研究課題/領域番号 |
22K11852
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
杉山 佳子 (中山佳子) 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (20600498)
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研究分担者 |
加藤 沢子 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (80762814)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 過敏性腸症候群 / 低FODMAP食 / グルテン不耐症 / セリアック病 / 消化管アレルギー / 小児 / 思春期 |
研究開始時の研究の概要 |
過敏性腸症候群(IBS)は、排便と関連した反復性腹痛を特徴とする機能性消化管疾患である。我々は小児・思春期のIBS患者において、低FODMAP食(オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)が、IBS症状を改善させ、時に小麦の除去で腹痛や下痢が劇的に改善することを確認した。小麦除去が有効な機序として、フルクタン不耐症、小麦アレルギー、グルテン不耐症が考えられる。いずれもグルテンフリー食が有効であるが、制限食による成長期の子どもへの精神的負担と栄養素欠乏のリスクがあり、慎重な対応が必要である。FODMAP食とグルテン不耐症の病態への関与及び脳腸相関について解明し、小児IBS患者のQOLを改善させたい。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、反復性腹痛と便通異常(便秘・下痢)を主訴とする小児・思春期の患者およそ100例を対象として、器質的疾患(炎症性腸疾患、好酸球性胃腸炎など)の鑑別のため内視鏡検査を行った。このうちRome IV分類に基づきおよそ30例を過敏性腸症候群(IBS)と診断した。ほぼ全例に低FODMAP食を提案し、このうち若干名が小麦の制限で症状の著明な改善を認めた。小麦除去で症状が改善する症例では、I型アレルギーとしての小麦アレルギーあるいは好酸球性胃腸炎が否定されていることから、どのような機序で小麦が症状の発現に関与していたのか、今後さらに症例を増やして検討する必要があると考えられた。 一方、我々の先行研究において、炎症性腸疾患あるいは好酸球性胃腸炎と診断した患者の中にも、小麦除去で腹痛や便通異常の改善する症例が若干名いることが明らかになった。このためまずは炎症性腸疾患を有する症例において、セリアック病のスクリーニング検査である血清抗組織トランスグルタミナーゼIgA抗体(tTG-IgA)を測定したところ、31例中1例がtTG-IgA抗体が陽性であり、小麦除去で症状の改善が確認された。当該症例では、好酸球性胃腸炎や抗原特異的IgEが陰性であることから、日本ではきわめて希な疾患と考えられてきたセリアック病が潜在している可能性が示唆された。 以上の結果から、小児・思春期の過敏性腸症候群において、小麦除去が有効な症例の臨床的特徴を明らかにし、新たなバイオマーカーの検討ならびに治療につながる病態の解明を推進することに大きな意義があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の対象となる小麦除去で症状の改善するIBS患者が一定数存在すること、日本人では希な疾患と考えられてきたセリアック病が潜在が示唆された点が、令和4年度の研究成果である。一方、脳腸相関との関連を調べるためのセロトニンやGABAの測定の準備が若干遅れていることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
対象となる症例数を増やし、多数例で病態の解明を進めていく。また、血中セロトニンやGABAの測定経路を確立する。将来的には小麦除去以外の治療法を開発し、対象となる小児・思春期患者の健やかな成長、さらに「食べることを我慢しない」食生活に繋がる研究を推進していきたい。
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