研究課題/領域番号 |
22K11814
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
|
研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
赤石 樹泰 武蔵野大学, 薬学部, 准教授 (90386384)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | ミクログリア / 好中球 / 神経変性疾患 / 中枢-末梢連関 / 神経炎症 / 脳-末梢連関 |
研究開始時の研究の概要 |
脳内に存在するミクログリアは、アルツハイマー病をはじめとした神経変性疾患の発症や増悪に重要な役割を担っている。近年、アルツハイマー病や多発性硬化症などの患者の脳内で好中球の浸潤や、好中球から放出されたNETsなどが発見され、疾患の発症や増悪に関与する可能性が注目されているが、その詳細は不明である。本研究では、1)アルツハイマー病などで生じる神経変性には、好中球―ミクログリアの相互作用が関与するか、2)そのメカニズムは何か、3)その分子メカニズムをターゲットとした治療薬の開発は可能かという課題に取り組むこととした。
|
研究実績の概要 |
中枢神経系におけるミクログリア細胞の異常は、アルツハイマー病や多発性硬化症などの神経変性疾患の発症・増悪に重要な役割を果たすと考えられている。最近、アルツハイマー病及び多発性硬化症の脳や脊髄内では、末梢に存在する好中球の中枢神経系への浸潤が報告されているものの、好中球がミクログリア細胞に対してどのような影響を及ぼすのかについては未だに不明な点が多い。また、アルツハイマー病と多発性硬化症のモデル動物では、ミクログリア細胞を介した神経障害機構に共通点が多く、さらにアルツハイマー病モデルマウスでは記憶障害の症状が出現するのに数か月以上もの期間がかかるのに対し、多発性硬化症の病態モデルの1つとされるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)では、短期間で症状が発症する。そこで私は、好中球及びミクログリア細胞の神経変性疾患に及ぼす影響を解析する手段として、EAEマウスを用いて検討を開始した。定法に従いEAEを誘導すると、マウスの尾や後肢に麻痺が出現した。ミクログリア細胞の活性を阻害することが報告されているミノサイクリンを連日投与すると、EAEの発症が完全に抑制された。同様に、好中球遊走を抑制することが報告されているSB225002を連日投与すると、EAE発症が有意に抑制された。次に、FACS(fluorescence activated cell sorting)を用いて、CD11b陽性細胞数とLy6G陽性細胞数を定量したところ、運動麻痺の発症に伴って、脊髄内におけるミクログリア細胞及び好中球の著しい増加が認められた。さらに、通常の飼料を摂取したマウスに比べ、高食塩含有飼料を摂取したマウスでは、EAEによる運動麻痺が有意に増悪された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、FACSを用いて、脊髄内におけるミクログリア細胞及び好中球数を定量解析したところ、臨床症状の発現に伴う両細胞数の著しい増加が認められた。さらに、通常の飼料を摂取したマウスを比べ、高食塩含有飼料を摂取したマウスでは、EAEによる運動麻痺の増悪が観察された。 アルツハイマー病と多発性硬化症は、代表的な中枢神経系の慢性炎症疾患であるが、病気の初期段階における炎症のスイッチとなる要因については完全に解明されていない。本研究は、食事で摂取するNaCl量が、臨床症状や病巣部位への好中球の浸潤ならびにミクログリア細胞の増加に影響する可能性を示唆するものと期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度に行ったFACS実験の一部で、ミクログリア細胞の活性を抑制しても、好中球の脊髄内への浸潤が十分に抑制できないことが示唆されたので、令和6年度は、好中球の遊走を抑制する薬物や好中球を枯渇する抗体を末梢投与することで、EAEマウスにおける脊髄内ミクログリア細胞の異常活性化が抑制されるかどうか明らかにする。さらに、好中球が脊髄内へ浸潤する分子メカニズムやミクログリア細胞と相互作用する機序を解明し、好中球をターゲットとした治療薬開発の可能性についても検討したい。
|