研究課題/領域番号 |
22K12225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
高橋 雄三 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (30326425)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 人間工学 / 情動情報 / ヒューマンエージェントインタラクション / ユーザーフレンドリー / インタラクションの谷 / イタラクションの谷 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒューマンエージェントインタラクションで発生するコミュニケーションの不自然さ等の原因であるインタラクションの谷の最小化を実現するためには,エージェントが人間の情動や趣向を意思決定の段階で捉え,【行動】の意思・意図を【行動の判断】の段階で確認し,【行動の判断】と【行動】における認知と動作の相互作用の質の維持が必要である.本研究では情動反応を伴う視覚刺激に対する強制二択式選好判断時の感性生理学的・行動学的信号のモデル化を行い,情動情報の先行取得時間がエージェントの友好的な振る舞いの実施に十分な時間であり,眼と手の協応関係の変化から両者の相互作用にはパフォーマンス促進効果があることを検証する.
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研究実績の概要 |
令和5年度は当初,計画していた実験室が使用できず,併せて実験装置の導入に大幅な遅れが生じたため(調達に関しては現在進行中),生理指標を採取するための十分に安全な環境を再構築する必要性が生じ,一部のパラメータ(フレームレートと主観評価の関係など)の検討に留まってしまった.そこで2022年度中に実施することができた擬人化したエージェントの印象評価に影響を及ぼすことが予想されるエージェントを画面に表示するフレームレートを30,60,120fpsの3段階設定し,エージェントの動きの滑らかさと偏向注視・縮瞳先行時間との間の関係について検討し,生理心理学の専門家や画像デザインや画面構成のデザインに造形の深い関係者とディスカッションを通じて,「友好的」という印象を与えうる最適フレームレートについて予備的実験の結果と合わせて検討した.「友好的」という表現の抽象性による多義的解釈を避けるため,参加者には「注視対象のエージェントの動きの滑らかさ」という形で主観評価を採取した.別の研究プロジェクトで採取した仮現運動の滑らかさとISI(Inter-Stimulus Interval)の関係では,ISIが短いほど注視対象の運動の滑らかの評価は高くなる傾向が認められたものの,擬人化したエージェント(人物をもしたキャラクター)の動きに関しては,60fps前後に最適値が存在する可能性が示唆された.したがって,注視ターゲットへの印象の認知と擬人化したエージェントへの印象の認知には時間領域で異なるメカニズムが関与している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度は新型コロナウイルス感染症の分類が5類に引き下げられたものの,人を対象とした実験の実施については実験者の感染予防策・行動制限のみならず,参加者への格段の配慮(行動制限など)などが求められた。2022年度中に予備的な実験を行うことはできたものの,円安による機器調達の遅延や当初計画していた実験室の仕様ができなくなり,新規の感染症対策の追加や新たな実験環境の再構築の検討により,2023年度中に本格的な実験を開始することはできなかった.特に本研究では(1) 機器の共有(脳波測定装置や眼球運動・瞳孔径測定装置入力装置など)と(2) 実験者と参加者との間のソーシャルディスタンスの確保並びに近接時間の短縮が困難(測定装置の装着並びに装着機器の調整など)であるため,代替装置の準備・購入や代替パラメータへの変更などが難しく,加えて感染状況や実験者・参加者双方のワクチン接種者に限定しており,安易な実験再開は不可能であったことが研究遅延の原因である.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は令和5年度に実施することができなかった実験系の再構築と,当初計画に基づくすべてのパラメータを用いた予備実験を実施し,情動情報(偏向注視,縮瞳,自発脳波,腕部の動作,循環器パラメータの導入など)の先行取得時間がエージェントの友好的な振る舞いを変化させるのに十分な時間であることを立証するとともに,眼と手の協応関係の変化は両者の相互作用にはパフォーマンス促進効果があることを検証する実験を計画している. 特に,2023年度はコロナ禍や実験機器の急激な価格変動などの影響から実験機器の導入に大幅な遅れが生じ,新たな実験系の構築を行うことができなかった.また,2022年度中に実施することができな一部のパラメータ(脳波や循環器パラメータなど生理心理学的パラメータ)一部の情動情報の有効性(眼球運動・瞳孔径の変動に基づく実験系の妥当性の検証や偏向注視並びに縮瞳先行時間)に関する検討に留まったことから,当初計画に上げた各種情動情報の先行取得に関するパラメータの妥当性の検証に力点をおいて研究を推進する.加えて,研究推進の遅れに依存して研究成果の公表にも大幅な遅れが生じていることから,積極的な成果の公表を通じて情動情報の先行取得の有効性の検証を目指すとともに,今後の感染状況に変化に応じてシミュレーションによる検証も視野に入れつつ,検証実験による知見に基づいて,眼と手の協応関係の変化に依存した情動情報先行取得手法の開発を目指す.
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