研究課題/領域番号 |
22K11733
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
日高 京子 北九州市立大学, 基盤教育センター, 教授 (00216681)
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研究分担者 |
大野 みずき 九州大学, 医学研究院, 助教 (70380524)
岡 素雅子 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (80467894)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 老化 / 幹細胞 / 酸化ストレス / 心臓 |
研究開始時の研究の概要 |
超高齢化社会が進む現代社会において、心臓疾患など加齢を伴う疾患のリスクが高まっている。心臓を構成する心筋細胞は生後まもなく分裂を終了し、再生能力は極めて限定的である。細胞レベルの老化は、持続的なDNA損傷応答によって進行し、炎症性サイトカインなどのSASPの発現を伴い、組織や個体の老化の原因となっているが、近年、老化細胞を特異的に除去する治療法「セノセラピー」が注目されている。本研究は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた老化心筋細胞in vitroモデル系を構築し、心筋細胞の老化機構を明らかにするとともに、老化細胞除去による心臓のアンチエイジング薬の開発をめざすものである。
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研究実績の概要 |
細胞の老化は、持続的なDNA損傷応答によって進行し、不可逆的な細胞周期の停止や炎症性サイトカインなど のSASPの発現を伴い、組織や個体の老化の原因となっているが、心臓の心筋細胞は発生後まもなく分裂を停止し、心筋の細胞レベルの老化についてはまだ不明な部分も多い。二年目は一年目の課題であった、(1)ヒトiPS細胞(hiPSC)の心筋細胞(CM)への分化誘導条件の最適化、および分化心筋細胞(hiPSC-CM)の増殖を試みた。公表されたプロトコルにより基づき実験を行ったところ、ある程度分裂する能力を残した心筋細胞を得ることができた。培養を続けたところ、老化細胞の指標の一つである、SA-b-galactosidase陽性細胞が生じており、今後、老化誘導系の出発材料として利用することが期待できた。一方、(2)外来性のストレスによる老化誘導を行うため、抗がん剤としても知られるDoxorubicin添加による予備的実験を進めたほか、(3)遺伝子操作により、老化誘導のためのストレスを制御できるいくつかの細胞株の構築を試みた。ひとつはミトコンドリア呼吸鎖の変異サブユニットをTet-On誘導により発現させるもので、昨年報告した系の改良版である。このほかに、同じくTet-On誘導系によりテロメアに酸化ストレスやテロメア切断を生じさせる細胞の構築に取り組んだ。最後に、視点を変えて、(4)DNA修復能を欠損した変異マウスの心臓のゲノム解析を行ったところ、酸化ダメージに特徴的なG>T変異をよく蓄積しており、心臓の機能に変化をもたらす可能性のある変異も見つかった。これが心臓の老化にどのように関わるかはこれからの課題であるが、小腸における体細胞変異についてはがん化と深く関連していることが分かり、それについては論文にまとめて報告を行ったところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋への分化誘導・分化心筋細胞の増殖など、研究遂行のための準備は整ってきたが、外的・内的ストレスにより、hiPSC-CMに老化を誘導するという、本研究における肝心な部分が若干遅れている。(1)外的ストレスについては、薬剤添加による亜致死損傷により老化を誘導しようとしているところであるが、添加条件等、まだまだ改良すべき点が多い。(2)内的ストレスについては、細胞構築のためのプラスミド等を順調に準備することができたが、導入細胞の確認と解析については現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果として、分化誘導・増殖の系を見直すことにより、安定的に出発材料(hiPSC-CM)を得ることが可能となった。この細胞を利用して、(1)hiPSC-CMのさらなるキャラクタリゼーション、細胞周期や老化マーカーの発現に影響しうるファクターについて解析を進めたい。また、(2)hiPSC-CMが低いながらも分裂能を有していることから、外的ストレスによる老化誘導条件をあらためて見直す必要がある。これと並行して、(3)内的ストレス(ROS、テロメア酸化、テロメア切断)を誘導できる細胞株の解析を引き続き行うことによって、hiPSC-CMを劇的に老化誘導させる系を構築したい。一方で、(4)siRNAを用いたノックダウン系により体細胞ゲノム変異の老化への影響も調べてみたいと考えている。
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