研究課題/領域番号 |
22K11928
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保川 達也 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (20195499)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 小地域推定 / 線形混合モデル / スタイン問題 / 縮小推定 / ミニマックス性 / 統計的推測理論 / 混合効果モデル / 高次元解析 / 推定方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
統計的推測において直面している諸問題に対して,数理統計の立場から新たな解決策を導出し,有効性・最適性・一致性・ミニマックス性などの理論的な性質を調べ,現実のデータ解析を通して応用面からの有用性を示す。具体的に取り組む問題は,混合効果モデルに基づいた小地域推定理論の新展開,平均行列や共分散行列などの多次元母数推定に関する縮小推定理論の新たな展開,高次元多変量解析理論の新展開,推定方程式における一段階推定法の有効性と有用性などである。特に小地域推定は官庁統計・政府統計の分野において重要な分野であり,数理統計からの理論的な解決策がこの分野のデータ解析に大きな貢献を与えると期待される。
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研究実績の概要 |
線形混合モデルを用いた小地域推定における問題の一つとして,ベンチマーク問題がある。これは各地域の経験最良線形予測値を全範囲で合算すると全範囲における標本平均と一致しないという問題であり,解決法の一つはベンチマーク制約のもとでのベイズ解を用いることである。しかしこの方法ではすべての地域の予測値を均等に調整することになり,地域による推定誤差などが反映されない。そこで,ある重み付け線形縮小予測量を考え,その平均2乗誤差をベンチマーク制約の下で最小になるような重みを求め母数を推定量で置き換えた方法を,ベンチマーク経験線形縮小予測量(BELS)と名付けて提案した。この方法の良さは,小地域のデータに応じて縮小の程度を調整できる点であり,データがモデルから離れているような小地域についてはより大きく全体平均の方へ近づけるような調整がなされる。このことは,モデルから外れたデータに対しても全体平均が安定している限りロバストな予測値を与えることを意味する。本研究課題では,新たに提案されたBELSの予測誤差に関して,分布を仮定しないノンパラメトリックな設定のもとで平均2乗誤差の2次漸近近似を求め,その2次漸近不偏推定量を導出した。数値的な検討とともに家計調査における県別教育費のベンチマーク推定に適用し,提案手法の良さを確認することができた。 平均行列の縮小推定に関して,Efron-Morris推定量とJames-Stein推定量の加重平均を考え,そのときの重みをリスク関数の不偏推定量を最小化することによって求め,ミニマックス性を示した。また共分散行列が未知のとき事前分布を上手にとることによって一般化ベイズ推定量が明示的に与えられることを示し,リスクの不偏推定量を評価することによってミニマックス性の条件を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)混合効果モデルに基づいた小地域推定理論の新展開については,ベンチマーク問題において,新たなベンチマーク経験線形縮小予測量(BELS)を導出して提案した。また分布を仮定しないノンパラメトリックな設定のもとで平均2乗誤差の2次漸近近似を求め,その2次漸近不偏推定量を導出した。数値的な検討とともに家計調査における県別教育費のベンチマーク推定に適用し,小地域のデータがモデルから離れている場合には全体平均の方へ近づけるような調整がなされることを確認した。このことは,研究課題の一つの目標が達せられたことを意味する。 また(B)平均行列や共分散行列などの多次元母数推定に関する縮小推定の新たな展開については,平均行列の加重縮小推定に関して,Efron-Morris推定量とJames-Stein推定量の加重平均を考え,そのときの重みをリスク関数の不偏推定量を最小化することによって求め,ミニマックス性を示すことができた。また共分散行列が未知のとき事前分布を上手にとることによって一般化ベイズ推定量を明示的に与えられることを示し,リスクの不偏推定量を評価することによってミニマックス性の条件を求めた。このことは縮小推定に関しては研究課題の目標がある程度達せられたことを示している。
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今後の研究の推進方策 |
統計的推測において直面している諸問題に対して,引き続き,数理統計の立場から新たな解決策を導出し,有効性,最適性などの理論的な性質と応用面からの有用性を調べる。 特に,研究課題で掲げた(C)高次元多変量解析理論の新展開に関して,多変量線形回帰モデルの変数選択問題において新たな変数選択手法について検討する。大標本においては,ベイズ情報量規準(BIC)には一致性があるものの赤池情報量規準(AIC)には一致性がない。一方,高次元の枠組みでは,AICが一致性をもちBICは一致性をもたない。そこで,高次元の場合はAICを選択し大標本のときにはBICを選択するような重み付け事前分布を考える。そのとき導出される重み付きベイズ情報量規準が大標本においても高次元においても一致性をもつことを証明する。これは,従来の手法であるAIC, BICの弱点を補う手法となる。 また(D)推定方程式における一段階推定法の有効性と有用性については,ニュートン法の繰り返し計算を1回目で停める一段階推定法について,漸近的には最尤推定量と同等になるような初期推定量の条件を明確にする。1次の漸近バイアスを求めることなく2次漸近不偏な推定量を与えるFirth(1993, Biometrika)の方法を組み入れて,2次漸近不偏性をもつ一段階推定法の導出を検討する。さらにガンマ分布の母数推定など様々な推定問題について導出された一段階推定法を適用し有効性と有用性を調べる。特に,線形混合モデルにおける分散成分の推定に一段階法を適用して,最尤推定量などの従来の手法との比較検討を行う。
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