研究課題/領域番号 |
22K12099
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61010:知覚情報処理関連
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
池田 雄介 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (80466333)
|
研究分担者 |
及川 靖広 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70333135)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 音場推定 / 室内インパルス応答 / 圧縮センシング / 音場の可視化 / 音響計測 / 外挿 |
研究開始時の研究の概要 |
室内インパルス応答(以下、RIR)測定は、音の伝搬を把握する上で重要な計測情報であるが、測定点が増えると、測定時間や計測システム規模が増大し、測定が困難になるという問題がある。本研究課題では、近接する少数のマイクロホンによるRIR計測のみから、空間的に連続なRIRのモデル化手法を確立し、多点RIR計測を効率化することを目的とする。特に、シミュレーション実験と音響反射板を用いた無響室測定実験を実施し、推定可能な周波数の上限とモデル化に有効なマイクロホンアレイ形状を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究課題では、近接する少数のマイクロホンによる室内インパルス応答計測情報から、音波の物理モデルを用いた空間連続な音場のモデル化手法を提案し、効率的な多点室内インパルス応答計測の実現を目指している。令和4年度は、主に、推定精度の改善を目的とした音場モデル化のアルゴリズムの検討、壁面の吸音率推定への応用、散乱音場への適用、音場の可視化への応用に関して検討を行った。 アルゴリズムの検討では、直接音場のモデル化の精度改善を目的とした音源の放射特性の事前モデル化を用いた音場モデル化手法を提案し、シミュレーション実験により有効性を確認した。また、複雑な反射音場に対する推定精度の改善を目的として、反射音ごとのマイクロホンへの到来時間を用いたグループ化による時間領域音場分解を用いた音場推定モデル化手法を提案し、シミュレーション実験と実測実験により、一定の有効性を確認した。さらに、吸音率の推定精度の改善を目的として、深層学習を用いた壁面の吸音率推定手法への空間連続な音場モデルの応用について検討した。少数のマイクロホン情報から音場モデルを推定し、その後、音場モデルを用いてマイクロホン信号を空間的に拡張することで、深層学習の入力信号を増強するアルゴリズムの検討を行った。また、直接音や反射音ごとに音場を分解可能という提案手法の特徴を活かし、相対的に振幅が小さい散乱音場のみの可視化を目的とした散乱音場モデル化手法について基礎的な検討を行い、入射音場と散乱音場を個別に可視化可能であることを確認した。さらに、音場の可視化への応用として、複合現実技術を用いて推定された部屋の3次元形状に基づいて音場の物理モデルを仮定し、少数の音響計測情報からモデル化された音場を、任意空間解像度で実空間に可視化する手法に関して基礎的な検討を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音波の物理モデルを用いた空間連続な音場のモデル化手法に関しては、音源の放射特性と到来時間を用いたモデル化手法を新たに提案、より複雑な音場のモデル化に関する問題点の把握、実測による評価実験手法の検討を行い、音場推定精度や推定範囲の広域化について更なる向上を行える見通しを得た。また、さらに、音場モデル化手法の応用として、複合現実技術を用いた音場の可視化への応用や深層学習を用いた吸音率推定への応用など、実用化に向けた検討も進んだことから、当初の目標に対して概ね順調に推移していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、実環境への適用を目指し、音場のモデル化手法の3次元化を実施し、より実環境に近い評価実験を進める。さらに、深層学習を用いた音場のモデル化手法の基礎的検討を行う。 具体的には、複合現実技術を用いて推定された室形状情報から、等価音源の配置候補を限定する手法について検討および、3次元マイクロホンアレイの形状やマイクロホン数と推定可能周波数や推定精度との関係に関して検討、さらには、複雑な反射音場のモデル化に関して時間分割手法の検討を引き続き行う。特に、室形状情報と測定マイクロホンの位置には測定誤差が含まれるため、それらの誤差が音場のモデル化精度に与える影響に関して検討を行う。防音室もしくは無響室に音響反射板を複数設置し、単純な室形状から評価を始め、室形状を変えながら評価を実施する。さらに、反射音到来時間はマイクロホン位置によって異なるため、マイクロホン間の距離が離れるほど、同一の反射音の到来時間は大きく異なる。したがって、反射音の到来順序も異なりグループ化が複雑となるため、これまでマイクロホン配置にはマイクロホン間の距離に制約があった。そこで、マイクロホンごとに異なる反射音グループ化を適用する手法の検討を行い、より自由なマイクロホン配置による音場のモデル化アルゴリズムを検討する。 深層学習を用いた音場のモデル化手法に関しては、実測による多量のデータベースの構築は困難であるため、数値解析による音場シミュレーションデータベースを構築し、境界条件を入力とする深層学習と用いた音場の推定に関して基礎的な検討を行う。特に、ネットワークの比較や必要なデータ数、推定精度に関する検討をシミュレーション実験によって実施する。
|