研究課題/領域番号 |
22K11768
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 奈良学園大学 |
研究代表者 |
飯塚 照史 奈良学園大学, 保健医療学部, 教授 (50581667)
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研究分担者 |
車谷 洋 広島大学, 医系科学研究科(保), 講師 (00335647)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 橈骨遠位端骨折 / 上肢活動量 / 二次骨折 / 予測的姿勢制御 / 転倒リスク / 動的バランス / 骨折 / 転倒 / 筋シナジー |
研究開始時の研究の概要 |
予備的検討にて橈骨遠位端骨折後の左右上肢活動量の非対称性とバランスの関連性や上肢運動パターンの変化を捉えた.これらは,橈骨遠位端骨折後に発生する骨折の連鎖に関係している可能性がある.本研究では上肢骨折後の転倒リスクに関連する要因とメカニズムを明らかにし,二次骨折予防に資する介入法の開発につなげることを目的とする.
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研究実績の概要 |
橈骨遠位端骨折(DRF; Distal Radius Fracture)は,続発性の二次骨折として大腿骨頚部骨折につながり,その相対リスクは当該骨折の既往がない者の約4倍であり,受傷後1ヶ月程度においては約18倍にもなる.また,大腿骨骨折においては歩行困難に伴う体力の低下や認知機能低下といった合併症が高頻度に発生し寿命に影響することが分かっている.したがって,初発のDRF後の転倒リスク軽減のための方策が求められる.我々はDRF後の上肢使用における左右対称性の変化がこれの要因のひとつであるとの仮説を立て検証し,利き手/非利き手に関わらず術後2カ月程度まで非受傷側の上肢使用に偏ることを客観的に明らかにした.併せて,術後1ヶ月以内での動的バランス能力低下についても明らかにした.以上から,上肢使用における左右対称性の変化と動的バランス能力低下に関連性が推測される.これに対し,術後早期においては動的バランスに関連する予測的姿勢制御(APA)の反応性低下が関連しているとの仮説を立てた.すなわち,上肢を素早く挙げるといった内的動揺についてDRFでは当初,姿勢を安定させるための下肢の筋反応が遅延するものと想定した.しかし,想定した結果と異なり術後早期での下肢筋の反応性低下は見られなかった.一方で,健常人におけるAPAの平均的反応性から大きく逸脱する者が認められた.この結果は,先行研究において転倒リスクの高い高齢者で認められる所見と一致していた.したがって,APAにおける反応性低下はDRF以前から備わる転倒リスク因子のひとつとして存在し,これに上肢活動における左右対称性の変化が加わることで,当初の動的バランス低下につながるものと推測している.今後は上肢活動における左右対称性の変化を予防することによる動的バランスの変化を検証することにより,その因果関係を明らかにする必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
橈骨遠位端骨折患者の動員について,同意を得られない,あるいは研究代表者の本務の都合によって困難な事があった.しかし,本務をコントロールすることで複数日の測定が可能となり,対象者の同意を得られれば測定が可能な状態としており,当初計画に沿えば最終年度内での測定が可能と見込んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,橈骨遠位端骨折後の転倒リスクにつながる動的バランス能力の低下と上肢活動量の左右対称性の変化が明らかとなった.また,これの原因として,予測的姿勢制御における反応性低下を仮説とした.しかし,これらの因果関係は不明である.そこで,我々は橈骨遠位端骨折以前に予測的姿勢制御の反応性低下が背景因子として存在し,これが上肢活動量における左右対称性の変化に伴う動的バランス能力低下に帰結するとの仮説を立てている.これを検討するにあたっては,上肢活動量の左右対称性の変化を予防する介入によって,動的バランス能力の変化が抑制できるか否かを検証する必要性がある.これに並行して当初計画に挙がっていた中枢機能における変化としての動作時における筋収縮の調整機能(筋シナジー)の変化について検証する必要がある.つまり,上肢活動量の左右対称性の変化が中枢機能における可塑的変化をもたらすことで,姿勢制御に関わる神経的基盤が変化し転倒リスクを高めるというメカニズムの存在の有無を確認することにつながる.そのため,当初計画を勧めながら,介入研究について予備的検討も並行して行う予定としたいと考えている.
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