研究課題/領域番号 |
22K11783
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
|
研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
小林 美智代 奥羽大学, 歯学部, 講師 (80316265)
|
研究分担者 |
谷 英樹 富山県衛生研究所, ウイルス部, 部長 (20397706)
前田 豊信 奥羽大学, 歯学部, 教授 (10382756)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | SARS-CoV-2 / TMPRSS2 / ACE2 / ラクトフェリン |
研究開始時の研究の概要 |
現在パンデミックを起こしているSARS-CoV-2感染症では、変異株の出現や中高年の回復の難しさなどが問題となっている。さらに、新しい感染症であることからワクチンによる獲得免疫の効果も不明である。これに対して、自然免疫による感染制御は、特異性では劣るものの、多種のコロナウイルス属に効果が期待できる。 本研究では、ウイルス標的臓器の一つである腸において、LFとTLR3の活性化による抗ウイルス反応動態の検証を通じて、LFによるSARS-CoV-2感染抑制の作用機序を明らかにする。これにより、変異種の出現にも左右されないLFによるSARS-CoV-2感染の予防研究の構築を目指す。
|
研究実績の概要 |
本年度の研究では、昨年に続いて「ラクトフェリン (LF) のSARS-CoV-2感染に対する抑制効果とその機序の解明」を目的とした。 SARS-CoV-2は宿主のTMPRSS2とACE2をレセプターとして感染することが知られている。そこで、A549細胞におけるTMPRSS2とACE2の過剰発現株(A549-TMPRSS2-ACE2)およびACE2のみの過剰発現株(A549-ACE2)、さらにVeroE6細胞、およびVeroE6におけるTMPRSS2過剰発現株(VeroE6-TMPRSS2)を用いて、SARS-CoV-2の疑似ウイルスの感染実験を行った。以下に結果を示す。 ① VeroE6およびA549-ACE2において、LFを添加し培養したのち、SARS-CoV-2疑似ウイルスを感染させた。ラクトフェリンは濃度依存的に感染を抑制した。 ② VeroE6-TMPRSS2およびA549-TMPRSS2-ACE2において、LFを添加し培養したのち、SARS-CoV-2疑似ウイルスを感染させた。ラクトフェリンは感染を抑制しなかった。 ③ VeroE6-TMPRSS2およびA549-TMPRSS2-ACE2において、camostat mesylateによりTMPRSS2阻害すると、LF による SARS-CoV-2疑似ウイルス感染の抑制が回復した。 SARS-CoV-2がACE2に結合したのち、TMPRSS2が宿主細胞が発現している場合は、TMPRSS2がSARS-CoV-2の表面に発現しているSタンパクを切断することにより感染が成立する。しかしTMPRSS2が存在しない場合はエンドサイトーシスによって宿主細胞に取り込まれ、カテプシンにSタンパクが分解され感染が成立することがわかっている。そのことから、ラクトフェリンはカテプシンを介した感染経路に関与している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
去年に引き続き、Caco2のTMPRSS2過剰発現株の樹立を目指したが、作成することができていない。そのため、この研究の大きな目標である、LFの小腸に対するウイルス感染抑制を調べられない。研究がやや遅れているのはそのためである。
|
今後の研究の推進方策 |
① Caco2におけるTMPRSS2過剰発現株の作成を引き続き行う。腸におけるLFの作用機序の解明に結びつける。 ② 武漢株、オミクロン株のSARS-CoV-2疑似ウイルスを用いて、LFの抑制効果およびプロテアーゼ阻害剤の効果を比較検討する。それにより、SARS-CoV-2の変異株の違いによってLFの感染抑制に対する効果を検討する。 ③ LFがプロテアーゼ阻害作用を持つか検討する。これにより、LFの感染抑制の作用機序の解明に努める。
|