研究課題/領域番号 |
22K11875
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 由美 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 講師 (30632707)
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研究分担者 |
石川 哲也 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (10288508)
北森 一哉 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (80387597)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | DOHaD / 妊娠期低栄養 / 糖質制限 / 次世代影響 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、ダイエットを目的として糖質のみを制限する食事法が注目されている。特に若い女性はやせ願望が強く、1日の摂取カロリーは終戦直後以下とも言われている。低栄養状態での妊娠は次世代の様々な疾患に深く関与することが知られていることから、妊娠期の栄養状態を評価することは非常に重要である。しかし、糖質制限による次世代影響については不明な点が多い。そこで本研究では、糖質の配合比や糖質制限を行う時期を変えながら、次世代の代謝やホルモン、脳・運動機能に与える影響について検討し、糖質制限による次世代影響について明らかにすることを目的とする。ひいては、胎児期からの超早期予防に有用な情報の提供を目指す。
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研究実績の概要 |
【背景】近年、ダイエットを目的とした糖質制限食が痩せ志向の強い若い女性を中心に注目を集めている。しかし、妊娠期における偏った食生活は次世代の疾病リスクに影響を及ぼす可能性があるため、本研究では、妊娠期糖質制限食が次世代の代謝や運動機能等に及ぼす影響について検討し、糖質制限食の次世代影響について明らかにすることを目的とした。 【方法】3種の飼料(コントロール食、低糖質高タンパク食、低糖質高脂肪食)を妊娠期のマウスに与えた。子マウスは3週齢で離乳させ、体重および摂餌量は週に1回測定し、5・10週齢で自発運動量の測定、6・11週齢で経口糖負荷試験(OGTT)、7・12週齢でインスリン抵抗性試験(ITT)を行い、13週齢で解剖し、各種臓器を採取した。 【結果】低糖質高脂肪食群では、ほぼ全てのマウスにおいて出産に至らなかったため、以降の実験はコントロール群と低糖質高タンパク食群の2群で実施した。 離乳前の仔マウスの体重は雌雄ともに低糖質高タンパク食群で高値を示したが、離乳後は有意な差を認めなかった。OGTTでは、11週齢の雄マウスにおいて低糖質高タンパク食群で血糖値が高い傾向を示し、雌マウスでは、5週齢および11週齢で投与15分後の血糖値が低糖質高タンパク食群群で高い傾向を示した。一方、ITTでは、12週齢の雄マウスで投与60分以降の血糖値が低糖質高タンパク食群で有意に高値となった。自発運動量については、雌雄ともにコントロール群に比べ低糖質高タンパク食群でやや高値となったが、有意な変化は認められなかった。 【考察】以上の結果より、妊娠期低糖質高タンパク食は、次世代の糖代謝に影響を及ぼす可能性が示唆された。今後は、サンプル数を増やすとともに、遺伝子解析、病理組織学的検査により、糖代謝に影響を及ぼすメカニズムについて検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖質制限により糖質から置き換える栄養素をタンパクにする低糖質高タンパク食、脂質に置き換える低糖質高脂肪食の2種類で実験を行った。低糖質高脂肪食群では出産しなかったため、低糖質高タンパク食についてのみ検討を行った。妊娠期糖質制限による次世代影響について、運動量測定、糖負荷試験、インスリン抵抗性試験、サンプル採取はおおむね終了した。また、妊娠期の曝露影響をより詳細に解析するため、妊娠後期の母親および胎児、さらに対照として糖質制限食を摂取させた非妊娠マウスを解剖し、各種試料を採取した。今後は得られた試料を用いて、次世代影響について解析を進める。また、曝露時期による影響について検討するため、授乳期の糖質制限食についても検討を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠期糖質制限食は次世代の糖代謝に影響を及ぼす可能性が示唆されたことから、糖代謝に関わる遺伝子について、遺伝子発現量またはタンパク発現量について解析を行う。また、血糖値の上昇は、酸化ストレスの蓄積や炎症を引き起こすと考えられるため、病理学的検査や各種炎症マーカーの測定を実施する。 妊娠期の母親の栄養の一部は胎盤を通じて胎児へ移行するが、栄養バランスは母親と胎児では異なると考えられる。そこで、Cont食または低糖質高タンパク食を摂取したマウスを妊娠後期に解剖し、母親および胎児の血液および肝臓を採取する。得られた試料を用いて生化学検査を実施し、妊娠期糖質制限食摂取による母子への直接的な影響について検討する。対照として、非妊娠マウスを用いて同様の実験を実施する。 また、妊娠期や授乳期は非常に感受性が高く、どの時期にどのような環境に曝露されるかによってその後の影響は大きく異なってくると考えられる。そこで、授乳期のみ曝露する群を追加し、糖質制限がより強く影響する時期について検討する。
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