研究課題/領域番号 |
22K11931
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 譲 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (50216397)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 相互情報量 / LiNGAM / 因果推論 / 独立性検定 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、清水昌平氏が考案したLiNGAM(Linear NonGaussian Acyclic Model)とよばれる因果推論の枠組みについて検討する。LiNGAMは、雑音が複数変数に影響をあたえる、いわゆる交絡が全変数にわたって存在しないことが前提となっていて、実用上の障害になっている。本研究では、雑音の間の相互情報量を交絡の大きさとみなし、それを最小とするモデル化を提唱する(従来は相互情報量が0であると仮定)。そして、そのような一般的な定式化の解を得るために、最短経路問題を用いた効率の良い解法を提案する。さらに、連続データに関する相互情報量推定方法(高次元に対応するもの)を提案する。
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研究実績の概要 |
本研究では、拡張されたLiNGAMの開発と効率的な処理方法の構築に取り組み、以下の成果を得ることができた。 まず、LiNGAMの枠組みを拡張し、交絡の存在にも適用可能な手法を提案した。従来のLiNGAMでは、相互情報量が0となる変数の順序を仮定していたが、本研究では交絡の大きさを相互情報量とみなし、その最小値を求めるモデル化を行った。また、最短経路問題を用いた効率的な解法を開発した。これにより、実データにおいても交絡の影響を考慮しつつ因果関係を推定することが可能となった。さらに、連続データに関する相互情報量推定方法についても検討した。既存の方法を検証し、局所的な相互情報量を別々に計算し、その和を求める手法を提案した。これにより、高次元データにおける相互情報量推定の精度と効率を向上させることができた。この内容は、2024年7月の International Symposium on Information Thery (情報理論に関する国際シンポジウム)で発表することが決定している。 この他、LiNGAMが関数データに適用できるがわかった。この結果の一部は前年度の国際学会で発表したが、それを若干拡張した結果をジャーナルにも掲載することができた。研究の成果として、"Yang-Suzuki 2024"および"Suzuki-Yang 2024"の論文が出版された。 これらの論文は、研究の新たな枠組みと手法を提案し、その有用性と革新性が国際学会や学術コミュニティで高く評価された。拡張されたLiNGAMの開発と効率的な処理方法の構築において、初年度から重要な成果を達成し、国際的な評価を受けることができた。今後は、これらの成果を基にさらなる研究の展開を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 まず、研究の目的である拡張されたLiNGAMの開発について、重要な成果を達成した。交絡の存在においても有効な因果推論手法としてのLiNGAMの拡張に成功し、その新たなモデル化と解法を提案した。さらに、最短経路問題を利用した効率的な処理方法を開発した。これにより、実データにおける因果関係の解明や推定がより正確かつ効率的に行えるようになった。また、連続データに関する相互情報量推定方法についての研究も順調に進展している。既存の手法を検証し、新たな手法の提案を行った。局所的な相互情報量を別々に計算し、それらの和を取る手法を開発したことで、高次元データにおける相互情報量推定の精度と効率を飛躍的に向上させることができた。研究の成果として、上記の2論文が国際的な評価を受け、採用された。これらの論文の採用は、拡張されたLiNGAMの研究成果が国際的なコミュニティから高い評価を受けていることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
拡張されたLiNGAMのモデル化や解法の応用範囲をさらに広げていきたい。交絡の存在においても有効な因果推論手法としてのLiNGAMの優位性を確立し、実世界のデータに対して適用可能なツールとしての信頼性を高めていくことが重要である。 現在は、非線形統計モデルに因果探索を適用する際の実現方法に関して、back-fittingを用いた最適化を用いた方法を構築している。 今後は、条件付き独立性の検定や変数間の順序同定において、関数の具体的な形を特定せずに高い精度を実現するための手法を開発していきたい。これにより、より複雑な因果関係を捉えることができるだけでなく、実世界のデータに対しても適用可能な柔軟性を持ったモデリング手法の構築を目指すことが可能となる。そして、離散値を取る変数に対するモデリング手法についても研究を進めたい。変数と雑音の直交性を定式化し、2値だけでなく3値以上を許容する一般的な場合においても有効な手法を提案したい。変数の種類の多様性に対応できるモデル構築手法の開発により、実データの解析や応用領域での有用性を向上させていきたい。 現在は、有名ジャーナルに主要な結果を含む論文を投稿中である。この採録が決定すれば、本研究は完成したと言える。
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