研究課題/領域番号 |
22K11843
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
|
研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
中島 健輔 長崎国際大学, 薬学部, 助教 (90762162)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | うつ病 / BDNF / 末梢組織 / カンキツ / 脳由来神経栄養因子 / ACHN細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
脳由来神経栄養因子(BDNF)は脳内で抗うつ作用を示すタンパクであり、脳内BDNF量を増加させる物質は新規抗うつ薬のシーズとして期待されている。BDNFは“脳由来”という名称ながら末梢組織でも産生され末梢から脳へと移行するため、末梢でBDNFの産生を促進する物質は脳内BDNF量を増加させ、抗うつ作用を示すと考えられる。本研究では、末梢組織に由来する細胞(ヒト腎がん細胞ACHN)を用いてBDNF産生促進作用を有するカンキツ・カンキツ成分を見出し、その産生促進機序ならびにラットにおけるうつ病予防・改善効果を検討する。本研究の推進は食によるうつ病予防ならびに新規抗うつ薬の創製に貢献すると期待される。
|
研究実績の概要 |
神経細胞の新生・成長を担う脳由来神経栄養因子(BDNF)の脳内における減少は、うつ病の発症につながる。BDNFは脳由来という名称ながら腎臓などの末梢組織でも産生され脳へと移行する。そのため、末梢組織においてBDNFの産生を促進する物質は、脳内BDNF量の増加をもたらし、うつ病予防・改善効果を示すと考えられる。この考えに基づき本研究では、研究代表者がBDNF産生能を報告したヒト腎がん細胞ACHNを用いてBDNF産生促進作用を有するカンキツ成分を見出し、その産生促進機序ならびにラットにおけるうつ病予防・改善効果を明らかにすることを目的とした。 2023年度は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構および鹿児島大学などから入手した様々なカンキツ品種のACHN細胞におけるBDNF産生促進効果の検討を行い、ダイダイ区・ミカン区に属するカンキツ品種ならびにそれらの交雑種の果皮、可食部および摘果果実が高い効果を示すことを見出した。また、それらの効果の一部にカンキツに含有されるフラボノイドであるノビレチンが関与している可能性を明らかにした。続いて、ダイダイ区およびミカン区カンキツのBDNF産生促進機序の検討を実施し、タンカンなど数種のカンキツ品種がcAMP response element binding protein(CREB)リン酸化により、BDNF遺伝子の発現を増加させることを見出した。さらに、ダイダイ・ナツミカンの未熟果実を基原とする生薬であるキジツを含有する四逆散の経口投与がストレス負荷によるラット血中BDNF濃度の低下を抑制することを明らかにした。 上記の成果の一部は、J. Pharm. Health Care Sci.およびJ. Nutr. Sci. Vitaminol.の2報の学術雑誌に掲載された。また、7件の学会発表を行い、そのうち2件は優秀発表賞を受賞している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイダイ区、ミカン区、さらにはそれらの交雑種カンキツの果皮、可食部および摘果果実のACHN細胞における高いBDNF産生促進効果を見出し、その関与成分ならびに促進機序の一端を明らかとした。これらの成果は2報の学術雑誌に掲載された。また、カンキツを基原とする生薬を含有する四逆散の経口投与がin vivoにおいても効果を示すことを明らかとした。2023年度に見出した多くのカンキツ品種のACHN細胞におけるBDNF産生促進効果は四逆散のそれと比べ高いものであったため、今後の成果が期待される。上述の進捗状況から、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの検討では、ACHN細胞のBDNF産生を1.4倍ほど促進した物質はいずれもラット血中BDNF濃度を上昇させていた(Nakajima et al. Biomed. Res. 2023、他)。2023年度に実施したスクリーニングにより、ACHN細胞において1.4倍を超える効果を示す多くのカンキツ品種が明らかとなった。今後はそれらのカンキツ品種から活性成分を単離・同定し、そのBDNF産生促進機序ならびにラットにおけるうつ病予防・改善効果を検討することで、末梢組織を作用点とする新規抗うつ薬シーズの発見を目指す。
|