研究課題/領域番号 |
22K12138
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
稲垣 圭一郎 中部大学, 工学部, 准教授 (10568942)
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研究分担者 |
我妻 伸彦 東邦大学, 理学部, 講師 (60632958)
信川 創 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (70724558)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 事象関連電位P300 / 視覚認知 / 車両運転 / 脳波計測 / 機能的結合 / 事象関連電位 / 注意 / 運転 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒューマンエラーによる交通事故のほとんどは,視覚認知ミスが原因であり,これは運転経験により減少する.走行環境認知におけるドライバーの経験の影響は,視線計測による理解が進んでいるが,視線移動を実現するうえで最も重要な視覚機能である注意選択に絡む脳神経機構においては,理解が乏しい.本研究では,視覚認知における最重要機能である注意選択と運転経験により実現される最適な走行環境認知機構を,注意選択に関する脳波である事象関連電位P300の計測とその発生に絡む脳神経回路の機能的結合解析,さらに走行環境内の顕著性を再現する脳数理モデルシミュレーションの3手法により解明する.
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研究実績の概要 |
当該年度は,経験により最適化される注意の脳神経機構と走行環境内の認知対象物の重要度に相当する顕著性との関係の理解を目指して,実走行環境に存在する歩行者や他車両などの注意しなければならない視覚認知対象に対するドライバの事象関連電位P300の応答特性を評価した.被験者に,走行シーンを呈示し実車両運転と同様に,他車両や標識,歩行者などの対象物を認知している際の脳波と反応時間を計測したところ,こうした運転行動の決定に関係する視覚認知対象に対してもP300応答が生じることを明らかした.このとき,P300の発生率が,視覚認知対象の種類,特に注意を喚起する能力に依存することを明らかにした.すなわち,視覚認知対象の運転時の認知につながる注意喚起能力が潜在的に高い場合,P300が高い確率で観測され,一方で同注意喚起能力が潜在的に低い認知対象では,P300が発生しにくかった.こうした走行シーン内の視覚認知対象の注意喚起能力とP300応答の詳細については,今後,当初の計画通り顕著性を再現可能な脳数理モデルで走行シーン解析をして,顕著性とP300応答の相関などを検証することで,言及できるものと考えられる. 一方で,経験によって変化する走行シーン認知時におけるドライバの脳活動を周波数解析とPhase Lag Index(PLI)で求めた脳機能的結合により評価した.結果,運転経験により脳波のα帯のパワーが増加するとともに,β帯ならびにγ帯のパワーが低下することを確認した.さらにPLIにより求めた機能的結合では,γ帯の機能低結合が後頭野から他領野にかけて運転経験によって強くなることを明らかにした.今後は,本解析を上記の走行シーン内の視覚認知対象認知時の脳波解析へ拡張することで,実走行環境の認知時における注意に関する脳波に寄与する経験の影響について言及できる者と考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
走行シーン内の視覚認知対象認知時の事象関連電位P300の評価は,本研究目標の根底をなす部分でありそのデータは顕著性モデル構築やPLIによる脳神経ネットワークの機能的結合解析に必須であるが,これを本年度ほぼ達成している.併せて本年度は,走行シーン認知時のドライバの脳波のPLIによる機能結合解析により,運転経験により変容する機能的結合の評価を実現しており(Tsurushima et al., NOLTA2023),対象とする脳波データを本年度計測した前述のものへ変更するのみで研究目標の注意に関連するP300応答を励起する脳神経回路の機能的結合強度の同定を実現可能である.これらに加え,走行シーンの顕著性再現のため顕著性を再現する脳数理モデルの構築および改良も始めている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,走行シーン内の視覚認知対象認知時の脳波データをさらに収集し,本年度得られている結果の詳細化をはかり,学術論文としてまとめることを目指す.加えて,同データに対してPLIによる脳神経ネットワークの機能的結合評価のアプローチにより,実走行環境認知時の注意に関する脳活動を運転経験の関係評価を推し進める.さらに,顕著性を再現する脳神経数理モデルの構築と改良を進め,計算シミュレーションを通して走行シーン内の視覚認知対象認知と注意の関係を評価する.これらの3つの研究を並列して進めることで当初の研究計画の達成を目指す.
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