研究課題/領域番号 |
22K11837
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
川端 輝江 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (80190932)
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研究分担者 |
大久保 剛 仙台白百合女子大学, 人間学部, 准教授 (40513172)
庄司 久美子 (加藤久美子) 女子栄養大学, 栄養学部, 助教 (50721825)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 葉酸摂取 / n-3系脂肪酸 / コリン代謝 / リン脂質 / ワンカーボン代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
葉酸から始まるワンカーボン代謝は、児の成長に影響する脂肪酸やコリンを含むリン脂質代謝と連動している。また、葉酸の投与によって体内n-3系長鎖多価不飽和脂肪酸組成、特にドコサヘキサエン酸組成が高まる可能性が指摘されている。そこで本研究では、サプリメント葉酸を4か月間摂取した若年女性の介入試験で得られた生体試料を用い、介入前後の血漿グリセロリン脂質中脂肪酸組成及び濃度、さらには、リン脂質代謝を構成するコリン関連物質を測定する。葉酸投与による脂肪酸及びコリン代謝への影響を、個人の遺伝的背景及び栄養摂取状況、さらには、ワンカーボン代謝系の動態と合わせて検討する。
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研究実績の概要 |
葉酸はアミノ酸や核酸合成、DNAやヒストンへのメチル化修飾、血管内皮細胞の傷害性を有するホモシステインの低下等と密接に関わっている。また、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含むn-3系長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3LCPUFA)は、妊娠期間の延長、低出生体重児や産後うつ病の低下等に関与している。さらに、本研究ではコリン代謝についても言及するが、コリンは生体膜を構成するリン脂質成分として、また、神経伝達物質のアセチルコリンの成分としての役割を持つ。いずれも、個々の栄養素成分として重要な働きを有し、特に、周産期の母児の栄養に必須とされている。 葉酸から始まるワンカーボン代謝系は、n-3LCPUFAやコリンを含むリン脂質代謝系と密接に関連している。先行研究では、葉酸の投与によって体内n-3系長鎖多価不飽和脂肪酸組成、特にドコサヘキサエン酸組成が高まる可能性を報告した。しかしながら、これらの代謝系に関与する物質の動態を、ヒトを対象として総合的に解明しようと試みた研究はこれまでにない。 本研究では、サプリメント葉酸(0、400、800μg/day)を4か月間摂取した若年女性の介入試験で得られた生体試料を用い、介入前後の血漿グリセロリン脂質中脂肪酸組成及び濃度、さらには、リン脂質代謝を構成するコリン関連物質を測定する。本研究において、葉酸介入が、脂肪酸及びコリンを含むリン脂質代謝に影響を与えることが明らかとなれば、出産前及び妊娠女性への葉酸補給に対する新たなエビデンス構築に貢献できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、若年女性を対象とした「妊娠可能年齢女性への葉酸サプリメント投与によるワンカーボン代謝動態の総合的評価」(庄司久美子研究代表者、基盤C、課題番号20K11516、2020~2022年)での介入試験で得られた血液検体を利用し、血漿グリセロリン脂質中脂肪酸組成及び濃度、血漿コリン及びコリン関連物質、遺伝子多型解析を実施する。サンプル数は、対象者336人×2ポイント(介入前と後)である。予定としては、3年間の研究期間のうち、1~2年目に脂肪酸及びコリン関連物質の分析及び遺伝子多型解析、3年目にデータを総合的に解析、論文作成としている。 血漿グリセロリン脂質中脂肪酸組成及び濃度は、ガスクロマトグラフィー(GLC)によって分析を進めている。GLCではキャリアガスにヘリウムを用いるが、ガス資源の減少に加え、ロシア・ウクライナ戦争の勃発によって、年度当初ヘリウムガスが入手困難となった。年明けにやっと入手できたため、その時点から直ちに分析を開始して、現在約100サンプルの分析が完了したところである。やや分析の進捗は遅れているものの、研究期間2年目で残りのサンプルすべての分析は完了予定である。その他、脂肪酸不飽和化酵素の遺伝子多型(FADS1 rs174547,T/C)のSNP分析は完了している。 血漿コリン及びコリン関連物質は、水溶性コリンと脂溶性コリンをそれぞれ別の系を用いて分析する。現在、それぞれの前処理が完了したところである。試薬の入手や液体クロマトグラフ質量分析の調整も完了している。
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今後の研究の推進方策 |
3年間の研究期間の2年目にあたる2023年度は、血漿グリセロリン脂質中脂肪酸組成及び濃度のガスクロマトグラフィー(GLC)分析を、残りのサンプル(約600)について順次実施していく。また、リン脂質(PC)合成酵素の遺伝子多型(PEMT 774 G>C, rs12325817)のSNP分析も実施する。 血漿コリン及びコリン関連物質測定のため、大学連携研究設備ネットワークシステムを介し、東京農工大学工学部の液体クロマトグラフ質量分析装置を借用する。機器調整は終了していることから、前処理済みのサンプル分析を進めていく。その他、ホスファチジルエタノールアミン(リン脂質)を蛍光法にて測定する。 上記の分析結果から、対象者の個人差を調整した上で、葉酸介入前後の血中グリセロリン脂質中DHAやn-3LCPUFAレベル、コリン関連物質量、さらには、ワンカーボン代謝系を構成する主要物質を評価する。これにより、リン脂質の合成に関わるPEMT経路とCDP-コリン経路の活性状態を推測し、葉酸摂取によって起こり得る脂肪酸及びコリン代謝変化を明らかにする。
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