研究課題/領域番号 |
22K11797
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
櫻井 俊宏 北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (60707602)
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研究分担者 |
惠 淑萍 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (90337030)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | HDL / 酸化 / ミトコンドリア / カルジオリピン / モノリゾカルジオリピン / NASH / エネルギー / 酸化HDL |
研究開始時の研究の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は酸化ストレスや肥満、生活習慣病が関与する疾患である。これまでに申請者は、酸化高比重リポタンパク質(酸化HDL)がNASH発症に深く関わることを示唆する知見を得た。近年のNASH研究で、酸化ストレスとミトコンドリア機能異常がNASHの発症や進展に関わることが示唆されている。本研究では、酸化ストレスの一因としての酸化HDLがミトコンドリア機能障害を引き起こしてNASH発症に関与するかどうかを明らかにすることを目的とし、肝培養細胞を用いて酸化HDLのミトコンドリア機能への影響を生化学的に調査する。この解明は将来のNASH発症の解明に役立つ。
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研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は酸化ストレスや肥満、生活習慣病が関与する疾患であり、患者数が世界的に増加している。これまでに申請者は、酸化高比重リポタンパク質(酸化HDL)がNASH発症に深く関わることを示唆する知見を得た。例えば、酸化HDLは肝細胞での炎症、線維化、脂肪滴形成に関与した。また、脂肪滴の酸化を明らかにし、さらに血中酸化HDLはNASHで高値であることを見いだした。一方で近年のNASH研究で、酸化ストレスとミトコンドリア機能異常がNASHの発症や進展に関わることが示唆されている。 以上から本研究では、酸化ストレスの一因としての酸化HDLがミトコンドリア機能障害を引き起こしてNASH発症に関与するかどうかを明らかにすることを目的とし、肝培養細胞を用いて酸化HDLのミトコンドリア機能への影響を生化学的に調査することとした。当該年度の研究はミトコンドリアの膜脂質に着目し、カルジオリピンとその代謝関連物質の網羅的な分析を行い、酸化HDLにおいてカルジオリピンのプロフィール異常を調査した。今回使用したOrbitrap LC-MS/MSを用いるリピドミクス解析(一斉分析)ではCL及びMLCLの半定量的な測定が可能であり、多くの分子種が存在するCL及びMLCLのプロフィールを調査でき、当研究室においては既に確立された手法であった。発見は、ミトコンドリア機能低下の指標としたMLCL/CL比が酸化HDL添加群でのみ有意な増加を示したことであった。この結果は将来的に酸化HDLの生理学的機能の解明に役立ち、健康科学的に大きな波及効果が期待される。計画は概ね順調に進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリアに特異的に局在する脂質「カルジオリピン(CL)」は4種類のアシル鎖が結合したリン脂質である。また、CLの前駆物質の「モノリゾカルジオリピン(MLCL)」は3種類のアシル鎖が結合したリン脂質であり、そのプロフィール異常、特にMLCL/CL比はミトコンドリア機能低下を表すと考えられている。そこで当研究室で機器及び測定系を保有するOrbitrap 液体クロマトグラフィー質量分析計によるリピドミクス解析で、カルジオリピン及びモノリゾカルジオリピンのプロフィールを調査することを目的とした。 ヒト肝培養細胞C3Aを24-well plateの各ウェルに播種し、24時間銅酸化させた酸化HDLまたは未酸化HDLまたはPBSを培養液に混和し、それらを各ウェルへ添加し、24時間刺激後に細胞を回収した。その細胞から脂質を抽出してリピドミクス解析を行った。その結果、Control群と未酸化HDL添加群に比べて酸化HDL24時間群においてMLCLが有意に増加した。CLはそれら3群間に有意差は無かった。ミトコンドリア機能低下の指標としたMLCL/CL比は酸化HDL添加群でのみ増加した。同様に、細胞播種後にリノール酸を24時間刺激して脂肪肝モデルを作製し、その後に同様のHDLを24時間刺激した結果、MLCL/CL比は酸化HDL添加群でのみ増加した。よって、酸化HDLがCL代謝経路の異常を促すことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでのデータに基づき、酸化HDLはCLとMLCLの代謝のバランスを崩す因子であることが推察された。その異常を示した経路や機序は未だに明らかにされていない。今後はその解明のために、Real-time PCR及びWestern blottingを駆使してカルジオリピンの生合成やカルジオリピンのRemodeling (CL内の脂肪酸の交換によるCLの成熟化の過程のこと)に関わる遺伝子の発現量解析とそのパスウェイを評価する。 具体的な計画としては、ヒト肝培養細胞C3Aを24-well plateの各ウェルに播種し、24時間銅酸化させた酸化HDLまたは未酸化HDLまたはPBSを培養液に混和し、それらを各ウェルへ添加し、24時間刺激後に細胞を回収する。その細胞からRNAあるいはタンパク質を精製してReal-time PCR及びWestern blottingにおいてミトコンドリア機能に関わる遺伝子及びタンパク質の解析を行う予定である。各種標的遺伝子に関するプライマーの設計及び直線性の確認は既に試行済みであり、最適なreal-time PCRの条件を検討済みであり、速やかに本実験計画の遂行を予定している。Western blottingについてはいくつかの関連抗体を入手済みであるが、抗体濃度の最適化を順次行い、本実験に適用する予定である。 以上の成果を、国際誌の学術論文にまとめ、投稿予定である。
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