研究課題/領域番号 |
22K12210
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61050:知能ロボティクス関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
奥乃 博 早稲田大学, 次世代ロボット研究機構, その他(招聘研究員) (60318201)
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研究分担者 |
奥乃 真弓 東洋大学, 法学部, 准教授 (60866325)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | AI・ロボットサービス事業 / 合同会社 / 法人格付与 / オープンソースソフトウエア / General Purpose AI / Foundation Model / EU AI法案 / Liability Risk管理 / EU AI Act / リスク管理 / AI・ロボットの法人化 / オープンソース / AI・ロボット事業合同会社 / AI・ロボット事業合同会社のリスク / 合同会社のリスク遮断 |
研究開始時の研究の概要 |
AI・ロボットを所有管理し,サービス事業を提供する事業合同会社の設立による「AI・ロボットへの法人格付与(法人化)」により,AI・ロボットの責任と権利の交渉先として一元化され,納税義務が発生し,責任と権利の空白が解消できると期待される.一方,AI・ロボットの技術開発で飛躍的に展開するオープンソース化が法人化や倫理規定設定に与える影響はほとんど未検討である.本研究では,AI(MLを含む)オープンソースソフトウエア,オープンAPI,オープンカー,オープンロボティックス,での課題を,法学研究者とともに洗い出しを法人化をより緻密なものへと昇華する足掛かりを得る.
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研究実績の概要 |
①AI・ロボットサービス事業(サービス事業)の責任シールドの構築:サービス事業提供会社を合同会社として設立すると,法人格が得られるとともに、出資者の有限責任が保証される。さらに、出資者・出資会社間の垂直型責任シールドに加え、出資会社を分割すると、分割コストがかかるが、分割会社間の並列型責任シールドが構築できる。アメリカのシリーズLLCでは、親シリーズLLCの下にシリーズを比較的容易に設立できる。サービス事業のユースケースごとにシリーズを設立し、他のシリーズや親シリーズLLCとの間で水平型責任シールドが構築できる。以上を指摘した上で、LLCやシリーズの強い匿名性対して、2024年1月に施行された企業透明化法の影響についても論じた。(東洋法学論文) ②EU AI法案からのGPAI(汎用AI)の法的課題:2021年当初のAI法案で採用されたリスクベースドアプローチに加え、2022年改定案でGPAI(汎用AI)が導入され、二層アプローチとなった。しかし、GPAIがオープンソースとして提供される場合もあり、その多様なユースケースへの展開がリスクベースとは相いれず、突如規制の対象となりかねない。ユースケースごとにシリーズを設立すると、水平型責任シールドが構築でき、出資者の責任保護が強化できることを指摘した。(国際会議論文) ③オープンソースの管理にも活用される分散型自律組織(DAO)のガバナンスの課題に法的地位がある。DAOの法的ラッパーとしてアメリカのLLCを取り上げ、①LLCラッパー、②既存の会社法の拡張、③新しい法人事業体の制定、について複数の州の取組みを分析し、単一の事業体では必ずしも対象とするDAOの法的ラッパーとしては不十分であり、複数の事業体を組合わせる必要性があることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【計画より進捗した点】分散型組織、自律組織としてWeb3の新たな組織形態として注目を浴びるDAO(Decentralized Autonomous Organization)は、オープンソースの管理にも活用されている(例:Radicle、MolochDAO)。DAOのガバナンスの課題として、①法的地位、②有限責任、③規制の遵守、④紛争解決、⑤知財保護、⑥銀行口座と財務サービス、⑦税対策などが挙げられる。法的ラッパーとしてアメリカのLLC(Limited Liability Company)を取り上げ、法的ラッパーとして、①LLCラッパーとしてDAO LLCの州ごとの制定状況、②既存の会社法の拡張、③DAOを新しい法人組織として認識する事業体の制定について複数の州の取組みをまとめ、法的課題を明らかにした。現在、論文を執筆中である。 また、ロボット聴覚オープンソースソフトウエアHARKの普及のために、生成AIであるChatGPT Plusを活用して、HARK開発支援Chatbot とHARK講習会アシスタントを開発し、その公開を通じて、経験を積み、その課題について知見を得た。 【計画通りの進捗点】AI・ロボットサービス事業の法人化について、EU AI法のリスクベースとGPAI(General Purpose AI)という二層アプローチに潜む矛盾点を指摘し、それに付随する責任保護(liability protection)を提供する枠組みとして整理をし、国際会議で論文を発表した。 【計画より遅れている点】論文投稿が遅れており、4月に1件、5月に1件、6月に1件論文の投稿を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
【WP1:オープンソース開発・保守を担うDAOの法的ラッパーの設計】DAOの法的ラッパーについてDAO LLC、COALAモデル法、LCA(Limited Cooperative Association)、UNA(Unincorporated Nonprofit Association)について調査・比較を進め、どのDAOにどの事業体が適切なのか明らかにする。さらに、単一の事業体では個別DAOの事情に合わせた設計は難しい場合には、複数の事業体の組合せについても検討をする。また、投資型DAOなどでの投資先を一括管理するのではなく、シリーズLLCを適用し、投資先ごとにシリーズを構築し、投資先に対する責任保護の方法についても検討する。 【WP2:AI・ロボット事業合同会社の責任シールドの設計】合同会社、とくに、シリーズLLCを活用した責任シールドについて、会社の分割・統合・清算などの観点からその法的課題について明らかにする。特に、LLCでは運営契約(Operating agreement)で免除することが可能になったフィデュシャリーデューティについては、DAO LLCではその免除がデフォールトとなっている。フィデュシャリーデューティについて、エージェント・会社間、エージェント間、エージェント・ステークホルダや第三者間の観点から再検討し、スマートコントラクトへの実装可能性についても検討する。 【WP3:オープンソース開発を勘案したAI・ロボット事業合同会社のライフサイクルの設計】オープンソース開発保守では、ボランティアベースが主流であり、報酬が伴わない場合が多く、企業に属する人は少ないとの報告がある。オープンソースを維持管理していくための枠組みとして、DAOを適用し、開発保守にも適切な報酬が支払われる体系をどのように構築することができるのかを検討する。
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