研究課題/領域番号 |
22K12086
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
来海 暁 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (30312987)
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研究分担者 |
土居 元紀 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (00304155)
西 省吾 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 准教授 (70411478)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 分光BRDF計測 / 時間相関カメラ / 楕円面鏡 / 球面調和関数 / フーリエ係数 / 楕円鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
物体表面における光の反射特性はBRDFという関数で記述され,視覚刺激から物体の材質を感じ取る「質感」と深く関わっている.さらに光の波長を考慮した分光BRDFでは,入射方向や視線方向に応じて見かけの色が変化する現象が記述できる.しかし,分光BRDFの計測には角度や波長の分解能と計測時間との間にトレードオフが介在する.これに対し本研究では,時空間分解能の高い分光BRDF計測システムを高い照明光効率,かつ省スペースで実現することを目的とする.システムは波長可変光源,DLPモジュール,楕円鏡,および時間相関カメラにより構成し,計測およびそれに基づく画像レンダリングをオンラインで達成することを目指す.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は分光BRDF計測システムを高時空間分解能・高効率・省スペースで実現することである.これまでに楕円面鏡,時間相関カメラ,DLPモジュール,および高速波長可変光源を用いてシステムを構成し,BRDFの球面調和関数による展開係数をフレームレートで画像として計測することを目指してきた.このうち楕円面鏡は自作が必要であり,昨年度までは研究代表者らの所属機関の金属加工装置を用いてレーザによる光造形や切削を行い,手動で研磨することにより試作してきた.しかし瑕や歪みの発生を解消することができず,BRDF展開係数の正しい計測の妨げとなっていた. 今年度はこれまでの試作における検討に基づき,新たに専門業者に委託することにより,形状および表面仕上げが高精度に実現された楕円面鏡を作製した.これにより,従来では楕円面鏡の瑕や歪みなどにより計測画像に重畳していた明暗模様をほぼ解消することに成功した.また,光源の出力端に均一化・平行化モジュールを装着し,さらにDLPモジュールからの反射光を集光するためのレンズ光学系を新たに導入することにより,楕円面鏡に入射する照明光ができるだけ点光源に近づくように改良した.さらに幾何光学および放射測光的な検討により,入射方向に対する依存性を考慮した計測対象への照明光の補正方法を確立した.ただし,楕円面鏡が高精度であるがゆえに,本来の目的である計測対象からの反射光の分布が計測される代わりに,計測対象を顕微鏡で観察したような画像が得られる場合のあることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
進捗が遅れている点の一つは,照明光学系に内部全反射プリズムが導入できていないという点である.本研究では計測システムの高効率化・省スペース化を図るため,照明光学系に内部全反射プリズムを導入することを検討し,そのために昨年度は光学設計ソフトウェアを購入した.しかし,このソフトウェアを用いて内部全反射プリズムを設計するにはかなりの熟練を要することが分かり,実際の設計には至っておらず,したがって計測システムの高効率化・省スペース化は進んでいない.ただし,内部全反射プリズムのもう一つの目的である,照明光学系の幾何光学的な精度の向上は,プリズムの代わりに光源の出力端に照明光の均一化・平行化モジュールを導入したり,DLPモジュールの後段にレンズ光学系を追加したりすることにより達成できており,実験上の不都合は回避できている. 遅れているもう一つの点は,専門業者を利用した高精度な楕円面鏡の作製までに時間を要したことである.本研究費を最大限有効活用するため,研究代表者らの所属機関の設備を用いて楕円面鏡を改良する可能性をできる限り検討したが,専門業者に依頼するという決定までに半年近くを要した.その後ただちに,限られた予算内で所望する仕様の楕円面鏡の作製が可能な業者の選定に着手したが,複数の業者を直接現地まで訪問するなどして,最終の業者を決定するまでに年内一杯までかかった.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるため,研究を加速させ,国際会議や学術雑誌への発表に足るだけの成果の産出に漕ぎつけることを目標とする.まず,楕円面鏡や照明光学系の改善により球面調和関数によるBRDF展開係数がフレームレートでかつ高精度に計測できることを実験により明らかにする.その際にさまざなま計測対象を用いると同時に,点光源を用いてBRDFを直接計測する実験も行い,その結果を用いて球面調和関数によるBRDF展開係数を計算で求めて性能を比較する.さらに,これまでは照明光学系の構築が完了しなかったために導入できなかった高速波長可変光源を用いることにより,BRDFの分光計測を実現する.研究代表者らの過去の研究により,高速波長可変光源において波長に線形な位相シフトを加えつつ各波長成分を正弦波変調することにより,時間相関カメラにおいて撮影対象の分光反射率のフーリエ係数がフレームレートで検出できることが確かめられている.この手法を本研究に導入し,球面調和関数によるBRDF展開係数が分光的なフーリエ級数として実時間で計測できることを実験により示す. 本計測システムによるBRDF展開係数の有効性は,計測値そのものだけではなくCG画像のレンダリングによっても視覚的に示す.実際のさまざまな対象に対するBRDF展開係数の計測値を用いてレンダリング画像を生成し,実際の対象の撮影画像やその物体を視覚的に観察した結果と比較することにより,定量的かつ定性的に有効性を検証する.
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