研究課題/領域番号 |
22K12008
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60060:情報ネットワーク関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
大島 浩太 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60451986)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | Wi-Fi / LTE / 5G / 通信環境計測 / マルチパス / 通信制御 / モバイルデータ通信 / 異種無線連携 / 異種無線併用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、遠隔操船や自動運航船実現に向けて世界的に研究開発が活発化している海洋工学分野において、従来のVHF帯の専用通信装置ではなく、“通信品質に優れICT技術と親和性の高い無線データ通信(5G,4G,IEEE802.11ahなど)の利活用による海上での新たな価値創出”を目指している。無線通信は規格だけで性能が決まるものではなく利用環境の影響により品質が変動するため、実際の船舶の航路上で取得する実環境志向の通信環境ビッグデータとその分析から見出す通信環境の動態を踏まえた、異種無線の連携・併用による長所を最大化し短所を最小化できる通信制御技術を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は、遠隔操船や自動運航船実現に向けて世界的に研究開発が活発化している海洋工学分野において、従来のVHF帯の専用通信装置ではなく、“通信品質に優れICT技術と親和性の高い無線データ通信(5G,4G,IEEE802.11ahなど)の利活用による海上での新たな価値創出”を目指したもので、性能や特性の異なる無線通信方式の相補的な連携を特徴とする『異種無線連携・併用型の通信制御方式を開発』する。海上の通信環境ビッグデータから機械学習で見出した利用場所に応じた特徴をマルチパス通信制御に自動適用するという従来には無い技術により、海上という特殊な無線通信環境下で、要求される通信品質をその場の通信環境に適応的に提供することを目的としている。 2023年度は、2022年度に開発した複数の無線通信インタフェースを搭載しネットワークの切り替え時にもセッション切断を生じないゲートウェイ型デバイスに対して、(1) 高速性、安定性、リアルタイム性などの通信品質を達成するための通信回線の連携・併用に関する基本モデルを設計し、回線の利用バランスを動的に制御できる機能を実装した。次に、(2)実際の船舶を用いて東京湾・浦賀水道の航路における4G/5Gの通信環境について2つのキャリアを用いた計測実験を複数回実施し、得られたデータから海上における4G,5Gの利用可能状況の実態について調査・分析した。さらに、(3)通信環境特性を通信制御に反映するための通信制御方式として、(1)で開発した回線の利用バランスの動的制御を周囲の通信環境に応じて変更する仕組みを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、(1) 高速性、安定性、リアルタイム性などの通信品質を達成するための通信回線の連携・併用に関する基本モデル設計、 (2)実際の船舶を用いて東京湾・浦賀水道の航路における4G/5Gの通信環境調査、(3)通信環境特性を通信制御に反映するための通信制御方式の設計と実装の3つを軸に実施した。 (1)では、2022年度に開発したゲートウェイ型デバイスの機能拡張という形で実現可能となる複数の無線インタフェースを同時に利用する冗長通信に対して、回線の利用バランスを任意のタイミングおよび任意の通信パターンで制御可能とする機能を設計・実装した。回線利用バランスは無線インタフェース毎に設定するビットパターンに従って送信/休止を制御できるようにしており、通信環境が悪化時には回線の利用頻度を向上し、良好な際には通信品質の良いインタフェースを優先して利用するといった回線制御を可能とする。(2)では、東京海洋大学の練習船汐路丸上で、東京湾・浦賀水道の航路上の4G/5Gの通信可否および通信品質の記録実験を実施した。2泊3日の航海の3回分の航海中に、Android上で動作する記録用アプリケーションを用いて2つのキャリアの通信実態調査を行った。調査の結果、1社は海上で5G通信が可能な場所がわずかながら存在すること、もう1社はほぼ利用が難しいことが明らかになった。今後の基地局の配置状況により変動すると考えられる。(3)では、2022年度開発のゲートウェイ型デバイスに備わった無線通信インタフェースの通信品質検出機能や、GPSに紐づけられた位置ベースの通信品質データに基づいて、(1)で実装した機能を状況に応じて動的に実行できる仕組みを設計し、実装した。パケットロス率は受信信号強度の低い場所で増加する傾向にあるため、強度に応じた回線利用バランス変更を可能とした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は研究の最終年度であり、(1)継続的な海上における通信環境調査実験、(2)これまでに開発した装置や提案方式を用いた総合試験の2つを軸に研究を進める。 (1)は、海上における4G/5G等のモバイルデータ通信環境は航路直近の陸上の基地局の整備状況により変動することが考えられるため、継続的な調査により最新の通信環境を把握し続けることが重要であると考えている。2023年度と同様に、東京海洋大学の保有する練習船を研究実験で利用可能な実験航海の機会を活用して通信品質の海上における調査実験を実施する。衛星通信が利用可能な場合は、通信遅延や速度特性の違いの調査を分析も行う予定である。(2)は、2022, 2023年度に開発したゲートウェイ型の通信制御装置および回線バランス制御機能を用いた総合試験を予定している。まず陸上において移動中の通信回線の切り替わり時の通信特性について調査を行う。次に、周囲の通信環境に適応的な回線利用バランス制御の動作や通信性能試験を実施する。この実験の結果から、より通信性能を向上させることのできる点が見いだせた場合は、年度内に実装可能な場合は実装し、厳しい場合は方式や機能設計を行いたいと考えている。
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