研究課題/領域番号 |
22K11769
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
林 泰資 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 教授 (80173037)
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研究分担者 |
辻本 まどか ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 助手 (90845140)
吉金 優 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 准教授 (10530131)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | オルニチン / アレルギー性鼻炎 / モデルマウス / ヘルパーT細胞 / サイトカイン / 行動薬理学 / ストレス / IgE抗体 / IL-4 / コルチコステロン |
研究開始時の研究の概要 |
我々は,オルニチンがアレルギー性鼻炎モデルマウスの症状を抑制することを発見した。本研究の目的は,オルニチンの抗鼻炎作用のメカニズムを明らかにすることである。オルニチンは生体に対して様々な機能性を有するが,我々はオルニチンのストレス緩和作用,肝機能改善作用,抗炎症作用などに着目して,鼻炎抑制効果との関連性を追求する予定である。このことによってアレルギー性鼻炎治療におけるオルニチンの効果的な投与方法や抗鼻炎薬との併用について提案したい。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,オルニチン摂取によりアレルギー性鼻炎が緩和できることを証明することと,その作用メカニズムを解明することである。 令和4年度の研究において,オルニチン長期投与により,卵白アルブミン(OVA)によって誘発される鼻炎モデルマウスの症状が抑制され,OVA特異的IgE(OVA-IgE)抗体の増加が抑えられることを検証した。また,鼻炎症状の悪化に伴う血中IL-4の濃度上昇が抑制されることも明らかにした。 令和5年度は,OVA誘導鼻炎モデルマウスのOVA-IgE抗体の増加抑制メカニズムについて解明を試みた。免疫系において中心的役割を担う脾臓に着目し,各種ヘルパーT細胞のマスター転写因子および関連サイトカインの遺伝子発現量を,リアルタイムPCRを用いて検討した。その結果,オルニチン長期投与は2型ヘルパーT細胞と濾胞性T細胞のマスター転写因子遺伝子を減少させ,1型ヘルパーT細胞と制御性T細胞のマスター転写因子遺伝子を増加させることが明らかになった。 また令和4年度の研究で,オルニチン長期投与は鼻炎モデルマウスの血中コルチコステロンレベルを低下させることが明らかになったが,この作用がオルニチンの直接作用なのか,鼻炎改善による間接的な作用なのか,明らかではなかった。これを明らかにするために,鼻炎を誘発していないマウスに隔離飼育ストレスを負荷し,オルニチン長期投与による抗ストレス作用について行動薬理学的手法によって検討した。その結果,オルニチン投与が隔離飼育マウスのストレスを軽減することをオープンフィールド試験およびペントバルビタール睡眠試験によって解明することができた。 以上より,オルニチン長期投与によるによる鼻炎抑制作用の一部は,脾臓におけるヘルパーT細胞の活性バランスを修復すること,およびストレス軽減作用によって発揮されていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は,鼻炎モデルマウスにおける抗原特異的IgE抗体の増加抑制メカニズムの解明を主なテーマとして検討する予定であった。「研究実績の概要」に示したように,マウス脾臓を用いたマスター転写因子遺伝子の解析により,オルニチン投与がナイーブT細胞から2型ヘルパーT 細胞や濾胞性T細胞への分化を抑制し,1型ヘルパーT細胞や制御性T細胞への分化を促進することが示された。この作用が抗原特異的IgE抗体の増加を抑制したものと思われる。 また令和4年度に検討が遅れていたオルニチンによるストレス軽減作用と抗鼻炎作用との関連性に関する実験においても,隔離飼育マウスを用いた研究により進展をみることができた。この結果は既に学術論文に投稿し受理されており,令和6年度中に掲載される予定である。 さらに,アレルギー反応の最終段階であるマスト細胞からの脱顆粒に関する実験も,方法論的な問題を既に解決している。すなわち,予備的な段階ではあるが,オルニチンがマスト細胞モデル細胞株(RBL-2H3)からのケミカルメディエーター遊離を抑制する結果を得ている。今後は実験を重ね,再現性のある成果として報告したいと考えている。 なお,オルニチンと肝機能に関する実験は,今後,取り組むべき課題として残されている。 以上,令和5年度はおおむね順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
オルニチンの抗鼻炎作用の機序について,以下に示す4つの視点からにアプローチする予定である。 第一に,脾臓以外の臓器で免疫関連細胞およびサイトカインの解析を行う予定である。令和5年度の研究で,オルニチン投与による抗原特異的IgE抗体の濃度減少が,脾臓におけるヘルパーT細胞のバランス改善に基づくことを明らかにした。今後は特に,腸管免疫において中心的な役割を担う小腸パエイル板のヘルパーT細胞および炎症性サイトカイン遺伝子について,リアルタイムPCR法によって検討する計画である。 第二に,オルニチンのストレス改善作用について分子生物学的に検討する予定である。昨年度,オルニチン投与が隔離飼育マウスのストレスを改善することを解明したが,行動レベルの解析に留まっている。今後,オルニチンのストレス改善作用について,血中ストレスホルモンの分析を行う予定である。さらにストレスに関連する脳内の神経伝達物質の代謝を,HPLC-ECD法やリアルタイムPCR法を用いて解析する予定である。 第三に,オルニチンは肝臓における尿素回路の主要な構成成分であることから,オルニチン長期投与が肝機能に及ぼす影響についても検討する予定である。肝機能マーカーであるASTやALTなどの変化を定量する計画である。またポリアミン代謝についても検討したい。 第四に,アレルギー反応の最終段階であるマスト細胞からの脱顆粒に対するオルニチンの作用を評価する計画である。この実験では,マスト細胞モデル細胞株であるラット好塩基球性白血病細胞RBL-2H3を用いて,ケミカルメディエーター遊離に伴うβ-ヘキソサミニダーゼの放出量を定量する。この放出量を指標としてオルニチンの脱顆粒抑制作用を評価する予定である。 以上より,オルニチンの抗鼻炎作用のメカニズムを多角的に解明する所存である。
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