研究課題/領域番号 |
22K11829
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
閔 莉娟 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (80726175)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 脳血管細胞 / 脳血管老化 / 認知機能 / アルツハイマー病 / シャペロン介在性オートファジー / LAMP-2A / 認知機能低下 / 脳血管老化・保護 / アミロイドβ蓄積 / オートファジー / レニン・アンジオテンシン系 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はこれまでに、Ang IIが大動脈由来血管細胞の老化を促進することを明らかにしてきたが、Ang II刺激から老化に至るメカニズム、さらにAng II依存の血管老化が認知機能低下の要因になるのかは明らかにされていない。そこで本研究は①Ang II刺激が脳血管細胞を老化させ、認知機能を低下させることを個体レベルで実証する。②Ang IIが脳血管老化を促進するメカニズムをシャペロン介在性オートファジー(CMA)に着目して明らかにする。③Ang II-CMA-脳血管老化-認知機能低下の関係を明らかにする。本計画によって、RASを標的とする認知症の新しい治療戦略の道筋が開かれるものと期待される。
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研究実績の概要 |
[目的] ①アンジオテンシン(Ang)II刺激が脳血管細胞を老化させ、認知機能を低下させることを個体レベルで実証する。②AngIIが脳血管老化を促進するメカニズムをシャペロン介在性オートファジー(CMA)に着目して明らかにする。③AngII-CMA-脳血管老化-認知機能低下の関係を明らかにする。 [方法] マイクロ浸透圧ポンプでAngIIを脳室内投与したC57BL/6Jマウスからの脳血管とAngII連日刺激した脳血管平滑筋細胞(BVSMC)を用い、老化関連βガラクトシダーゼ(SA-β-gal)染色により脳血管細胞老化を評価した。老化関連因子p53やp16などCDKIの発現、CMA経路関係因子LAMP-2A、Hsc70、Hsp90、CHIPなどの発現はAngII連日刺激したBVSMCのライセ―トを用い、ウェスタンブロッティング法にて測定した。また、LAMP-2Aの老化における役割を明らかにするため、LAMP-2Aのコンストラクトを作製してきた。 [結果] AngIIの脳室内投与マウスの脳血管のSA-β-gal染色実験は一回だけ行ったため、 明らかに証明できるデータを得なかったが、AngIIで連日刺激によりBVSMCの老化細胞数とp53、p21、p27、p16などCDKIの発現は増加することが認められた。また、BVSMCへのAngII刺激によりCMA経路関係因子の中、LAMP-2Aだけの発現は減少することが認められた。遺伝子LAMP-2A、タグFLAGを含むpcDNA3.1(+)組み換えプラスミドを精製でき、BVSMCにトランスフェクションしてLAMP-2Aの高発現が確認された。これから、得た組み換えプラスミドを用いてLAMP-2Aの老化作用を明らかにする。 [結論] AngIIがCDKIを介して脳血管細胞を老化させる可能性が示唆された。そのメカニズムにはCMA経路関係因子であるLAMP-2Aが深く関与している可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一つの理由はマイクロ浸透圧ポンプでAngIIの脳室内への投与は不順調だった。カテーテル先端の針をしっかり固定できなかったので、十分量のAngIIが脳室内に流入したかを確定できなかった。もう一つの理由はLAMP-2Aのコンストラクトの作製は不順調だった。Midi Prepの時、技術の原因で、何回やってもプラスミドDNAの精製度は低かった。以上の理由で、in vivoとin vitroの両方の実験を円滑に進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後以下の順に研究を推進する: 1.作製できた遺伝子LAMP-2A、タグFLAGを含むpcDNA3.1(+)組み換えプラスミドを用い、AngII刺激で誘導されたBVSMCの老化とCDKI発現の増加は抑制されるかを検討する。一方、in vivoで、マイクロ浸透圧ポンプでAngIIの脳室内投与の実験技術を改善して、AngII投与マウスから脳血管を採取し、SA-β-gal染色で脳血管老化の評価を繰り返す。2.In vivoとin vitroを同時に進む。AngII投与したマウスの脳血管とAngII連日刺激したBVSMCを用い、酸化ストレス(DHE染色、NADPH oxidase活性)、ミトコンドリアDNA損傷(8-OHDG)の関係を検討する。3.AT1受容体阻害薬ARBあるいは抗酸化剤を使用して、AngII刺激からCMA因子LAMP-2Aの発現変化に至るメカニズムを明らかにする。一方、in vivoで、行動解析試験(バーンズ迷路、Y字迷路等)を実施し認知機能を評価し、脳内Aβレベル(ELISA及びウェスタンブロッティング法)、脳内炎症(real-time RT-PCRによる炎症因子のmRNA発現測定)、神経細胞障害(免疫染色法によるpyknosisやアポトーシス検出)の程度を調べる。4.LAMP-2Aが含まれるCMA因子によるCDKIの分解が促進されるか否か明らかにするために、免疫蛍光染色、免疫沈降法、生化学的分画法などを組み合わせて、CDKIとHsp90/Hsc70、LAMP-2Aとの相互作用、およびリソソームへの移行を検討する。5.AngII投与したマウスの脳血管を用い、上記の実験で認められたCMA因子LAMP-2Aの発現をin vivoで検証する。次いで、血管平滑筋特異的にLAMP-2Aの発現を増強させた遺伝子組換えマウスを作出し、上記の手法で、高発現のLAMP-2AがAngII誘導された脳血管老化を抑制し、Aβ蓄積や神経細胞障害を軽減させ、認知機能が改善されるか明らかにする。
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