研究課題/領域番号 |
22K11808
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
山西 倫太郎 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (30253206)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | レチノ―ル / グルタチオン / THP-1細胞 / 酸化還元状態 / ビタミンA / レチノール / THP-1 / マクロファージ / 抗酸化 |
研究開始時の研究の概要 |
生体における抗酸化性の亢進は、酸化ストレスによる生理活性へのダメージの回避により健康維持に貢献すると考えられる。免疫系細胞も酸化還元感受性があるが、申請者は免疫系細胞であるマウスのマクロファージ(Mφ)培養細胞を用いて、ビタミンAであるレチノールが細胞内抗酸化物質グルタチオン(GSH)濃度の増加を導くことを明らかにしている。今回の申請研究では、種々の単球・Mφ系培養細胞や実験動物を用いて、レチノールによる抗酸化誘導の特異性や作用メカニズム等を解析すると共に、免疫機能への波及効果を評価することを通して、レチノールの抗酸化誘導は生理的な影響力を伴った新規ビタミンA作用候補たり得るかどうか検討する。
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研究実績の概要 |
前年度の本書類において、構造的にレチノールに関連のある類縁物質各種が細胞内総グルタチオン(tGSH)量に及ぼす増加的影響について比較した結果、4-ケトレチノール・アンヒドロレチノールは効果を示さなかった旨報告したが、今期の検討で、これらの物質にも効果があることが判明したので訂正したい。レチノイン酸・フェンレチニド(レチノイン酸誘導体の一種)に効果がないという結果については、訂正は無い。次に、GSH合成律速酵素GCLに対するレチノールの影響を検討したところ、レチノール添加濃度とGCLの調節サブユニット量との間に正の相関が検出されたため、レチノールが本酵素の発現を誘導した結果、tGSH量が増加することが示唆された。転写阻害剤アクチノマイシンD存在下でレチノールの作用が消失したので、その可能性は更に高くなった。レチノールによるGCL発現誘導に関与する転写因子を明らかにするため、レチノールと関係のある転写因子レチノイン酸受容体(RAR)やレチノイドX受容体(RXR)、酸化還元に関係のある転写因子AP-1やNrf2を候補として、それらの阻害剤存在下でのレチノールによるtGSH量増加作用について検討した。その結果、RAR・RXR・AP-1阻害剤はいずれも影響を及ぼさなかったが、Nrf2阻害剤存在下ではレチノールによるtGSH量増加作用は消失した。最後に、レチノール等と同様にtGSH量を増加させる物質であるスルフォラファンやt-BHQ等とレチノールの間に相加・相乗効果があるかどうかについて検討した。それぞれが最大効果を及ぼす濃度同士で混合した結果、相加・相乗効果は無いことが判明した。スルフォラファンやt-BHQは、転写因子Nrf2を活性化することが知られており、今回得た結果は、レチノールによるtGSH量増加作用も、同じくNrf2による転写調節が関与している可能性が高いことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の本書類において、培養細胞実験系で実施するとした実験は順調に実施することができ、かつ科学的に意義のあるデータが得られたものと考えている。即ち、レチノールによる細胞の抗酸化誘導を支持する有力な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞実験系においては、レチノールの影響が実際にGCLの転写に影響を及ぼすことを確定するため、レチノール刺激に伴うGCLのmRNA量の変化を検出したいと考えている。また、レチノールと同様にtGSH量を増加させるスルフォラファンやt-BHQは、GCLと同時にNAD(P)Hキノンオキシドレダクターゼ、ヘムオキシゲナーゼ、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ等の酵素類も増加させることが知られているので、レチノールも同様であるのかどうかについて検討したい。一方で、動物実験については、昨年度はあまり労力を割くことができず進捗はなかった。今年度は、昨年度に実施を計画していた実験動物から採取した腹腔マクロファージあるいは脾臓由来の粗樹状細胞を、±レチノール添加培地で培養した場合に、これまでの株化培養細胞を用いて得られたものと同様、レチノールによるGSH産生やGCL発現の誘導という実験結果が得られるか検討する。この実験により、レチノールに対する感受性において、生体から採取したての初代培養細胞が株化培養細胞と同様であるとの証拠が得られた上で、±レチノール餌を摂取させるin vivo実験に進みたいと考えている。
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