研究課題/領域番号 |
22K12053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60090:高性能計算関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
伊奈 拓也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 技術・技能職 (70943596)
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研究分担者 |
井戸村 泰宏 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 副センター長 (00354580)
今村 俊幸 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, チームリーダー (60361838)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | クリロフ部分空間法 / 混合精度演算 / SYCL / 高性能計算 |
研究開始時の研究の概要 |
「富岳」や「Summit」をはじめとする最先端スーパーコンピュータでは倍精度演算性能よりも低精度演算性能の方が数倍高く、最先端スーパーコンピュータの性能を引き出すためには低精度演算を活用した混合精度処理が重要である。しかしながら、低精度演算、特に、半精度演算はダイナミックレンジが狭く、実アプリケーションにおける精度低下や性能低下をもたらす可能性があるため、演算精度を適切に選択することが混合精度処理では必須である。本研究では、計算カーネル単位でデータ型と演算精度の組み合わせを可変に行うことで、演算精度の維持とメモリアクセスのコストを最小化した高速かつ数値安定な解法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は昨年度SYCLにより整備した半精度、単精度、倍精度、4倍精度によるデータ型と演算精度の任意の組み合わせを可能とするハイブリッド混合精度処理フレームワークを利用して一般化最小残差法(GMRES法)及び圧縮基底(CB)GMRES法を実装した。GMRES法は方程式Ax=bの行列Aとベクトルbによる部分空間{b,Ab,AAb,...}において残差Ax-bを最小化するベクトルxの近似解を求めるクリロフ部分空間法であり、反復毎 に残差ノルムが単調減少する特徴がある。{b,Ab,AAb,...}のベクトル列はAのべき乗が大きくなると線形従属に近づくため{b,Ab,AAb,...}を直交化して得られるベクトル列を基底ベクトルにして近似解を計算する。 CBGMRES法はGMRES法と同じアルゴリズムであるが、直交化して得られる基底ベクトルを低精度に変換して保持することでメモリアクセスを削減し、高速化を実現する。しかしながら、基底ベクトルを低精度で保持するため丸め誤差の影響により収束性が悪化する場合がある。 実装したCBGMRES法をSuite Sparse Matrix Collectionで公開されている行列データを用いて収束性を評価した。その結果、ハイブリッド混合精度処理によってメモリアクセスを削減して処理を高速化できるケースを確認したが、問題によっては反復毎に残差ノルムが単調減少する性質が失われ、GMRES法と比較して収束性が悪化するケースが存在することを確認した。この問題に対し、基底ベクトルの直交化に数値精度の高い方法を採用することで収束性の悪化が改善することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CBGMRES法を実装してハイブリッド混合精度処理による処理の高速化を確認し、さらに、これに伴う収束特性の劣化およびそれを回避する高精度計算手法を確認できたことから、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はハイブリッド混合精度処理に対応した省通信クリロフ部分空間法の整備を行い高速化と数値安定性の検証を進める。また、本研究課題で整備したライブラリの公開を目指す。
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