研究課題/領域番号 |
22K11792
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2023) 武庫川女子大学 (2022) |
研究代表者 |
伊勢川 裕二 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 客員研究員 (20184583)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | フィトエストロゲン / ポリフェノール / 大豆 / カラハリスイカ / ユーグレナ / 亜鉛 / 亜鉛イオノフォア / インフルエンザウイルス / サクナ / 5-LOX / カフェ酸 / 抗インフルエンザウイルス / シグナル伝達機構 |
研究開始時の研究の概要 |
1)カラハリスイカ、ホップや大豆抽出物のと同時に、それぞれのフィトエストロゲンの8-プレニルナリンゲニン、6-プレニルナリンゲニンやアカセチンによるエンドサイトーシス阻害経路を明らかにする。 2)フィトエストロゲンのエンドサイトーシス阻害経経路が、植物抽出物による阻害経路を説明できるかどうかの検討する。 3)エンドサイトーシス関連のフィトエストロゲンからのシグナル伝達系を明らかにする。 4)フィトエストロゲンのウイルス増殖後期の阻害機構とそのシグナル伝達系を明らかにする。 5)フィトエストロゲンがSARS-CoV-2にも有効であるかを阪大微研の塩田教授との共同研究で明らかにする。
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研究実績の概要 |
インフルエンザは、毎年世界的な流行を引き起こし、高い罹患率や死亡の原因となることから、公衆衛生において重要な問題となっている。特に、ヒトに感染するA型とB型インフルエンザウイルスに対する対策が重要である。現在、インフルエンザの予防にはワクチン、治療には抗ウイルス薬が用いられている。しかし、低い予防効果や、薬剤耐性株の出現が問題となっている。我々は、薬剤とは異なった作用機序を示す食品中の機能性成分に着目し、フィトエストロゲンの抗ウイルス効果を明らかにすることを目的とした。フィトエストロゲンであるダイゼインが有効成分の1つであることを見出したが、ゲニステインには抗ウイルス活性が認められなかった。これはゲニステインがカベオラ依存エンドサイトーシスを阻害するが、インフルエンザウイルスはカベオラ依存エンドサイトーシスを利用せず、クラスリン依存エンドサイトーシスを利用していることと大豆抽出物もクラスリン依存エンドサイトーシスを阻害することも明らかにした。大豆抽出物中のその阻害物質を検索した結果、アカセチンが候補として上がってきた。カラハリスイカ含有物のフィトエストロゲンである8-プレニルナリンゲニンやピノレシノールとフラボンであるアカセチンの抗ウイルス効果を示す物質として列挙し、作用機構も考察し、総説としてFoods 12 (2023) 3866にまとめた。ユーグレナ含有物のin vivoとin vitroで抗ウイルス効果を示す物質について総説としてFoods 12 (2023) 4438にまとめ、細胞における阻害物質が亜鉛であることを示した。ユーグレナ抽出物には抗ウイルス効果の即効性がないのは、細胞内への取り込みの問題であることを明らかとした。亜鉛イオノフォアの添加により取り込み促進と即効性が確保でき、相乗効果も示された。さらに、抗ウイルス効果を示す亜鉛以外の成分の存在も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の場を引っ越したため、研究の立ち上げが遅れてしまった。その代わり、これまでの仕事のまとめと再編成を行い、問題点の明確化が可能となった。 カラハリスイカの抗ウイルス活性を検討しているとフィトエストロゲンの8-プレニルナリンゲニンとフラボンであるアカセチンの抗ウイルス効果がエンドサイトーシスと生育後期であり、酷似していることが明らかとなってきた。従った、両阻害剤の阻害機構とシグナル伝達に関し詳細を明らかにし、比較検討するという新たな研究テーマが浮かび上がった。信州大学の三谷らにより、フィトエストロゲンのゲニステインに対するレセプターを検出する方法が開発されたので、同等の方法を用いダイゼインの細胞内レセプター検索や5-HETE脂質結合物の生理機能解析といった新たな研究テーマが浮かび上がった。また、ユーグレナの抗ウイルス効果の検討から、有効成分の相乗効果により抗ウイルス効果の増強が明らかとなり、抽出物中の含有量が少なくとも高い活性を示す可能性があり、今後、相乗効果という新たに研究テーマが浮かび上がった。
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今後の研究の推進方策 |
下記の当初の予定を実行に移していく予定である。 ダイゼインのシグナル伝達においてダイゼインからMEK/ERK経路を活性化がどの様に起こるのかをダイゼイン結合タンパク質の検索から明らかにする一方、5-LOXの産物である5-HETEがどの様にウイルス増殖を抑制するのかについて明らかにしてゆく。 カラハリスイカの有効成分の8-プレニルナリンゲニンによるウイルスエントリーの阻害機構とウイルス出芽期の阻害機構を明らかにすると同時に、大豆の有効成分でもあるアカセチンのエンドサイトーシス阻害機構解明も行う。さらに、他の有効成分であるフィトエストロゲンについてもその阻害機構を明らかにしてゆく。 サクナのカフェ酸が熱処理により、抽出物中の量が増加する機構について、熱処理の条件検討と共に、カフェ酸合成中間産物の量的変化を追うことで代謝経路を明らかにすると同時に活性化機構も明らかにしてゆく。 ユーグレナ中のZn以外の抗ウイルス成分について、まず、ユーグレナの培養条件(炭素源、培地中のZn含有量、光強度など)による含有量の変化、次に含有量の多い条件下で、サンプルを調整し、抗ウイルス成分を部分精製し、同定を行う。さらに、同定産物の阻害機構も明らかにしていく。
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