研究課題/領域番号 |
22K11739
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
松永 哲郎 武庫川女子大学, 食物栄養科学部, 准教授 (10452286)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 低酸素 / インスリン / 膵β細胞 / Piezoチャネル / 膵臓 / DUSP / PDX-1 / 糖毒性 / 食品成分 |
研究開始時の研究の概要 |
2型糖尿病では、慢性高血糖による膵β細胞の細胞量減少とインスリン分泌能の低下が起こる。これは糖毒性と呼ばれ、現状では克服が難しい治療上の深刻な課題である。近年の研究により、糖毒性の背景に、膵β細胞の「低酸素化」があることが明らかにされ、細胞内機序も分かり始めてきた。次なる課題は、明らかになった細胞内機序を予防や治療のターゲットとして実際に活用することである。膵β細胞の機能低下は、糖尿病発症前から既に進行していることから、発症後の投薬よりも発症前の予防が望ましい。本研究では、食事による予防を念頭に、糖毒性の悪影響を緩和・改善することができる、栄養素や食品成分のスクリーニングと機能解析を実施する。
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研究実績の概要 |
【目的】近年、Piezoチャネルが膵β細胞においても発現しており、インスリン分泌に関連することが明らかになった。本研究では、膵β細胞における低酸素曝露によるインスリン分泌低下に対して、Piezo1チャネルの活性化が改善作用を有するかについて検討した。 【方法】INS-1 832/13細胞を培養し、Piezo1チャネルアゴニスト(Yoda1)を添加し(最終濃度:0 μM, 5 μM, 20 μM)、低酸素(5%)環境下に24時間曝露することで、細胞内低酸素状態を誘導した。その後、グルコース応答性インスリン分泌量を評価した。また、細胞よりtotal RNAを抽出し、insulinおよびその転写因子(PDX-1)、Piezo1チャネル、GLUT2、GLUT1、小胞体ストレスマーカー(CHOP)、脱共役タンパク質(UCP2)のmRNA発現量を測定した。 【結果・考察】低酸素環境への24時間の曝露により、グルコース応答性インスリン分泌量は有意に低下していた。また、insulin、PDX-1、GLUT2、UCP2のmRNA発現量においても、低酸素曝露による有意な低下が認められた。一方、Piezo1チャネル、GLUT1、CHOPのmRNA発現量は、低酸素曝露により有意な上昇を示した。Yoda1の添加により、低酸素曝露によるグルコース応答性インスリン分泌量の低下の有意な回復が認められた。また、insulinのmRNA発現量は、Yoda1添加により有意な回復を示した。一方、GLUT1、PDX-1、GLUT2、CHOPでは、Yoda1添加による有意な変化は認められなかった。 以上の結果から、Piezo1チャネルの活性化は、低酸素による膵β細胞のインスリン分泌低下に対して改善作用を有することが示唆された。今後、細胞内の作用機序について、HIF1などの低酸素関連因子などとの関連で詳細に調べる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵β細胞において、低酸素暴露により、Piezo1チャネルの発現が上昇することが初めて明らかとなった。また、Yoda1による同チャネルの活性化がインスリン分泌の回復をもたらすことを示した。 本研究の知見から、Piezo1チャネルを刺激・活性化する成分が糖尿病における膵β細胞の機能回復につながる可能性が期待され、今後、更なる機序の解析が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、低酸素および糖毒性に晒された膵β細胞において、低酸素に対する応答因子として重要なHIFとの関連を明らかにし、低酸素および糖毒性において、HIFへの作用が細胞の機能改善にどのように関係するのかを明らかにしていく。同時に、HIFおよびHIF関連因子に作用する食品成分を用いて、低酸素や糖毒性における膵β細胞の機能回復の評価を細胞およびモデル動物を用いて実施していく予定である。
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