研究課題/領域番号 |
22K12043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60080:データベース関連
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
浅野 泰仁 東洋大学, 情報連携学部, 教授 (20361157)
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研究分担者 |
小倉 淳 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (60465929)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 遺伝子相関ネットワーク / 単一細胞遺伝子発現データ / ランキング |
研究開始時の研究の概要 |
情報学の分野では,点と辺からなるネットワーク構造において点の重要度を求めるPageRank等のランキング手法が研究されてきた.ネットワークが時系列的に変化すればランキングも変動するが,その要因を推定することは難しかった.一方で,代表者らは近年生物学で注目を集めている単一細胞遺伝子発現データを用いて,「遺伝子相関ネットワーク」を構築し,そのランキングが炎症進行メカニズムに有用な知見を与えることを確かめた.本研究では,時系列ネットワークのランキング変動要因推定手法の確立を目指すとともに,炎症進行メカニズム解明に貢献することを目的とする.
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研究実績の概要 |
令和4年度は,これまで研究してきた遺伝子相関ネットワークの適用データの拡大と,その上でのネットワーク分析手法の開発に取り組んだ. 適用データの拡大については,新たに筑波大学・島野研究室で作成された2型糖尿病モデルマウスの膵島から得られた単一細胞遺伝子発現データを対象とした. ネットワーク分析手法としては,以下の3種類を提案した.(1) Webコミュニティ抽出手法であるLouvain法を遺伝子相関ネットワークに応用し,炎症進行時に相互作用している可能性の高い遺伝子群(クラスタ)を検出する手法 (2) Web関連ページ発見手法であるPersonalized PageRankを遺伝子相関ネットワークに応用して,炎症進行時に与えられた特定遺伝子と相互作用している可能性の高い遺伝子をランキングする手法 (3) 時系列ネットワークから連関ルールを発見する手法 である. (1)の手法については,東京理科大学・松島研究室で作成された珪素誘導肺線維症マウスから得られたデータにこれを適用し,炎症進行につれて遺伝子群が大きく変化していくことがわかった.またそれぞれのクラスタにおいて生物学的検証を行ったところ,炎症進行に重要な働きをしている既存の相互作用群が多く含まれることを発見した.(2)の手法については,上記の2型糖尿病モデルマウスのデータにおいて,島野研究室で炎症進行メカニズムに重大な影響を持つ可能性が高いと特定したある遺伝子についてこれを適用し,その遺伝子とβ細胞の関連を裏付ける成果を上げた.本成果については島野研究室の研究結果と合わせて論文誌に投稿中である.(3)の手法については,別種のデータとして東京湾プランクトン出現数データから時系列ネットワークを作成して適用し,水産研究・教育機構の長井氏らと論文をまとめ,論文誌Metabarcoding and Metagenomicsに採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるランキング変動要因推定手法の構築のために,遺伝子相関ネットワークの適用データを拡大することと,各種ランキングおよびグラフ分析手法の提案ができた.また,その生物学的検証も進展している.さらに,一部の成果については論文誌に採録された.これらから,概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度以降は,本研究の目的であるランキング変動要因推定手法の構築のために,さらに遺伝子相関ネットワークの適用データを拡大することと,それらから得られた各種ランキングの結果の生物学的検証から,数個の既知重要遺伝子に対象を絞り,ランキングの変動と遺伝子相関ネットワーク上の隣接遺伝子(既知重要遺伝子と辺で結ばれている遺伝子群)が持つネットワーク構造との関係を分析する.アイディアとしては,研究計画書に記載した差分ネットワーク(複数の遺伝子相関ネットワークの辺集合の差)やグラフ機械学習手法の利用が考えられる.これが成功すれば,ランキング変動要因推定手法のプロトタイプが作成できると考えている.その後は,このプロトタイプの性能(の生物学的)検証および改良に取り組んでいく予定である.また,令和4年度の成果として記載した手法(1)の結果についても,検出された遺伝子群に対してさらにランキングを行って検証するなど,多角的な実験を行い,論文誌に投稿することを予定している.
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