研究課題/領域番号 |
22K11728
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
田邊 宏基 名寄市立大学, 保健福祉学部, 講師 (60573920)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | B. acidifaciens / 難消化性糖質 / ラット |
研究開始時の研究の概要 |
Bacteroides acidifaciensはインスリン感受性改善および肥満を抑制すると報告されている。しかし、一般的な陸生植物由来難消化性糖質にはB. acidifaciensを増加させる効果がない。我々は褐藻類由来難消化性糖質の摂取がラット大腸内B. acidifaciensを特異的に増加させることを発見し、褐藻類難消化性糖質に特徴的な構成糖および結合がB. acidifaciensに特異的に利用され、増殖作用を示すという仮説を立脚した。本研究では褐藻類と陸生植物由来難消化性糖質を比較し、B. acidifaciensを増加させる難消化性糖質の特徴を特定する。
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研究実績の概要 |
褐藻類からの難消化性糖質の粗精製は、乾燥粉末、脱脂、人工消化まで完了し、セライトによる濾過段階まで進んでいる。高粘性画分のため濾過に時間がかかっており、並行して動物実験を開始した。褐藻類粉末を2.5%、5%、10%添加した飼料でラットを14日間飼育した。飲水は水道水を自由飲水させた。この間、飼料摂取量、体重の推移を記録した。最終日にイソフルラン麻酔下で盲腸を摘出し、盲腸内有機酸濃度、盲腸内B.acidifaciens存在量、盲腸内IgA量、盲腸粘膜形質細胞数を測定した。その結果、飼料摂取量、体重に差は無かった。盲腸内短鎖脂肪酸濃度は対照食に比べ、10%褐藻類食で有意に低下した。その他の有機酸も低かった。以上の結果から本褐藻類粉末は発酵能が非常に低いことが明らかになった。しかしながら、盲腸内のB.acidifaciensは対照食群に比べ、その他全ての群で有意に増加した。2.5%褐藻類食で約150倍、5%、10%褐藻類食で約400倍であった。発酵能が低いにもかかわらずB.acidifaciens増殖能は極めて高いことが明らかになった。盲腸内IgA濃度は対照食に比べ、2.5%および5%褐藻類食群で有意に増加した。その時の盲腸粘膜中形質細胞率は有意な増加ではないものの、対象食群に比べその他の群が10%以上増加した。以上の結果から、食物繊維としては添加量の少ない2.5%であっても充分な効果が認められることが明らかになった。また、今後の菌の単離に必要な盲腸内容物を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
褐藻類からの難消化性糖質の粗精製は、乾燥粉末、脱脂、人工消化まで完了し、セライトによる濾過段階まで進んでいる。高粘性画分のため濾過に時間がかかっており、この点はわずかに遅れている。しかしながら、並行して動物実験を開始した。本研究の原点となった褐藻類粉末を2.5%、5%、10%添加した飼料でラットを14日間飼育し、盲腸内有機酸濃度、盲腸内B.acidifaciens存在量、盲腸内IgA量、盲腸粘膜形質細胞数を測定した。これにより、基本的なデータの積み増しおよび、次年度以降に必要な盲腸内容物を採取しており、以降の寒天培地による菌コロニーの単離に関して、予定より先行できた。そのため、総合的にはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
褐藻類からの難消化性糖質の濾過を引き続き行う。褐藻類からの難消化性糖質粗精製を待たず、精製フコイダンおよびアルギン酸ナトリウムを入手し、動物実験を開始する。6週齢のSD系雄性ラットを用い、無繊維食、5%分画褐藻類難消化性糖質添加食、5%フコイダン食または5%アルギン酸ナトリウム食で14日間飼育する。飲水は水道水を自由飲水させる。この間、飼料摂取量、体重、糞便量、糞中IgA量の推移を記録する。最終日にイソフルラン麻酔下で末梢血を採取し、血漿中インスリン、GLP-1、ジペプチジルペプチダーゼ濃度を測定する。その後安楽死させ、盲腸を摘出する。盲腸組織は盲腸壁の組織学的観察に用いる。盲腸内容物は2つに分け、1方はCO2雰囲気下で希釈液を用いて1/10に希釈し、30 xgで2分間遠心分離する。上層に終濃度10%となるようにグリセリンを加え、総菌叢サンプルとして-80°Cで保存し、翌年の実験で用いる。他方は総細菌数をqPCR法で測定し、細菌叢構成パタンをメタ16S rRNA遺伝子解析により明らかにする。
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