研究課題/領域番号 |
22K11763
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
若林 あや子 日本医科大学, 医学部, 講師 (30328851)
|
研究分担者 |
遠田 悦子 日本医科大学, 医学部, 助教 (00589327)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 腸内細菌叢 / 抗生剤 / アルミニウム含有食品添加物 / ミョウバン / バチルス科細菌 / 腸上皮細胞 / 細胞死 / ピロトーシス / 食品添加物 / 腸内細菌 / 炎症誘導 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、食品添加物ミョウバンを経口投与したマウスで、腸管の好酸球浸潤と腸上皮細胞死が亢進することを見いだした。マウスを抗生剤(アンピシリン、ネオマイシン、バンコマイシン、メトロニダゾール)で経口処置すると、ミョウバンによる腸上皮細胞死と好酸球浸潤は促進した。腸上皮細胞のRNAシーケンシングでは細菌に対する反応や細胞死に関わる遺伝子発現が増加していた。 本研究では、①ミョウバンによる腸内細菌の腸上皮細胞内侵入、②細胞内細菌による炎症性細胞死誘導、③dysbiosisでのミョウバン摂取による炎症性細胞死の亢進を明らかにする。食品添加物や腸内細菌による炎症誘導の解明は、腸管炎症の予防や緩和に繋がる。
|
研究実績の概要 |
我々はこれまでマウスを用いて、抗生剤(アンピシリン、ネオマイシン、バンコマイシン、メトロニダゾール)処置がカスパーゼ6活性化を介した腸上皮細胞のアポトーシスを誘導すること、加えて抗生剤処置下での食品添加物ミョウバンの経口投与はカスパーゼ1とカスパーゼ4活性化を介した腸上皮細胞のピロトーシスとIL-18産生を誘導することを見出した。本研究では、腸上皮細胞死誘導における腸内細菌叢の関与を明らかにする目的で、抗生剤処置およびミョウバン投与による腸内細菌叢の変化について16S rRNAメタゲノム解析を行なった。 抗生剤を添加または非添加の飲料水を2週間与えた後、ミョウバンを経口投与したマウスの小腸内容物および小腸上皮細胞を分離し、16S rRNAメタゲノム解析を実施した。その結果、抗生剤非処置マウスの小腸内容物および小腸上皮細胞ではムリバキュラ科などのグラム陰性共生細菌が優勢であったが、抗生剤処置マウス腸内ではこれらグラム陰性菌が著しく減少し、グラム陽性のバチルス科細菌が優勢であった。また、抗生剤処置に加えてミョウバンを投与したマウス腸上皮細胞ではバチルス科細菌以外にも、様々な多様な細菌が検出された。 これらの結果より、抗生剤耐性細菌が優勢なdysbiosis環境下の腸上皮細胞において、ミョウバンはグラム陽性細菌成分によるインフラマソーム活性化を促し、カスパーゼ1とカスパーゼ4の活性化を介したピロトーシス誘導とIL-18分泌を引き起こす可能性が示唆された。抗生剤によるdysbiosisは、アルミニウム含有食品添加物ミョウバンによる腸上皮細胞の細胞死を増強させ、深刻な腸上皮バリア損傷と消化管アレルギーの発症や悪化に関与することが考えられる。今後さらにマウス生体および腸上皮培養細胞を用いて、上皮細胞死の分子機構および消化管アレルギー誘導機構について解明する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、マウス小腸内容物および腸上皮細胞の16S rRNAメタゲノム解析により、通常のマウス腸内ではグラム陰性ムリバキュラ科共生細菌が優位であること、および抗生剤はそれら菌を著しく減少させてグラム陽性のバチルス科細菌優位なdysbiosis状態を誘導することが明らかになったことは大きな進展であった。 一方16S rRNAメタゲノム解析の結果、通常の無処置の腸上皮細胞からも細菌の存在が示唆され、正常な腸上皮細胞においても腸内細菌のエンドサイトーシスが起こっていると考えられる。アルミニウム含有食品添加物であるミョウバンが、腸上皮細胞における腸内細菌のエンドサイトーシス機能やリソソーム機能にどのように影響を与え、どのようにインフラマソーム活性化・ピロトーシス誘導に関与するかは未だ明らかでなく、今後明らかにしていきたい。今年度の研究結果より、今後のさらなる研究の方向づけを明確にすることができた。 引き続く世界的社会状況の影響により、一部の試薬や実験器具などの納入の遅延や入手困難となる事態はあったが、 代わりとなる試薬や器具を使用するなどして対応した。研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果から、抗生剤処置はムリバキュラ科などのグラム陰性共生細菌を著しく減少させ、グラム陽性の抗生剤耐性バチルス科細菌優位なdysbiosisを引き起こすことが明らかとなった。こうしたdysbiosis下でミョウバンは、腸上皮細胞の細菌のエンドサイトーシス機能やリソソーム機能の不全を誘導する可能性がある。それら機能不全による腸上皮細胞質への細菌成分の曝露はインフラマソーム活性化に続くカスパーゼ1やカスパーゼ4の活性化を促し、ピロトーシスによる細胞死を引き起こすと考えられる。 そこで今後、ミョウバンが腸上皮細胞のエンドサイトーシス機能不全・リソソーム機能不全を引き起こして、リポテイコ酸などグラム陽性細菌成分の細胞質への曝露を促すかを明らかにする。加えて、細胞質リポテイコ酸によるインフラマソーム活性化、炎症性細胞死ピロトーシスとIL-18分泌誘導について解析し、ミョウバンによる腸上皮バリアの損傷と消化管アレルギーの発症における腸内細菌の関与を明らかにする。 具体的には以下を調べる。①マウス腸上皮細胞において、ミョウバンがエンドサイトーシス機能やリソソーム機能の不全を誘導することを、エンドサイトーシス検出試薬・リソソーム検出試薬を用いて共焦点レーザー顕微鏡で観察する。②マウス腸上皮細胞において、ミョウバンがリポテイコ酸などの細菌成分によるインフラマソーム活性化を促すことを、ウエスタンブロッティング、蛍光免疫染色法、ELISAなどにより明らかにする。③マウス腸管オルガノイド由来の腸上皮細胞に、SV40-T抗原遺伝子を導入することにより不死化腸上皮細胞株を樹立し、ミョウバンや細菌成分を加えた時のエンドサイトーシス機能不全・リソソーム機能不全やインフラマソーム活性化について in vitroでの検証を行う。 消化管アレルギーの予防や治療の礎となるべく、本研究をさらに推進する。
|