研究課題/領域番号 |
22K12180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
野村 厚志 山口大学, 教育学部, 教授 (40264973)
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研究分担者 |
長峯 祐子 宇部工業高等専門学校, 制御情報工学科, 准教授 (50344049)
櫻井 建成 武蔵野大学, 工学部, 教授 (60353322)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 反応拡散方程式 / 画像セグメンテーション / 生物模倣型アルゴリズム / FitzHugh-Nagumo方程式 / 画像処理 / エッジ検出 / 領域分割 / 遅れ時間 / 結合興奮系 / 遅延微分方程式 / エッジ強調 / 動き強調 / FitzHugh-Nagumo |
研究開始時の研究の概要 |
視覚は動的な系であり、その内部状態は外部刺激と過去の状態に従って時々刻々と変化する。視覚系には外界の光刺激が継続して入力されるため、時間遅れを伴う動的な系として理解することが必要となる。本研究では、遅延微分方程式が、系の状態変化を過去の入力や内部状態と結び付けてモデル化できることに着想を得て、神経の興奮・抑制の状態変化をモデル化するFitzHugh-Nagumo型の遅延微分方程式によって初期視覚系の数理モデルを構築し、その系の動的な機能や効果を数値実験によって再現する。特に、明るさのエッジ強調効果や、動き強調効果といった現象を対象とする。
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研究実績の概要 |
神経軸索における興奮・抑制状態の動的な変化の様子を記述する数理モデルのFitzHugh-Nagumo(FHN)方程式は、そのモデルのパラメータによって、1つの安定な平衡解を持つ単安定系と、2つの安定な平衡解をもつ双安定系をもつ。抑制状態から、ある閾値を超える外部刺激によって興奮状態へ移行し、再び抑制状態に戻る単安定系と、抑制状態には戻らず興奮状態で安定となる双安定系である。いずれの系も拡散によって結合された2次元空間に広げると、時間の経過とともに興奮状態が空間的に円形状に広がって伝播していく様子が観察され、その伝播速度は拡散係数や閾値に依存する。 今年度は、FHNモデルの双安定系による興奮状態の伝播によって画像の領域分割を行うことを試みた。具体的な応用分野として網膜画像における血管領域とその他の領域を分離する領域分割とし、FHNモデルの修正を試みた。すなわち、血管領域とその他の領域の画像の明るさの違いに着目し、2次元に拡張したFHNモデルの拡散係数と閾値を網膜画像の明るさに依存するよう修正した(明るさ:大⇒抑制性の拡散係数と閾値:小)。これにより、血管領域では興奮状態がある速度で伝播し、その他の領域では伝播速度がゼロ、すなわち広がらないようにFHNモデルを修正した。 数理モデルを網膜画像のデータセット:STAREのいくつかの画像に適用し、簡単な場合に領域分割が可能であることを確認した。課題としては、細い血管の領域においては、興奮状態を伝播させることが困難であり、結果として血管の途中において伝播が途切れてその先の血管領域を抽出することが困難であること、初期状態やモデルパラメータの設定を画像に応じて変える必要があるが、そのための方法がまだ定まっていないことがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画ではFitzHugh-Nagumo方程式に時間遅れを導入したものの性質を解析し、画像処理や視覚情報処理に好ましい機能が備わっていないか調べることにしていた。また、昨年度はエッジ検出アルゴリズムにおいて時間遅れを導入することでエッジ検出の高精度化を着想した。しかしながら、今年度一時的に興味を持った網膜画像における領域分割の課題について、双安定系における興奮状態の伝播によるアルゴリズムを着想し、実際の網膜画像に適用を試みたところ、想定外の発展性のある結果を得た。このため、本来の遅れ時間の導入による数理モデルの解析や応用が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に着想したFitzHugh-Nagumo方程式による興奮状態の伝播による領域分割アルゴリズムに集中的に取り組むことで、研究成果を得たい。その上で、研究計画段階で予定していた抑制性結合を強くした場合のエッジ検出アルゴリズムも含めて、方程式に遅れ時間を導入したものを適用することで、エッジ検出や領域分割などの幅広い画像処理などの分野においてより好ましい性質を有するアルゴリズムを考案し、より多くの研究成果を得ることで本研究を推進したい。
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