研究課題/領域番号 |
22K11937
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
下川 敏雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00402090)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アンサンブル樹木法 / 治療効果モデル / Meta-learner / 異質性治療効果 / サブグループ同定法 / 生存時間解析 / がん臨床研究 / リアルワールド・データ |
研究開始時の研究の概要 |
近年,医薬品の臨床開発において,「リアルワールド・データ」あるいは「医療ビッグデータ」に注目が集まっている.本研究の目的は,これらの大規模データに含まれている患者背景情報に基づいて治療効果(臨床的アウトカムの差)を推定するための非線形回帰モデルを開発することにある.このとき,適用場面として,がん臨床研究の臨床評価過程において頻用される生存時間データに焦点を当てるとともに,非線形回帰モデルとして,CART法に代表される樹木モデル,樹木モデルを基本学習器に用いたアンサンブル学習法,樹木モデルから派生したプロダクション・ルールに基づく非線形回帰モデルに焦点を当てる.
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研究実績の概要 |
今年度は,共有基底条件付き平均回帰(SCMR; Shared basis conditional mean regression, Powers et al., 2018)の概念のもと,主効果を伴う治療効果モデルを開発するとともに,生存時間解析への拡張を行った.それらの手法では,昨年度までと同様に,ルール・アンサンブル法(Friedman & Popescu, 2008)あるいは生存時間ルール・アンサンブル法(下川他, 2013, Fokkema et al., 2017)を回帰モデルとして採用するとともに,回帰パラメータの推定において,Group lasso法(Bakin, 1999)を用いた. 連続応答に対する主効果を伴う因果ルール・アンサンブル法は,2023年度 日本計量生物学会年会,64th ISI World Congress (Ottawa, Canada)で発表するとともに,国際論文誌「Statistical Methods in Medical Research」に採択された.また,生存時間データに対する主効果を伴う因果ルール・アンサンブル法は,2023年度 日本計量生物学会年会,64th ISI World Congress (Ottawa, Canada)で発表しており,現在,論文投稿中である. また,生存時間データに対するmeta-learnerに関する検討を開始した.生存時間データでは,HTEの定義について,(1) 生存時間の差,(2) 生存率の差,(3)対数ハザードの差など,論文によって様々である.そのため,当該研究では,HTEの定義を整理するとともに,それぞれに対するmeta-learnerの枠組みのもと,シミュレーションに基づいて適切な方法を検討した.その中間成果については,2023年度 日本計量生物学会年会のなかで公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度の位置づけは,新たな治療効果モデルの開発,とくに生存時間データへの拡張を行うことであった.その点では,通常の治療効果モデルが「治療+治療×共変量の交互作用」の検討のみであったものを(予測因子の検討),「治療+共変量+治療×共変量の交互作用」に発展させた(予後因子・予測因子の検討)ことは,大きな成果であったと考えられる.この新たな概念がStatistical Methods in Medical Researchに採択されたことは,国際的にも認められたと考えている. また,この新たな治療効果モデルを生存時間データに拡張した方法について,64th ISI World Congress (Ottawa, Canada)で公表し,論文を投稿することができた.また,主に機械学習分野で研究されているmeta-learnerを生存時間データに拡張することの可能性について検討できた.このことは,本事業の目標である「生存時間データに治療効果モデルを拡張する」が着実に実行できていることを示しているものである. 医療統計学では,医療系分野におけるニーズをいち早くキャッチアップするとともに,そのニーズに応える形で新たな手法を開発すべきである.本事業に関連して開催した「第4回かごしまデータ科学シンポジウム」,「第5回かごしまデータ科学シンポジウム」を開催したことは,このニーズをとらえるうえで有益であった. さらに,2022年度に懸念事項であった,四川大学(中国)との大規模疫学研究の再開に関する打ち合わせを行えたことも,提案手法を適応するためのフィールド整備として非常に実りあるものとなった.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,本事業の最終年度となるため,現在開発中のすべての手法を論文化すること,および統計パッケージとして公表することを目的とする. これまでに開発した治療効果モデルは,二つの治療法(治療薬)に限定して検討を行ってきた.他方,RWD (Real World Data)への適用を考慮した場合,三つ以上の多群比較に治療効果モデルを展開する必要がある.今年度の一つ目の目標は,多群比較のための治療効果モデルを開発することである.多群比較のための治療効果モデルの開発においても,これまでと同様に共有基底条件付き平均回帰を拡張する. 2023年度に開発した生存時間に対する因果ルール・アンサンブル法は,臨床試験を意図しており,傾向スコアによるバイアス補正を行っていない.また,HTEを対数ハザードの差で定義している(つまり,比例ハザード・モデルを拡張している)ため,免疫チェックポイント阻害薬の上乗せ効果を評価するような場面(すなわち,非比例ハザード性が明らかである場面)では,適切にモデル構築が行えない可能性がある.そのため,今年度の二つ目の目標は,加速モデルのもとで新たなルール・アンサンブル法を開発するとともに,傾向スコアによるバイアス補正を伴う形式で生存時間因果ルール・アンサンブル法を開発する. さらに,本事業から次の展開に繋げるための新たな取り組みとして,がん臨床試験における探索的なサブグループ解析を支援するための新たなツールを開発する.そこでは,QUINT法(Dusseldorp, 2013)を生存時間データに拡張する形で開発する.
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