研究課題/領域番号 |
22K11919
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60020:数理情報学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中尾 裕也 東京工業大学, 工学院, 教授 (40344048)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | Koopman作用素 / リミットサイクル / 漸近位相・振幅 / ネットワーク結合力学系 / 縮約理論 / 非線形振動子 / 量子散逸系 / 非線形ダイナミクス / Koopman作用素論 |
研究開始時の研究の概要 |
実現象の多くは、流体現象に代表されるように、大自由度の非線形システムである。しかし、実現象を数理モデル化したとき、その多くは散逸力学系であり、系の状態は高次元の相空間中にあるアトラクターなどの低次元の多様体に近づく。よって、うまくその種の低次元の多様体近傍での運動を特徴づける主要な変数を見出すことができれば、大自由システムであっても、その時間発展を少数の変数により近似的に記述できることが期待され、現象を解析し、制御や最適化する上で有用である。本研究では、化学反応系や流体系、生体系などの具体的な現象の数理モデルを対象として、Koopman作用素論に基づく大自由度非線形系の縮約理論を発展させる。
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研究実績の概要 |
これまでの一連の研究で発展させてきた、Koopman作用素論に基づく非線形力学系の次元縮約の典型である非線形振動子の位相・振幅縮約理論を、ネットワーク結合力学系の集団振動に対して拡張し、注入同期への応用を議論した。多数の要素からなるネットワーク結合力学系の集団振動の漸近位相と振幅を、系の主要なFloquet指数に対応するKoopman固有関数により定義し、弱い入力に対する位相振幅方程式を求めた。これを用いて、波形への影響を抑えつつ、集団振動を効率的に注入同期する最適な周期入力を求め、数値シミュレーションにより確認した。 また、非線形振動子の位相縮約理論において本質的に重要な位相感受関数を、振動子の数理モデルから摂動計算によって解析的に近似する手法を定式化した。位相感受関数は純虚数のKoopman固有値に対応する固有関数である漸近位相関数の勾配であり、位相方程式を書き下す際に必要な量だが、これを解析的に得られる例は、少数のシンプルな非線形振動子に限られていた。この研究では、弱非線形解析できる一般の振動子の数理モデルに対して、分岐パラメータに関する摂動展開によって位相感受関数を解析的に計算する方法を開発した。例としてvan der Pol(vdP)振動子を扱い、2次までの摂動で求めた位相感受関数が随伴方程式の数値解と良く一致することを示した。さらに、得られた位相感受関数を用いてvdP振動子の大域結合系の集団挙動を解析した。 その他、縮約方程式に基づく望ましい形状と位相応答特性を持つ振動子の数理モデルの設計手法などに関する研究、流体系の振動に対する位相振幅縮約法の議論、量子van der Pol振動子のKoopman固有値や固有関数に対する動的モード分解の研究なども実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Koopman作用素論に基づく非線形ダイナミクスの解析、特に非線形振動子の縮約記述において重要な役割を持つ漸近位相と振幅を主な研究対象として研究を進め、上記を含む複数の成果を得た。2023年度は国際学術誌に5本の論文を、国際会議論文として3本の論文を公表し、他にも研究会でも複数回の発表を実施しており、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Koopman作用素論に基づく非線形ダイナミクスの解析をさらに推し進める。特に、反応拡散系や流体等の本質的に大自由度の系に題して、機械学習などを援用したデータ駆動型の縮約手法を発展させる。
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