研究課題/領域番号 |
22K11941
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
藤崎 弘士 日本医科大学, 医学部, 教授 (60573243)
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研究分担者 |
小田切 健太 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (20552425)
末谷 大道 大分大学, 理工学部, 教授 (40507167)
森次 圭 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80599506)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 時系列解析 / 分子動力学 / 多様体学習 / ニューラルネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質、細胞、脳波など生体系のもつ高次元のダイナミクスを理解するために、機械学習の手法の一つである、時間遅れのあるオートエンコーダを適用し、自由度を高次元から本質的な低次元に縮約し、その生物学的な意義を既存の実験事実などを踏まえて考察する。その際は、タンパク質の各原子の位置座標の時系列や、細胞の2次元動画などの大量のデータをニューラルネットワークのシステムで処理する必要があるので、そのために適したGPUマシンを購入し、pytorch などのフレームワークで作ったオートエンコーダのコードを高速で動かす。その結果得られる低次元系のダイナミクスを制御することから、生体系の制御の可能性を探る。
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研究実績の概要 |
生命現象をダイナミクスとして考えるとそれは高次元空間上の運動であるが、実験・観測データは様々な技術上の制約から低次元であることが多く、次元が縮約・粗視化された力学系としての理解が求められることが多い。しかし、生体系のダイナミクスは不均一で階層性があるので、それを粗視化する一般論を構築することは非常に難しい。一方、データサイエンスの現場においては、ニューラルネットワークの手法の一つである自己符号化器(autoencoder, AE)が次元削減のために用いられることが多い。本申請ではそれを時間軸方向に拡張した時間遅れのある自己符号化器(time-lagged AE,tAE)や多様体学習の一種である拡散マップを適用することで、タンパク質や細胞、脳波のような生体系の多次元ダイナミクスを縮約・粗視化し、よく用いられる既存の時系列解析手法と比較する。 本年度はまず状態変化が起こる経路を統計的に得るための重み付きアンサンブル法の改良を行った。経路の重みの考えに立ち返り、その重みを尤度と考えて、最大化するためのパラメータ間の条件を見出した。その結果を1次元の二重井戸の系に適用し、それが正しいことを示した後、その結果を常温のシニョリンやアデニル酸キナーゼといった生体分子系に適用し、効率的なサンプリング時間を得ることができた。 次に、細胞のダイナミクスをセルラーポッツ模型でモデル化し、創傷治癒過程に tAE を適用することで、ゆっくりと動く低次元の自由度を取り出すことができた。また、日医大の高田らの血管新生に関する細胞動画を解析するために、その動画データをまず畳み込みニューラルネットワーク(AlexNet)で1000次元に落としてから、それをさらに拡散マップで数次元に低次元化した。その結果、血管新生に関わる低次元の自由度を取り出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に書いていた方針に従って研究を進展させて、予備的な結果を得るところまではできたため。
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今後の研究の推進方策 |
状態変化が起こる経路を統計的に得るための重み付きアンサンブル法の改良に関してはうまくいっているので、このまま研究を進め、論文としてまとめたい。 時系列解析のほうは低次元の自由度を取り出すことはできたが、これをどのように解釈するか、それを用いてどのように制御を行うか、という点がまだ不十分なので、それについて共同研究者と議論しながら研究を進展させたい。そのためにはまず簡単な時系列を調べる必要があり、細胞ダイナミクスのセルラーポッツ模型を単純化して、いくつかの動的な相を出現させ、そのダイナミクスを低次元化することで何か見えるのかをはっきりとさせる。また生体時系列として、Oura ring などのウェアラブルデバイスのデータを使うことも始めているが、その際にはガウス過程回帰などを用いて、時系列を予測することも考えている。また、その解析結果を低次元化することで、上の問題ともリンクさせたいと考えている。
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