研究課題/領域番号 |
22K12055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60100:計算科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 英明 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10291436)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 運動エネルギー汎関数 / 非局所項 / エネルギー電子密度 / 密度汎関数理論 / エネルギー座標 / 電子密度汎関数理論 / 実空間グリッド法 |
研究開始時の研究の概要 |
電子の密度汎関数法は、これまで物質科学や材料設計の分野で大きな成功を収めてきた。しかしながら、電子系の全エネルギー=運動エネルギー+ポテンシャルエネルギーのうち、電子の運動エネルギーについては、これまで有効な方法は存在していない。 電子の運動エネルギー汎関数の構築において、本質的に重要な役割を果たすと考えられるのは運動エネルギーポテンシャルの非局所項であり、これの導入により実際、有望な結果が得られている。当該研究は、一様な電子ガスとは異なる参照系の応答関数をエネルギー座標上に射影することによって原子・分子系の非局所運動エネルギーポテンシャルを構築し、分子科学への応用を目指すものである。
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研究実績の概要 |
KohnとShamによる密度汎関数法(KS-DFT)は密度汎関数理論(DFT)の実践的な方法論であり,化学や物理,工学など様々な分野で応用されている。KS-DFTの最も重要な特徴は電子の運動エネルギーを電子密度の汎関数ではなく1電子波動関数によって計算することにある。しかし,軌道の導入によってKS軌道間の直交性を維持する為の計算が必要になり、計算コストは電子数の2乗に比例して増大する。仮に精度の高い運動エネルギー汎関数が利用可能なら,DFTの計算コストは実質的に Order-Nとなる。 本研究は、Wang-Teterらが提唱する運動エネルギー汎関数の非局所項に発想のきっかけを得て、課題実施者が独自に開発した新規なDFTの理論をベースとする非局所運動エネルギー汎関数を開発するものである。汎関数開発の理論的指針は以下の通り。電子密度がn0であるような参照系について、その運動エネルギーポテンシャルが与えられているとし、電子密度nのn0からのずれdnに対して、運動エネルギーポテンシャルをTaylor展開する。この時、DFTの基礎理論により、dnについて一次の項の係数に参照系の応答関数の逆関数が現れる。本課題実施者は、本人が開発したエネルギー座標を変数とする電子の密度汎関数理論に則って、この応答関数やその逆関数をエネルギー座標上の2次元の関数に射影した。この関数によれば、興味ある系の応答関数の性質を損なうことなくその次元を下げることが可能である。 課題実施者は、参照系の運動エネルギーポテンシャルが正確に分かっている原子系や水素分子に対して上記の理論を適用し、その運動エネルギーをKS-DFTの結果と比較した。これらの比較により、本研究の結果がKS-DFTの結果を極めて良く再現することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況は概ね順調である。しかしながら、エネルギー座標上の電子密度を基本変数とする電子密度汎関数理論の本の執筆など、本件と関係があるものの締め切りのある仕事の対応に想定外の時間が取られる傾向にある。また、本研究から派生するアイディアもあり、これに関わる理論の定式化やプログラム実装する為の時間も必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
運動エネルギー汎関数の非局所項において中心的な役割を果たす参照系の応答関数について、それをエネルギー座標に射影することの正当性や有効性を検証する為の基礎研究が別途必要では無いかと感じている。つまり、「エネルギー電子密度を変数とするDFTの原理」の証明が必要であると考える。これを実現する為の方法が、最適化有効ポテンシャル(OEP)法である。この方法は、KS-DFT理論の原理の証明や、その欠点を補強する為に、かつて良く研究された。当初の計画を推進すると共に、平行してOEP法を新規DFT理論に適用する為の理論開発を実施したいと考えている。さらに、この理論から派生する別の方法のアイディアもあり、それらの定式化やプログラム実装なども視野に入れて研究を推進したいと考えている。
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