研究課題/領域番号 |
22K11881
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 足利大学 |
研究代表者 |
須永 浩章 足利大学, 工学部, 講師 (10760077)
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研究分担者 |
松井 弘樹 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (20431710)
横山 知行 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (70312890)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 脂肪酸 / 肺気腫 / 脂肪酸組成 / 脂肪酸補充 / α1-アンチトリプシン |
研究開始時の研究の概要 |
脂肪酸は生体にとって必要不可欠な栄養素であり、脂肪酸鎖長の違いが様々な代謝性病態に重要な影響を及ぼす可能性がある。本研究では、生体内脂肪酸の鎖長伸長に関わるElovl6に着目し、Elovl6による脂肪酸組成の変化が肝臓を介して肺気腫の発症・進展へ及ぼす影響を解明する。さらに、遺伝性肺気腫症の原因因子とされるα1-アンチトリプシン (α1-AT) の産生を制御する責任脂肪酸を特定する。遺伝性肺気腫症の現状の治療手段は、不足したα1-ATの補充療法しかない。本研究は、栄養素である脂肪酸の補充とα1-ATの産生臓器である肝臓を標的とした、従来と全く異なる肺気腫予防・治療戦略の構築につなげる。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでに、全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスでは先天性の肺気腫様病変をきたすこと、そのメカニズムとして、全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスでは肺気腫の病態に関連する特定のタンパクAの血中濃度が対照群マウスと比較して著明に低下していることを見出した。また、タンパクAの主要な産生臓器である肝臓において、Elovl6欠損マウスではタンパクAの発現が著明に減少していることを確認した。 Elovl6欠損により細胞内の脂肪酸組成が変化することから、この組成変化が肝臓でのタンパクAの発現動態にどのように影響するかを解明するため、培養マウス肝細胞を用いて解析を行った。培養肝細胞にsiRNAを用いてElovl6をノックダウンさせたところ、タンパクAをコードする遺伝子Xの発現が著明に低下した。次に、培養肝細胞に組成変化が認められた脂肪酸を添加したところ、特定の脂肪酸添加により遺伝子Xの著明な発現低下を認めた。また、培養肝細胞に遺伝子Xの発現ベクターを導入して遺伝子Xを過剰発現させると、メディウム中のタンパクA濃度が著明に増加した。一方で、過剰発現と同時にElovl6をノックダウンさせるとメディウム中のタンパクA濃度が有意に低下することを確認した。さらに、脂肪酸添加で同様の検討を行ったところ、特定の脂肪酸添加によりメディウム中のタンパクA濃度が有意に低下することを見出した。 以上より、肝細胞へのElovl6のノックダウンおよび脂肪酸組成の変化がタンパクAの産生および細胞外分泌に影響し、これにより全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスにおける血中タンパクA濃度の低下を引き起こす可能性が示唆された。現在、タンパクAの産生を制御している責任脂肪酸の同定を進め、肺気腫モデルマウスやElovl6欠損マウスへの外因的補充により肺気腫の発症・進展抑制効果が見られるか、検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子Xの発現ベクターによる培養マウス肝細胞への過剰発現やsiRNAによるElovl6のノックダウン実験、タンパクAの産生を制御する責任脂肪酸の同定など、着実に研究計画は進んでおり、順調に成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は培養肝細胞、喫煙暴露による肺気腫病態モデルマウス、全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスの肝臓から脂質を抽出し、リピドミクス解析やメタボロミクス解析を行い、Elovl6欠損に伴うリン脂質や代謝産物などの詳細な解析を行っていく。さらに、高解像度質量顕微鏡やシングルセル解析により、肝細胞内の脂肪酸組成の変化とタンパクAの産生、タンパク結合と細胞外分泌への影響などを詳細に解析していく予定である。 また、タンパクAの発現や細胞外分泌に影響する脂肪酸・代謝産物が同定できたら、そこに拮抗するような脂質、薬剤などを同定し、Elovl6をノックダウンさせた肝細胞およびElovl6欠損マウスへ投与し、タンパクAの産生低下や細胞外分泌の抑制がキャンセルされるか、検討を進めていきたい。さらには、肺気腫病態モデルマウスやElovl6欠損マウスに対し、タンパクAの産生を制御している責任脂肪酸の外因的補充、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)による肝臓へのタンパクAの過剰発現により、肺気腫病態への発症・進展抑制効果が見られるか、上記の結果と併せて検討していく予定である。
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