研究課題/領域番号 |
22K11850
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小林 翔 山形大学, 農学部, 准教授 (10779490)
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研究分担者 |
佐藤 英世 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60235380)
塩野 義人 山形大学, 農学部, 教授 (80361278)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | グルタチオン代謝 / システイン供給 / フェロトーシス / CNDP2 / シスチン輸送体xCT |
研究開始時の研究の概要 |
グルタチオン(GSH)の枯渇が引き金になって細胞はフェロトーシスにより死滅する。本研究では、先行研究で申請者らがフェロトーシス抑制遺伝子として同定したCNDP2の生体内での生理機能の解明を目指した研究を実施する。CNDP2がGSH合成に必要なシステインを細胞内に供給することに働くことを、CNDP2欠損マウスおよび培養細胞を用いて解析することで、フェロトーシスに関連する疾患の治療や創薬への礎とする。
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研究実績の概要 |
細胞内の主要な抗酸化物質であるグルタチオンの枯渇が引き金になり、鉄イオン依存性細胞死(フェロトーシス)が誘導される。本研究では、申請者らがフェロトーシス抑制遺伝子として同定したCNDP2の生体内での生理機能の解明を目指した研究をおこなっている。 CNDP2はグルタチオン分解のより細胞内のシステイン再利用系として機能することが予想されるため、本機能の解析のためにゲノム編集によりCNDP2を欠損する細胞株の作製に取り組んでいる。本細胞の作製が済み次第、フェロトーシス誘導剤への感受性やフェロトーシス関連遺伝子との関係を解析する予定である。 腎臓は特にフェロトーシスに脆弱である組織であること示唆されており、CNDP2は腎臓でも発現することから、CNDP2は腎保護的に働くこと予想される。そこで、CNDP2遺伝子欠損マウスを用いて、ストレプトゾトシン(STZ)誘導性Ⅰ型糖尿病モデルによる腎障害への影響を検討した。STZ投与後、CNDP2欠損マウスは野生型(WT)マウスと同程度の血糖値の上昇を示し、腎機能や肝機能のマーカーによる生化学検査では、WTのマウスと比較して有意な差が見られなかったことから、本モデルではCNDP2の生理機能は明らかにすることが出来なかった。本モデルでは腎障害が軽度であったことから、今後は片腎摘出後にSTZ投与を行ない、より重度な腎障害モデルでの検討を進める予定である。 食品由来のフェロトーシスを抑制する化合物の探索のため、シスチン輸送体xCTを欠損する細胞を用いて、20種類以上の食品抽出物のスクリーニングを実施した。その結果、ネギ科の野菜や黄檗、クロモジにフェロトーシス抑制効果、酒粕に細胞内グルタチオン増大効果があることが見いだされた。今後、これらの食品抽出物とCNDP2との関連について解析と共にどうような分子機序でフェロトーシスを抑制するかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲノム編集でのCNDP2欠損培養細胞株の作製と個体での病態モデルの検討に時間を要しているため、やや遅れていると判断した。 今年度は国際共同研究の実施により、培養細胞でのゲノム編集技術を習得し、Cas9発現細胞株の作製に成功している。今後はCNDP2 sgRNAをCas9発現細胞株に安定的に発現させることで、CNDP2欠損細胞を作出する予定であり、以降は順調に研究が進む予定である。 STZ誘導性Ⅰ型糖尿病モデルでは腎障害が軽度であり、CNDP2の生理機能を観察することが出来なかったため、より重度の腎障害モデルの解析を実施する必要が生じた。今後は、山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所動物実験センターに助力を仰ぎ、片腎摘出の手法を習得する予定である。片腎摘出後にSTZ投与を行なうことで、より重度な腎障害モデルでの検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は研究代表者として研究全般を実施し、研究分担者の佐藤(新潟大学)はアミノ酸代謝に関わる細胞解析と研究計画等への助言を行い、同じく塩野(山形大学)は微生物抽出物からの化合物の単離、精製ならびに化学構造の解析を実施する。 (1)CNDP2遺伝子欠損マウス由来細胞やゲノム編集によりCNDP2を欠損させた細胞を用いて、生化学的解析により、フェロトーシスへの感受性やフェロトーシス関連遺伝子との関係を解析する。 (2)山形大学創薬研究拠点が所有する化合物ライブラリーと研究分担者の塩野の所有する微生物抽出物を用いて、CNDP2を特異的に阻害する化合物の探索を行う。また、これまでの検討によって、いくつかの食品抽出物がフェロトーシスを抑制する効果が見いだされたため、上記(1)で作製したCNDP2欠損細胞などを用いて、フェロトーシス抑制効果とCNDP2との関係を明らかにする。 (3)腎障害がより重度になると予想される片腎摘出後のSTZ誘導性Ⅰ型糖尿病モデルでの解析を、CNDP2欠損マウスを用いて解析する。腎機能マーカーの血中尿素窒素(BUN)やクレアチニンの測定と組織学的解析を行う。 (4)脳におけるCNDP2の機能解析のため、ステップスルー法による学習習得・記憶保持機能の検討と共に脳の組織学・生化学解析と遺伝子発現解析を行い、CNDP2と脳機能との関係を明らかにする。 研究成果を発表し、最先端の情報を収集するために、日本生化学会大会(2023年10月31日-11月2日、福岡)に参加を予定している。
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