの関連性を検討していく。 抗菌薬暴露の終了時(4週齢)、特殊飼料開始前(8週齢)および特殊飼料投与終了後(28週齢)に採取したマウス便および盲腸内容物について、菌叢解析、腸内菌叢中の特定菌種の定量および腸内菌由来の代謝産物の分析を行う。T-RFLP法で経時的な変動を把握し、必要に応じて16Sメタゲノム解析による詳細な解析、または菌種特異的定量PCRを行う。 抗菌薬暴露による腸内菌叢形成過程への介入により強く影響を受けた個体に注目して、研究分担者の櫻井明子助教が脂肪肝炎の発症や悪化に関わる遺伝子発現の比較解析を行う。 ヒトの脂肪肝疾患でも重症化には個人差があり、そこに腸内環境の相違がかかわっている可能性がある。幼若期の抗菌薬暴露による菌叢形成過程への介入が、成長後の腸内環境の安定性や菌叢構成の違いに影響し、高脂肪食等による腸内環境の悪化とあいまって、著しい重症化を引き起こすのかもしれない。抗菌薬暴露群内の個体差に注目してNASHの発症や進展と腸内環境の変動との関連性の検討を進め、発症を抑制するためには腸内環境の何を標的にすべきなのかについて考察を進める。
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