研究課題/領域番号 |
22K11872
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
柳井 修一 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60469070)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 軽度認知障害 / cAMPシグナル伝達系 / 老化 / 認知機能 / 歩行機能 / シロスタゾール / CAMPシグナル伝達系 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、cAMP依存性の遺伝子発現が低下したマウスを軽度認知障害(MCI)モデル動物として確立する。このマウスを用い、老齢期の認知機能改善薬として我々が同定したcAMP系強化薬シロスタゾール投与による認知機能の低下予防効果を検討する。さらに、マウスの歩行機能評価系を構築、歩行の質的解析を行い、認知機能と歩行機能を関連づける生理的メカニズムを検討する。このことで、cAMP系が認知機能のみならず歩行機能という運動制御系に果たす役割の解明を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究では「軽度認知障害(以下MCI)におけるcAMP-cAMP依存性キナーゼ-CREBシグナル伝達系(以下cAMPシグナル伝達系)の機能改善が認知機能、並びに認知機能と密接な関係にある歩行機能を改善する」という仮説を検証するための基礎研究を行う。MCIのモデルマウスとして、ヒトで認められるcAMPシグナル伝達系の年齢依存的機能低下を加速度的に再現するICER (inducible cAMP early repressor) 過剰発現マウス(以下ICER-OEマウス)を作出した。 ICER-OEマウスの凍結胚作成を進めていたところ、ICER-OEマウスは同腹の野生型マウスと比較して若齢での死亡が散見された。線虫を使った実験からcAMPシグナル伝達系は寿命への関与が示唆されているが、マウスでの知見は限られている。半導体不足の影響を受けてランニングホイールの製作が遅れていたことを踏まえ、今年度に作出したICER-OEを用い、cAMPシグナル伝達系が寿命に及ぼす効果を検討することとした。当初ICER-OEマウスとの年齢横断的比較を行う対象として育成していた野生型C57BL/6Jマウスを用い、cAMPシグナル伝達系強化薬シロスタゾールの効果を検討した。22ヶ月齢から1ヶ月間シロスタゾールを投与(混餌、0.3%あるいは1.5%)した老齢マウスの認知機能は統制群(シロスタゾール0%)と比較して有意に改善していることが示された。認知機能改善の神経基盤として、脳内炎症の低減と脳へのグルコース取り込み増加が関与していることを明らかにした。 本年度の成果はシロスタゾールを認知機能改善薬として利用できる可能性を示唆しており、老化とcAMPシグナル伝達系に関する重要なデータである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で用いるICER-OEマウスについて、遺伝子型の判定プロトコルを確立し、凍結胚から作出した個体を用いて寿命を検討中である。ICER-OEマウスと平行して進めていた野生型C57BL/6Jマウスを用いた実験では、シロスタゾールによる認知機能改善効果とその神経基盤を明らかにした。 半導体不足の影響を受け、運動機能解析の主たる手法であったランニングホイールの開発が大幅に遅れていた。製作業者と協議のうえ当初の仕様を変更し、ようやくパイロット機が完成した。現在、パイロット機でfeasibility testの実施中である。ランニングホイール以外でも歩行機能の評価を行うため、歩様解析装置(CatWalk)、回転棒テスト(Rotor rod)でも予備データの取得を始めた。 運動機能の解析は補助事業期間前半に終える見込みだったことから、進捗はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
運動機能解析の主たる手法であったランニングホイールの製作が大幅に遅れていた。運動機能測定の別手段として、歩様解析装置(CatWalk)、回転棒テスト(Rotor rod)を用いて予備データの取得を始めた。ランニングホイールのパイロット機でのfeasibility testと平行して、運動機能評価のプロトコル確立を進める。 本研究で用いるICER-OEマウスについて、遺伝子型の判定プロトコルを確立し、凍結胚から作出した個体を用いて寿命を検討中である。 本研究の目的を達成するため、加齢に伴う自然な機能低下と病的な原因に由来する機能低下を明確に区別することが重要と考えた。これまでのデータ取得で用いた野生型C57BL/6Jは、自然老化モデルマウスとして広く用いられている。これに対する疾患モデルとして、年齢依存的にアミロイドβが蓄積するアルツハイマー病モデルマウス(APP-KI NL)を新たに導入する。APP-KIの凍結胚作成を進めており、十分な数の凍結胚が確保できた時点で個体化を行う予定である。
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