研究課題/領域番号 |
22K11950
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
岸野 洋久 中央大学, 研究開発機構, 客員研究員 (00141987)
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研究分担者 |
呉 佳齊 東海大学, 医学部, 特定研究員 (00831744)
中道 礼一郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (70401255)
米澤 隆弘 東京農業大学, 農学部, 准教授 (90508566)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ゲノム / 集団ゲノム / 表現型適応 / 遺伝子発現適応 / QTL / eQTL / 共適応 / 共進化 / 俯瞰地図 |
研究開始時の研究の概要 |
数多くの種でゲノム・集団ゲノムのデータが整備され、GWAS(ゲノムワイド関連解析)と多面発現のデータベースが公開されている。(古)環境の情報も充実してきている。本研究ではこれらを統合分析し、形質間の共適応・共進化を俯瞰する地図を構築する。種内の共適応の分析においてはSNPs(1塩基多型)を扱い、アレル頻度の時空間動態をモデリングする。種間の共進化の分析においては多遺伝子座分子系統樹を扱い、分子進化速度の遺伝子間・系統時間の変動を分析する。適応進化の歴史の相関として共適応・共進化を捉え、潜在因子を導入してこれを俯瞰し、(古)環境の情報と照らし合わせて背景因子を示唆する地図を構築する。
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研究実績の概要 |
シロイヌナズナ集団は、生息域の拡大や環境変化の結果、未経験の生物的・非生物的ストレスにさらされてきた。これらのストレスは、遺伝子発現やタンパク質活性を変化させることにより、適応的な生理的状態を生み出す対立遺伝子を選択する可能性がある。そこで、A.thalianaの集団史における遺伝的適応の全体像を把握するために、表現型適応と遺伝子発現適応のデータベースを構築した。ゲノム中の全SNPsに対して、248形質49,973個のQTLと2,879遺伝子の16,672個のeQTLにおける対立遺伝子頻度の動態を解析し、表現型値の変化に結び付く650個の表現型適応と遺伝子発現レベルの変化に結び付く3,925個の遺伝子発現適応を確認した(FDR=0.05)。この集団は、ロシアの中央アジアと南シベリアへの東進、スウェーデンへの北上、アゼルバイジャンへの移動、ドイツ系住民の米国への移動という4つの系統において大規模な表現型適応と遺伝子発現適応が検出された。極端に寒い冬と短い夏が種子の休眠を長引かせ、根系を拡大させた。低温は生育期を延長し、低光量は葉緑体活動の活発化を必要とした。亜熱帯で湿度の高い環境は、生物・非生物ストレスに対応する植物ホルモンのシグナル伝達経路を強化した。重金属への曝露により、土壌からの重金属の取り込みが少ない、成長速度が低い、細菌に対する抵抗性が低い、光合成遺伝子の発現量が高いなどの特徴を持つ対立遺伝子が選択された。適応の特定の側面に焦点を当てた研究を補完する表現型適応と遺伝子発現適応のデータベースは、シロイヌナズナの集団史を通しての生物学的適応を理解するための今後の研究に有用であると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数多くの種でゲノム・集団ゲノムのデータが整備され、ヒトやシロイズナズナなどさまざまな動植物で種々の形質について表現型の遺伝的背景を探るGWAS(ゲノムワイド関連解析)と多面発現のデータベースが公開されている。(古)環境の情報も充実してきており、データベース化されている。本研究ではこれらのデータベースを統合分析し、データベースに収められた全形質間の共適応・共進化を俯瞰する地図を構築することを目的とした。この目的に沿って、初年度ではシロイヌナズナのQTL, eQTLのデータベースと集団ゲノムのデータベースに基づき、そのアレル頻度が遺伝的浮動を超えて形質値・発現レベルを有意に変えたと予測されるものを検出することにより、表現型適応と遺伝子発現適応のデータベースを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
今回構築したシロイヌナズナの集団史における表現型適応と遺伝子発現適応のデータベースと、それから得られた新知見を論文化し、公表する。と同時に、ヒト集団の適応のデータベースの構築に着手する。種をまたいだ哺乳類・鳥類の進化系統樹上の適応進化マップの分析も開始したい。
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