研究課題/領域番号 |
22K11951
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 公益財団法人放射線影響研究所 |
研究代表者 |
三角 宗近 公益財団法人放射線影響研究所, 統計部, 副部長 (90457432)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 放射線発がん / 発がんモデル / 競合リスク / 生存時間解析 / 放射線疫学 / 多状態モデル / 発がん数理モデル / 疫学 / 多段階発がん |
研究開始時の研究の概要 |
放射線疫学では、遺伝子や分子生物学的な情報がない疫学データに、分子生物学の知見に基づいて構築された数理モデル(発がん機序モデル)を適合し、データが存在しない発がん過程の段階や経路のどこに放射線との関連が見られるか、という推定が行われている。しかし、実際に発がん過程の段階にあたるデータが存在しないことが多いため、これまでこのアプローチの妥当性を検証した研究はない。発がん過程の理解が比較的進んでいる大腸がんについて、最新の知見を考慮して拡張した発がん機序モデリングを実行し、さらに、これまで報告のない前がん段階にあたるデータを用いたリスク推定を並行して行い、比較することでその妥当性を議論する。
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研究実績の概要 |
本研究では、分子生物学の知見に基づいて数理モデルを構築し、そのモデルを疫学データにあてはめる発がん機序モデリングを行い、その結果を一般的な疫学研究で用いられる記述モデルの結果と比較する。2023年度は、発がんのプロセスに当たる新たなデータを含めた記述モデルを用いた統計解析を行った。具体的には、広島、長崎の原爆被爆者コホートの固形がん罹患率の解析ではこれまで含まれていなかったデータを用いて、発がん過程の1つの段階に該当する事象と放射線被曝との関連を評価するため、そのデータを含めた統計解析を行った。その際、多状態モデルと言われる生存時間解析の手法を用いるため、多状態モデルの適用に関わる生存時間解析手法について研究を進めた。また、原爆被爆者の放射線被曝と大腸がんの関連について、結腸がんのリスクは放射線被曝によって上がるが、直腸がんのリスクは上昇しないことが知られており、放射線疫学、放射線生物学のコミュニティでは長年多くの議論を呼ぶ謎となっている。2022年度に行った統計解析を含め、直腸がん罹患と放射線被曝の関連に焦点を当てた統計解析結果をまとめ、研究成果は2023年の放射線研究分野で最大の学会で発表した。発がん機序モデリングについては、その分野の専門家が来日する国際学会において議論する機会を持つことができたが、プログラミングの実装とデータへの適合については議論ができず、実データへの適合については課題を持ち越した形になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先に一般的な記述モデルを新たなデータを含めた疫学データに適用し、放射線被曝の影響について調査することを考えたため、記述モデルにおいて、競合イベントの放射線リスク推定値への影響を評価した。大規模コホート研究において、大腸がん発がん過程の途中と考えられる段階と放射線との関連を検討した研究はこれまで存在しないため、放射線影響研究のみでなく、疫学研究一般においても大きな知見となると考え、その成果を放射線研究の最大の国際会議と、国内の放射線影響学会で発表した。しかし、その論文作成はまだ途中であり、発がん機序モデルの実装においても当初の予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、現在作成中の原爆被爆者での放射線と大腸がん罹患についての関連を論文にまとめ、出版する。その成果をもとに、がん罹患データに発がん機序モデルを適用する方法論を構築し、発がん機序モデルの論文を作成する予定であるが、発がんモデルの実装について競合リスクの影響を考慮した適用を考える必要を感じている。発がん機序モデルの結果が、一般的な記述モデルによる結果をどのように表していると考えられるかを議論するためにも重要なステップであり、専門家との議論の機会を作る必要がある。発がん機序モデルの拡張、およびデータへの適用と解釈には、それぞれ数理モデリング、がん疫学・がん生物学の専門的知識に基づいた判断が不可欠であり、論文作成にあたってはそれらの専門家と十分に議論する必要があるため、海外・国内の専門家を訪ね、議論する機会を求める予定である。
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