研究課題/領域番号 |
22K11939
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
前園 宜彦 中央大学, 理工学部, 教授 (30173701)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | カーネル型分布関数推定 / 分位点推定 / ノンパラメトリック回帰 / 分位点回帰 / エッジワース展開 / 漸近平均二乗誤差 / エクスペクタイル / 確率点推定 / ノンパラメトリック / カーネル推定 / 統計的リサンプリング / 漸近理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では機械学習で良く利用されるノンパラメトリック推測法の精度改善と理論的性質の解明の研究を行うものである。その中でも特に滑らかな推測結果を得られるカーネル型推定に基づく統計解析法の提案を行い、その有用性を理論的に示すとともにシミュレーションにより検証する。また統計的リサンプリング法を利用した高精度カーネル型推定法を開発し、その有効性を示す。特にジャックナイフ法とクロス・バリデーションの関連を明確にし、ジャックナイフ法について得られている理論的な性質を応用して新たな手法の開発を行う。その過程で機械学習で注目されている深層学習との関連を研究し、深層学習の理論的な性質の解明に貢献する。
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研究実績の概要 |
昨年度に続いて、ノンパラメトリック統計の主要な柱となっているカーネル型推定量を利用した推測法の研究を行い、以下の成果を得ることができた。(1)カーネル型推測法の中で分布関数推定量を利用した手法による推測精度の改良法を研究し、昨年得られた分位点推定量に対する理論的成果をシミュレーションで検証した。また推定量の漸近表現を求めることにも成功し、高次の漸近理論の構築への道筋をつけることができた。(2)分位点を関連する共変量で説明しようという分位点回帰のノンパラメトリック推定の性質を研究した。分位点回帰はパラメトリックなモデルや一部にノンパラメトリックな手法を取り入れたセミパラメトリック法の研究がこれまで盛んであった。しかし統計的には共変量が与えられたときの、条件付き確率分布関数の分位点の推定となる。この推定量の漸近平均二乗誤差を陽に求めることに成功した。(3)これまで研究してきたカーネル型推測の理論的性質と実際の推測への応用をまとめて「Statistical Inference based on Kernel Distribution Function Estimators」(Fauzi and Maesono,Springer, 2023)として出版し、研究成果の研究者への情報発信を行った。(4)分位点などのように陰関数で表せる方程式の解として与えられる推定量の漸近的性質を明らかにする手法の構築を行い、それを利用したリスク尺度などの理論的性質を統一的に議論できるようにした。 これらの結果は基礎的な研究なので、関連する分野への波及効果も期待できる。現在これらの成果は国際誌に投稿準備中である。また得られた成果は、国内外での学会及び研究集会で発表し、優れた成果であるとの評価を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画と比較して、研究はおおむね順調に進展している。令和5年度はカーネル型分布関数推定量を直接利用した分位点推定量に対してこれまでに求めた理論的な性質をシミュレーションで検証し、本研究で得られた理論的成果の正しさを確認することができた。また分位点回帰のノンパラメトリックな推定量の高次の漸近理論を求めるための基礎的な漸近表現を求めることにも成功している。これまでに一致性を示す結果はあったが、漸近表現を研究し漸近平均二乗誤差を明示的な形で求めたものはなかったので、この分野の今後の研究の進展に寄与することが期待できる。 またサポートが実数全体ではない密度関数を持つ分布関数推定量の改良を、データの変換を利用した方法で修正することにより従来の推測法の改善につながることを明らかにすることができた。これを利用して生存時間解析において境界問題を改善する方法の適用を研究し、従来の方法と比較して手法の優越性を示すことに成功している。この方法は他の推測にも応用できるものなので、引き続きデータの変換を利用したカーネル型推定量に対する適用法の改良も研究していく予定である。また開発した手法は他の統計量についての応用も十分見込めるもので、今後の研究はさらに広がるものと期待できる。また国際研究集会や学会等での発表でも肯定的な評価を得ており、進捗状況としては十分なものである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた研究成果を改めて吟味し、推測法のさらなる改善を目指す。まず学会等で得られた他の研究者からのレヴューの内容を吟味し、新たに取り組む問題を明確にする。特に、画像解析、生存時間解析を利用した医学データへの適用、金融工学におけるリスク尺度(ヴァリュー・アト・リスク)などの応用分野への適用を目指した手法の改良を行い、その有効性の検証とさらなる精度の改良を目指す。また新たに統計的リサンプリング法の有効適用を視野に、カーネル型推定においてあまり研究されてこなかったブートストラップ法の有効活用を目指す。さらにセミパラメトリックな手法として発展してきた罰則項付き非線形回帰とカーネル型ノンパラメトリック回帰の融合を図り、変数選択に対する推測精度の改善を行っていく。加えて情報量規準のノンパラメトリックな構成法についても検討し、クロス・バリエーションとの関係を明確にし、その理論的な性質を求めることを目指す。その他にも経験分布関数での積分で表現される推定量をカーネル型分布関数推定量を利用した新たな推測法を提案する。その上で有効性を持つように改善し、手法の性質を明らかにする。近年多くの分野で利用されている機械学習に組み込まれている手法を統計研究の観点から見つめなおして、カーネル型推定量を組み込んだ機械学習、特に深層学習の有効性について研究する。機械学習ではノンパラメトリックな手法を使うものが増えており、本研究の成果を生かして関連する推測法に適用することができれば、高精度の推測結果を得ることができて、新たな知見を得ることが期待できる。今後は得られた成果を論文として発表することに重心をおき研究成果の社会への還元も図っていく。
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