研究課題/領域番号 |
22K12111
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
矢野 澄男 島根大学, その他部局等, 名誉教授 (30466239)
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研究分担者 |
尾島 修一 崇城大学, 情報学部, 教授 (30211824)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 接眼型ディスプレイ / 頭部運動 / 視野角度 / 視距離 / 表示画角 / 視野制限 / 接眼型画像表示 / 画角 / 調節応答 / 快適性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,接眼型の画像表示装置,特にHMD(Head Mount Display)に関して,視覚特性に基づき快適で好ましい画像表示の基本的な所要条件を明らかにすることである.視距離が一定となる閉ざされた空間で虚像としての画像表示を接眼型の画像表示装置の特性としてとらえ,快適で好ましい画像表示条件の解明を目指す.このため,基本となる視距離に依存した好ましい画像表示画角,眼球・頭部運動の生起度合いによる画像生成・表示方法,虚像としての表示画像,および,その画質を要因とするピント調節機能の解明を行う.これらの結果を通して,接眼型の表示装置に関して快適で好ましい基本的な画像表示条件を明らかにする.
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研究実績の概要 |
接眼型ディスプレイでの快適な表示条件を明らかにする目的で研究を進めている.これまでに,基礎的な表示条件の一つである表示画角に関して必要とされる画角を主観評価 実験により検討を行なった.実験の結果,必要とされる好ましい画角は2mで50度,4mで40度,6mで20度程度であるとの結果を見出した. 引き続き,表示画角にかかわる検討を進めた.広視野の画像の観視には,眼球運動,さらに,頭部運動を伴うことになる.この頭部運動に着目し,表示画角とのかかわり,また,画像が連続的な動きから構成される場合の振る舞いの検討を進めた. まず,視距離4mで,表示画角20,40,60度の静止画像を観視中の頭部運動の振幅を測定,評価した.なお,提示した画像にかかわる顕著性マップを求め,特定の位置に注視点が存在しないことを確認した.頭部運動の振幅は,変動の大きいyawingのみとした.その結果,表示画角60度では,20度に比べて頭部運動の振幅が有意に小さくなることを見出した.さらに,静止画像を左,もしくは,右に0度からパンニングを30度,60度行った静止画像からなる連続画像,および,画像を1倍から1.4倍,2倍とズーミングした静止画像からなる連続画像に関する頭部運動を測定し,前者では60度パンニング後は頭部運動がパンニング方向の半視野に誘導され,後者ではズーミングの中心の視野に誘導されやすいことを見出した. 次に表示画角,20,40,50度と視距離2, 4, 6mでの頭部運動を測定し,yawingの最大振幅,および,速度分布に関する検討を進めた.その結果,頭部運動の最大振幅は表示画角との相関は低く,視距離とは高い負の相関を持ち,速度分布は表示画角,視距離との相関は低くことを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接眼型ディスプレイで快適な表示条件を探る一助として,表示画角および視距離と頭部運動とのかかわりの解明を進めた. まず,3種類の静止画像と3つの連続した静止画像からなる連続画像を提示画像とした.前者の画像は顕著性マップを導出し,注視点が局在しないことを確認した.後者は左右にそれぞれ0,30,60度とパンニングする連続画像と1.0, 1.4, 2.0倍にズーミングする画像である.これらの画像については,顕著性マップ,および,顕著性マップをベースとした特徴点対応を求めた. 3種類の静止画像に関して視距離4m,表示画角20,40,50度で提示し,頭部運動のYawingの振幅を評価した.その結果,20度と60度では有意に頭部運動のyawingの振幅が減少することを見出した.次に,連続した静止画像に関する頭部運動のyawingについて測定,評価した.結果としてパンニングを施した連続画像では,0, 30度のパンニングでは頭部運動は左右両側視野に頭部運動の方向は位置したが,60度ではパンニング方向の視野に頭部運動の方向は偏在した.次に,ズーミング画像では,2.0倍でやや頭部運動がズーミング中心の視野に偏在することを見出した. さらに,表示画角,20,40,50度と視距離2, 4, 6mで3種類の静止画像を表示し,頭部運動を測定,評価した.頭部運動はyawingの最大振幅,および,速度分布に関して検討を行った.その結果,頭部運動の最大振幅は表示画角との相関は低く,視距離とは高い負の相関を持ち,速度分布は表示画角,視距離との相関は低いことを見出した.また,速度分布は,高い周波数成分を含む画像では遅い速度成分のみであることを見出だし,速度分布の画像コンテンツへの依存性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
接接眼型ディスプレイでは,基本的に虚像表示を行い,観視することになる.さらに,両眼に画像を提示すれば,両眼視となり,両眼立体視が可能となり奥行き距離の知覚が容易になされる.この表示では輻輳・調節の乖離が知られており,視覚疲労の要因となっているため多くの研究がなされている.しかながら,そもそも虚像表示に対する距離知覚,加えて,調節の応答にかかわる知見は多くはない. 今後は,単眼観視での奥行き距離知覚を検討する.まず,実際の視標に対する距離知覚を評価する.続けて,虚像に対する距離知覚を評価する.さらに,両眼で虚像を観視する場合の奥行き距離知覚を評価する.この場合,両眼視差はゼロとする.これらの一連の実験によって,実視標に対する距離知覚に比較した視標を虚像とした場合の調節機能,また,調節・輻輳機能による奥行き距離知覚を明らかにする. 続けて,実像,および,虚像に対するピント調節特性を測定,評価する.これまでに,実像に対するピント調節の測定は実施されているが,虚像に対するピント調節の測定はほとんど見られない.虚像に対するピント応答と実像に対する応答とを比較し,その差異を探る.加えて,前述した奥行き距離知覚との比較をも行い,虚像による画像に対する奥行き距離知覚とそれに伴うピント調節の仕組みを明らかにする.
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